Sunday, January 2, 2022

フランク・ケイン「リズ」

フランク・ケインはジョニー・リッデルを主人公にしたシリーズで有名だが、これは単独に書かれた作品だ。

リズは強烈に男の目を惹くグラマラスな女性だ。しかし同時に頭も切れる。すばやい判断力や行動力には驚くべきものがある。彼女の出自はよくわからない。物語はいきなり彼女が牢屋に入れられている場面からはじまる。とくに罪を犯したわけではないのだが、警察署長が彼女に色目を向け、いい加減な理由をつけて彼女を監禁し、乱暴を働こうとしたらしい。リズはわざと署長に好きなようにさせ、隙を見て拳銃を取り上げ、彼を殺害する。この出だしでリズのキャラクターが確立される。性的な魅力を発散し、胆力があり、抜け目がない、闇の世界の女。


リズは脱獄したあと、場末のバーでウエイトレスになり、そこでチンケなやくざと知り合う。リズは彼をたきつけ強盗殺人を犯させるのだが、冷静さを失ったやくざ者は警察の包囲網を脱出しようとして命を失う。

リズはその後も男をつくり、その男を死においやりながら、徐々に暗黒社会でのしあがっていく。

本書はマイナーな作品ながらも作者ケインの優れた資質をよくあらわしていると思う。リズは決して男によって所有されることのない、崇高なる欲望の対象である。リズを所有しようとする男は破滅する運命にあり、リズが所有されるときは彼女が死ぬ瞬間である。リズがとうとう恋に落ち、とある男に「所有」されることを望むと、その男は殺害されてしまう。そういうファム・ファタール特有の磁場を帯びた存在としてリズは一貫して描かれている。彼女は何度も服を引き裂かれ、その蠱惑的な肉体が描写されるが、これは単なるエロチックなスリラーではない。この作品の背後には強固な観念が潜んでいる。その観念性が非常に良かった。

ただわたしはこの作品をビーコン・ブック(Beacon Book)で読んだのだが、この版はおそろしく誤植が多い。ろくに校正もしていないのだろう。それだけが残念なところだ。

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