Wednesday, January 26, 2022

ジェフリー・ポメロイ・デニス「ポーランドの収穫」


作者ジェフリー・ポメロイ・デニス(1892ー1963)はイギリスの外交官だったが、1930年に「世界の終わり」という変な作品でホーソンデン賞を受賞した。文学賞を受賞したくらいだから、当時はそれなりに評価されていたというべきだろう。今の時点で彼の作品は……正直、わたしにはそのよさがあまりよくわからない。しかしある種の奇怪な想念に取り憑かれていて、それを文学の形で表現しようとしていたようだ。

本作は1925年に書かれたオカルト小説である。ウィキペディアによると31年に書き直されたようだが、改訂版は手に入らなかった。妙な文体で書かれていて、慣れるまでちょっと戸惑ったのだが、改訂版ではこれが修正されているのだろうか。

しかし話自体は相当に面白い。先ほど言った作者の奇怪な想念が小説に化けたような感じだ。これはエマニュエル・リーというオックスフォード大学の苦学生が語る物語である。まず彼は予知能力を持つ女性から、決して外国へ行ってはいけないと、警告される。次に彼は降霊術の会に参加するのだが、その場でも霊媒師から同じような内容の警告を受ける。エマニュエルは半信半疑でその預言を聞いていたのだが、しばらくすると実際にとあるポーランド人からしばらくポーランドの自分の家に来て、英語のレッスンをしてくれないかと頼まれた。ジュリアン・レリヴェルというこの男は皇子の称号を持ち、普段はどこにでもいそうな若者のしゃべり方をするのだが、ことエマニュエルをポーランドに誘う話になると、目つきがぼうっとなり、遠くから聞こえる声を復唱するみたいに慎重に言葉を発するのだ。エマニュエルは彼の頼みを引き受け、レリヴェルと外国へ旅立つ。

そのあとは海峡を渡ってフランスからドイツへ、そしてポーランドへ旅をする。道中はコミカルで、どこかグロテスクなのだが、旅の目的地、すなわちポーランドのレリヴェルの家にも筒井康隆の小説にでも出て来そうな妙ちきりんな連中がそろっていた。ここの住人たちは祖母の財産をめぐって大きく二派にわかれていて、なにかというとすぐさまいがみ合う。食事の最中ですら、いつも二派はいさかいを始め、激烈なののしり合いに発展するのである。

さらにこの家にはツヴァンという得体の知れない小男が食客として滞在していて、エマニュエルは彼に目をつけられ、気味の悪い思いをする。

居心地が悪いのは家の中だけではない。当時のロシア・ドイツ・ポーランドをめぐる国際政治情勢のせいだろうか、エマニュエルは外出したときに言葉の通じないロシアの官憲にとらえられ、ポーランド人の農夫たちの手によって助け出されたりする。

いったいこの小説にはなにが書かれているのだろう。何が焦点になっているのだろう。一番最後、悪魔との対決のシーンまで、とにかくこれは「世界の終わり」と同じくらい珍妙な小説である。「世界の終わり」は世界がどう終わるかについて書かれているので少なくとも一貫した主題が見て取れるが、この小説は一読しただけではなにを主題にしているのかさっっぱりわからなかった。語られるエピソードが突飛でグロテスクで面白いので、退屈することはない。また、なにかを伝えようとする白熱した思いがあることは、その奇妙な文体からもわかる。しかしその思いがなんなのかさっぱりわからず、読み終わって茫然とさせられるような、異様なゴシック小説である。他の人がこの小説を読んでどんな印象を持ったのか、ぜひとも知りたいものだ。

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