Saturday, February 5, 2022

ジェイムズ・ハーバートのホラー

1970年代のホラーはとにかく面白い。アメリカからはスティーブン・キングがあらわれ、イギリスからはジェイムズ・ハーバートが出て来た頃である。どちらも New English Library という出版社から本を出した。しかしキングは今でも翻訳が出ているようだが、ハーバートは1990代以降は新作が訳されていないようだ。残念である。

 


ジェイムズ・ハーバートのデビュー作は The Rats で、凶暴化し異常に繁殖した鼠がロンドンを襲うという物語である。あれはカバー・デザインが秀逸で、とにかく目を惹き、物語の内容を予感させる迫力を持っていた。家に帰ってからペーパーバック特有の粗雑な紙をめくると、文章は荒削りだが、エピソディックな物語の展開の仕方が面白くて、一気読みをした覚えがある。あまり面白かったので、以降の作品もすぐ買って読んだ。The Fog も The Survivor もパターン化してきたとはいえ、期待を裏切らなかった。ハーバートの作品をすべて読んだわけではないが、気分転換をしたいときによく彼の作品を取り上げたものだ。彼は2013年に69歳で亡くなっている。

アンドリュー・ネット氏が書いている Pulp Curry というブログにジェイムズ・ハーバートにインタビューしたときの記事が載っていた。(Interview: James Herbert)おもに出版社や編集者との裏話みたいなことが書かれているが、二つほどなるほどと思うことがあった。一つは、ハーバートが作家になる前は広告業界でアート・ディレクターをしていたこと。彼のグラフィックな描写力は美術の専門家だったことから来ているのか。デントン・ウェルチとかウィリアム・S・バロウズなど、画家と文人を兼ねている人の文章はひと味違うところがある。ハーバートもこの手の小説家だったのか。

もう一点は、おそらくハーバートの後期の代表作であろうアッシュ・シリーズがイギリス女王の言葉からヒントを得たものであるということ。エリザベス女王はとある記者会見の席で「この国には暗黒の力が働いているが、そのことをわたしたちは知らない」と云ったらしい。それが物語を発想するきっかけだったのだとハーバートは述べている。なるほど。女王の口から「暗黒の力」なんて言葉を聞いたら、たしかにいろいろな想像が湧いて来る。

アッシュ・シリーズは最初の二作を読んで面白かったので、これを機会に三作目も読んでみようと思う。


英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...