Friday, February 11, 2022

ステファン・ツヴァイクの翻訳

私は映画はほとんど見ないのだが、オリヴィア・ドゥ・ハヴィランドとジョーン・フォンテーヌだけは大好きで、彼らの出演する映画はほとんど観ている。アメリカにいたころ、ブロックバスターでバイトをしていた友人に頼んでマイナーな作品まで捜し出してもらって見た。それでも手に入らない作品がたくさんあったけれど。

フォンテーヌの作品でいちばん気に入っているのはやはり「レベッカ」。次に好きなのは「見知らぬ女からの手紙」である。この可憐な作品は高校生のときに観てから忘れることが出来ない。音声を録音し、夜寝ながらフォンテーヌの声を聞いていた。

「見知らぬ女からの手紙」の原作者はステファン・ツヴァイク。1920年代、30年代に世界中で広く読まれた作家である。話が面白いだけでなく、フロイトと親交があり、精神分析に関心を持っていたという点でも興味深い。しかしわたしがツヴァイクを読むようになった本当の理由は、フォンテーヌの美貌とあのハスキーな声をしのぶよすがになったからではないだろうか。

先日、プロジェクト・グーテンバーグの「新刊」リストを見ていたら、ロマン・ロランの「クレランボー」があった。わたしはフランス語はできないのでそのまま通り過ぎようとしたのだが、ふとドイツ語訳とあるのに気づき、誰が訳したのだろうと気になった。見てみると Berechtigte Übertragung aus dem Französischen von Stefan Zweig と記されているではないか。ツヴァイクはこんな本まで訳していたのか。日本でもそうだけれど、作家の「訳業」は軽視され、よっぽど詳細なものでない限り、ビブリオグラフィーから省かれることが多い。たぶんそのせいか、わたしが迂闊なせいだろう、ツヴァイクがロマン・ロランを訳していたとはまったく識らなかった。

思いも寄らぬこの発見は、見知らぬ女から突然届いた手紙のように、わたしにショックを与えた。この手紙はなんとしても読まなければならない。手紙のなかには(映画のなかで起きるように)人生への態度を根本的に変えてしまうなにかが書かれているかも知れない。そんな予感に取り憑かれたわたしは今、不思議な気分でこの大長編を少しずつ読んでいる。

独逸語大講座(20)

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