Saturday, March 5, 2022

エリザベス・デイリ「いかなる形であれ」

原題は Any Shape or Form (1945) 。例によってガマッジが探偵役として活躍する。

ガマッジは友人に誘われて近くの家のパーティーに参加する。そこにはヴェガという老婆と、彼女が死んだ後はその遺産を受け取るはずの親族が集まっていた。パーティーのメンバーが花を摘みに行ったり、クリケットの道具を取りに行ったり、カラスを撃ちに行ったりしている間、ガマッジはヴェガと庭にいたのだが、銃声がしたかと思うとヴェガがばたりと倒れた。頭を撃たれた彼女は即死である。


さっそく警察が呼ばれ捜査が開始されたのだが、その最中にも殺人はつづく。いったい犯人は誰か。例によってガマッジが見事な推理を展開する。

ガマッジの推理のとっかかりは、多分に心理的な要素が強い証拠なのだが、しかしそこからの議論は、それまで読者が抱いていた物語の印象をがらりと変えるもので、なかなか面白い。いや、物語の様相の転換こそがミステリの醍醐味である。久しぶりに重厚な味わいの作品を読んだ。

ジュリアン・マクラーレン・ロス「四十年代回想録」

ジュリアン・マクラーレン=ロス(1912-1964)はボヘミアン的な生活を送っていたことで有名な、ロンドン生まれの小説家、脚本家である。ボヘミアンというのは、まあ、まともな社会生活に適合できないはみ出し者、くらいの意味である。ロンドンでもパリでもそうだが、芸術家でボヘミアンという...