Sunday, June 26, 2022

Ada Buisson のホラーストーリー(3)

今回読んだのは「男爵の棺」。これはやや長めの短編である。語り手であるオーウェンは若きイギリス人の建築家で、上司からフランスに仕事があるがやってみないかと言われ、一も二もなく引き受ける。ド・ゴールという男爵のお城の修繕作業だ。作業員はイギリス人を連れて行き、身の回りの面倒はジョゼットという召使いが見てくれることになった。あるときオーウェンが暇をもてあましていると、ジョゼットが読書をなさったらいかがですかと、男爵の部屋のベッドの下に本がたくさん置いてあることを教えてくれる。オーウェンはその部屋へ行き、ベッドの下を見ると、驚いたことにそこには棺が置いてある。ぎょっとしたが棺の蓋を開けて見ると中には本が入っていた。そのときである。ドアが開いて醜い男の顔が覗き、オーウェンを見たのだ。幽霊が出たと思った彼は泡を食って部屋を飛び出すが、ジョゼットにあれはわたしの祖父だと大笑いされる。この百歳になるジョゼットの祖父が先代のド・ゴール男爵について語る物語、それがこの物語の中核である。

先代のド・ゴール男爵は名前をルイと言った。年若くして財産を継いだのだが、気性は荒く、特に弟のポールにつらく当たった。さて覚えておかなければならないのは彼が生きた時代がちょうどフランス革命の時期だということだ。家族の者といえども裏切りを働くかもしれない時代、それまでのように召使いたちに無茶なことをすれば、命すら狙われる時代である。だからルイは爵位を隠し、召使いたちには愛想よく、とは言わぬまでも無理なことを要求したり、専制的な振る舞いは避けていた。そのかわり兄弟姉妹につらく当たったのかもしれない。ポールはルイの態度に腹を据えかね、パリへ出て行ってしまう。そしてあるときルイはポールが彼の財産を狙っていることを聞きつける。さらにポールからルイに、連絡したいことがあるのでボルドーまで来てくれと言う連絡が入った。ルイは召使いのアントワーヌ、つまり顔の醜さに建築家が幽霊を勘違いした、あの召使いをボルドーに送って、メッセージを聞き取らせることにした。

 アントワーヌがボルドーで聞いたのは、次のようなニュースだった。国民議会はルイが反逆者であると考えている。命があぶない。すぐ国外へ逃げるように。

 しかしアントワーヌからこのメッセージを受け取ったルイは、逃げることをせず、一計を案じる。彼はもしもポールたちが城に来て彼を反逆者として捕えようとするなら、棺に入って特殊な薬を飲み仮死状態に陥るつもりだった。そして彼らが去るのを待とうというのである。この計画は図に当たった。ポールたちはルイの「死体」を見て、それを一族の死体安置所へ持っていく。

ところがなぜかポールはその日の晩、死体安置所に戻り、「死から目覚めた」ルイとかちあう。そして二人の間で死をかけた闘争が行われ、ルイが勝ち、ポールが棺に入れられて生き埋めにされてしまうのだ……。

兄弟姉妹間の闘争はときに激越な形を取るものだが、ルイとポールの関係もそうした一例なのだろう。わたしが読んでいて気になったのは、なぜルイが仮死状態になって横たわり、後にポールが生き埋めにされた棺が、今はベッドの下におかれ、本を詰め込まれていたのか、という点だ。この話はドラキュラの物語とちょっと似ている。ドラキュラは仮死状態(死んでいるとも生きているとも言えない状態)になって棺桶に横たわっている。そして夜になると外に出て、血を吸い、その者を自分と同様の undead の状態にしてしまう。小説「ドラキュラ」はそれまでにあったさまざまな想像力のパターンを強力に、効果的に統合したものだが、「男爵の棺」に見られる想像力もそのうちの一つではないか。しかしなぜ棺に書籍が入っているのか。書籍は undead なのか。それともわたしはまったく間違った方向に考えを進めようとしているのか。

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