Friday, September 23, 2022

ケイト・エヴァンズ「赤いローザ」

ローザ・ルクセンブルグの生涯を描いたグラフィック・ノベルである。写真を見るとわかるけれど、ローザは幼いときの病気と栄養不良のせいで非常に小柄な女性だった。しかし経済学に通じ、理論的な頭を持ち、大胆な活動家として圧倒的なオーラを持つ人物である。資本主義によるグローバリゼーションを見事に予見し、軍産複合体といった概念を練り上げた人でもある。

この作品は変にローザを理想化することなく、たんたんとその生涯を追っている。驚いたのは彼女の恋愛、結婚、離婚、偽装結婚などの経歴で、わたしは生身のローザ・ルクセンブルグをなにも知らなかったことを教えられた。

彼女の思想や理想を示すために、かなり長々と引用のなされる部分もある。とくに彼女が牢獄の中で書いた文章は痛ましいほどのリリシズムにあふれ、作者の思いをこめた絵といっしょになって本書の白眉をなしている。

彼女の理論的な側面についてはグラフィック・ノベルだからもちろん詳しくは書かれていない。しかし巻末には便利な註がつけてあり、より突っ込んだ内容に興味がある人は、そこを読めばなにを参考すればよいのか、すぐわかるようにできている。この点は非常によい。

考えさせられた部分はいくつもあるが、そのうちの一つ二つを挙げておこう。一つは社会民主党が主催する学校でローザが講義をしていたときのことだ。彼女は矛盾についてのヘーゲルの考えを教えた。この矛盾というのはパラドキシカルな概念で、たとえば資本主義は資本主義を崩壊させるものを内に含んでいるといったものである。資本主義に対して、その外部に反・資本主義といったものがあり、それが資本主義を崩壊させるというのではない。反・資本主義は資本主義に内在するのである。こういうややこしい考え方には、ある程度思考訓練を受けた人でなければついていけない。たいていの人は資本主義は資本主義だ、反・資本主義はそれとは別のものだ、と考えたがる。そのほうが明快(わたしに言わせれば単純)なのである。ローザも学生のそのような反応に愕然とする。しかも社会民主党のトップを取る男がその程度の理解力しか持っていないのだ。ちなみにこの男はのちに革命を裏切ることになる。

もう一つはローザが煽動罪で裁判にかけられる場面だ。彼女が有能な弁護士ととともに保釈を要求すると検察側は「保釈などすれば被告人は逃亡する可能性が大いにあります」という。それに対してローザは「あなたがわたしの立場にあったなら逃げ出すでしょうね。社会民主党員は逃げません。あくまでみずからの行動を擁護し、あなたの判断を嘲笑うでしょう。さあ、判決をお下しなさい」と返した。すごい啖呵を切ったものだ。裁判官は一年間の禁固刑を命じるが、結局ローザは自由の身となる。

国家や男性中心主義を向こうにまわして戦い続けた彼女だが、誰もが知っているように1919年、四十七歳のときに反革命軍に捕まり、暴行を受け、頭を銃で撃ち抜かれる。

作者は最後の数ページでローザの戦いが世界中で今も続いていることを示している。わたしは今の日本においてもローザやカールが戦っていると思う。そしてこれからその戦いはもっと厳しいものになる。


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