Thursday, January 26, 2023

ジョアナ・ケイナン「宿泊は殺人付きで」


原題は Murder Included (1950) 。ジョアナ・ケイナンはその作品が最近になって次々と再刊されるようになった。

物語の舞台はデストレイ家の大きな屋敷である。主のチャールズは落ちぶれた貴族で、その財政状況は屋敷を維持することもあやしいくらいだ。そこでチャールズの妻であるバニーが、屋敷を民宿のようにして、客が狩りを楽しめるようにしようと考える。その結果デストレイ家には七十だが矍鑠として馬に乗るハドソン嬢、ローズ一家、スキャプネル一家など大勢の人が集まって来る。

ところがその屋敷の中で殺人が起きる。死んだのはハドソン嬢だ。彼女は寝る前にナイトキャップをたしなむ癖があるのだが、その酒の中に何者かが植物の毒を混入させたらしいのだ。ハドソン夫人とは仲が悪く、薬草の知識があるバニーが犯人と疑われるが、証拠はない。

そうこうするうちに第二の殺人が起きる。今度はスキャプネル家のシシリーだ。彼女は狩りに出掛けたのだが、そのとき持っていった水筒の中に、第一の殺人で使われたのとおなじ毒薬が入れられていたのだ……。

この作品はよい着眼点を持っている。最初にハドソン嬢が殺されたとき、警察はハドソン嬢の敵を捜した。そしてシシリーが殺されたとき、警察はシシリーがハドソン殺しについて何か重要な情報を持っていたから殺されたのだと考えた。しかし本件においてそれはひっくり返っている。犯人がシシリーを最初に殺すと、重要な情報を持っているハドソン嬢がたちどころに事件の真相を見抜いてしまう。だからハドソン嬢がまず殺されたのだ。バニーは「わたしたちは時制を取り違えていたのよ」というが、これは非常に興味深い台詞だ。ここには哲学的な考察がある。

本篇はいわゆる本格推理ではない。犯人は「偶発的」に見つかる。しかし犯人を見つけたのがバニーだという点は重要だと思う。バニーはイギリスとはまったく異なる環境で育ち、イギリスの田舎的な考え方、あるいは都会的な考え方にもなじめない、本質的な部外者である。彼女はイギリス的な思考法、物語化のパターンから決定的にずれている。ずれているからこそ、事件の真相にたどりつけたのだ。良人であり典型的なイギリスの田舎紳士サー・チャールズも、排外的な感性の持ち主であるスコットランドヤードの若手刑事も気づかなかった事件の真相に。

ピーター・チェイニーの「誰も見なかった男」に引き続き、この作品もまた時間をおいて読み直さなければならない。

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