最近電子化された作品の中で注目したい作品を三つあげておく。
一つは Fadepage.com が出したハリー・ポール・ケイポンの「地球へ」。これは三部作の第三部で、太陽の反対側にある惑星に行った科学者のポレンポート博士から(これが第一部の話)地球にあててモールス信号が出ていることを、イギリスはケント州に住むコックス兄弟が発見する。しかし返事を返すには強力な送信機が必要だ。そこでポレンポート博士の宇宙旅行に協力した新聞社に援助を頼みにいくのだが、この秘密が洩れ、博士がいる惑星を植民地化しようとする動きが出て来て……という話。作者はウエルズ的なSFを書いている人だ。Fadepage.com は第一部と第二部をすっとばしていきなり第三部を電子化したが、どういうわけだろう。
アメリカのプロジェクト・グーテンバークは、ウォルター・ホワイトの「燧石に秘められた火」を出した。作者は人権運動家として名高い人だ。物語はケネス・ハーパーという若き黒人医師が南ジョージアの故郷で開業し、地元の黒人労働者のために協同組合を組織しようとしたところ、クークラックスクランの邪魔に出逢い、暴力的で悲劇的な事件に発展するというもの。1920年代に書かれたものだが、発表当時は世評が高い作品だった。
LibriVox からはフレデリック・ポールとC. M. コーンブルースの共著「町が溺れる」をあげたい。タイトル通りの物語で、米国北東部のある町がハリケーンに襲われ洪水に遭うという話。異常気象のせいでこれから洪水は増えるだろうが、朗読者の丁寧な解説によると科学的な議論よりも人間的なドラマに重きを置いた物語らしい。今突然思い出したが、たしかエミール・ゾラも洪水を扱ったパニック小説を書いていなかっただろうか。