私立探偵ジョニー・リデルのオフィスに一人の中国人がやってくる。依頼は小さな小包を預かってくれというもの。その料金として百ドルを支払うという。これは1950年代の話だから当時の百ドルは結構な価値がある。リデルは喜んでそれを保管するのだが、さっそく財務省の役人がやってきて、裁判所の許可証を見せ、その小包を持っていってしまう。いったい何が起きているのだろう、小包の中身は何なのだろう、と思いつつ読み進めると、オフィスは夜のうちになにものかに荒らされ、依頼人だった中国人は殺害され、財務省の役人といっていた男が偽者であることが判明する。どうやらいくつかのグループが小包を手に入れようと暗躍しているようだ。リデルは恋人で新聞記者のマグジイとともに事件の解決に乗り出す。
ジョニー・リデルものとしては五作目に当たる作品で、書き方にまだ若々しさを感じる。中国のギャングの抗争が背景にあるのかと思いきや、じつはスパイが暗躍しているとわかるというプロット・ツイストにも、アクションたっぷりの展開の仕方にもそれはあらわれている。読者を楽しませようという色気満々の作品だ。ただ物語の核となるべき謎の部分が弱くて、やや散漫な印象を与えるのが欠点と言えば欠点になっている。