原題は A Thing Of The Past。内容は……。
ロンドンの郊外で爆弾を用いて土地の造成を行っていたところ、とてつもなく深い亀裂が地中に見つかった。技師のクリフはロープをつけて穴の中に降りてみたが、途中に人間が立てる台のような部分はあるものの、その端は切り立つような絶壁になっていて、どれくらいの深さがあるのかもわからない。
この穴からまず奇怪なガスが噴出してくる。それを吸い込んだ人々は、怒りっぽく、荒々しい態度を取るようになる。さらに文明社会の洗練された振る舞いを失い、洞窟に住んでいた原始人のようにがさつになっていくのだ。
次にこの穴から恐竜が飛び出してくる。最初は空が飛べる恐竜どもで、家畜に被害を出したのち、軍によってしとめられる。ところがそのうちほかの恐竜も穴から出てくるようになり、ロンドンはパニック状態に陥る。
技師のクリフは数名の科学者とともに地底探査機に乗りこみ、何が起きているのかを探り出そうとする。
ラッセル・ファーンはイギリスのパルプ作家でとてつもない量の作品を残している。日本ではほとんど知られていないけれど、パルプ小説のファンは(どの国にもパルプ小説の熱烈なファンが少数だけどいる)今でも愛読している。わたしもときどきこの手の本が読みたくなり、ファーンの本はそのときのためにかなり揃えてある。
本書は前半は「ジェラシック・パーク」のような恐竜騒動を描き、後半はベルヌみたいな地底探検、ないし地下世界探検になっている。前半も面白いが、後半は一段と文章が熱気を帯び、今まで読んだファーンのSFのなかで、いちばんよかったと思う。続編のありそうな終わり方なので調べて近いうちに読んでやろう。