Monday, June 5, 2023

新刊本のお知らせ

チャールズ・ペリーの「溺れゆく若い男の肖像」を翻訳し、アマゾンから出版した。
ブルックリンのスラム街に育った少年がギャング団に入り、殺し屋としてのしあがっていく物語だが、タイトルからもわかるようにジェイムズ・ジョイスの高名な作品へのオマージュともなっている。いくつかのイメージが反覆され、その意味が次第に明らかになっていくのだが、とても作者の長編第一作とは思えない巧みさで構成されている。ジョイスの先行作に深く親しんだからこそできたことだろう。 性と暴力を結び附けたかなり衝撃的な内容だ。一読願えれば幸いである。

エドワード・アタイヤ「残酷な火」

  エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...