スティーブンソンはあのR.L.スティーブンソンのまたいとこである。人気作家として多くのロマンス作品を残しているが、本作は珍しくスパイ小説だ。といっても書き方はロマンス小説っぽい。ハーレクインの中によくミステリとロマンスを結合させたような作品があるが、あんな感じである。
表題の「歪んだ」というのは、主人公のアダムは両足の長さが違い、びっこをひくように歩くことからついた。彼は学校で語学を教えている教師だ。時代は第二次世界大戦の真っ最中。本当なら祖国のために戦いたいのだが、障害があるため忸怩たる思いを抱きながら教師をしているのである。しかし彼が勤める学校の校長、クック氏は戦いの場が必ずしも戦場だけではないことを彼に教える。クック氏は優秀な科学者で、彼はX線を利用した破壊光線を発明する。もちろんイギリスがこの発明に興味を持つのは当然なのだが、ドイツのスパイもその秘密を探ろうとする。そのためクックの周辺には怪しげな人間の影が絶えずちらついているのだ。アダムはクック氏とともにスコットランドでこの機械の製作にあたる。もちろんその間に彼はスパイたちと虚々実々のかけひきを行うことになる。さらにまたブレンダという若く美しい少女と出会い……。
読みやすく明快な文章で、人物の造形は、やや型にはまった印象はあるが、悪くない。ただサスペンスはまったくないので、その点を承知で読むなら楽しめるだろう。