Monday, July 24, 2023

モーリス・プロクター「潜入捜査官」

 

モーリス・プロクターは六十年くらい前に

・Hell is a City

・The Chief Inspector's Statement (The Penycross Murders)

・The Speahead Death

・Devil in Moon Light

・Killer at Large

の五冊が翻訳されたようだが、それ以後はまるで無視されているようだ。しかしこの作者はじつにしっかりした文章を書く人で、私はその才能を大いにかっている。文章の上手な人が書いたジャンル小説はどれもひどいはずれがない。

本作の舞台はイギリスの労働者階級が居住するある工場地帯で、そこにあるパブの店主が地下室で死体となって発見される。この店主はコインの収集家で、彼の部屋を調べると金貨ばかりがすっかり盗まれていた。どうやら金目当ての殺人らしい。

この事件の捜査で活躍するのがビル・ナイトという新人警官である。彼は警官という身分を偽って労働者としてこの地区に住み込み、容疑者の行動を警察本部に連絡する。そして徐々に犯人を追い詰めていくのだ。

乱暴者とビルが喧嘩をする場面はあるが、とくに派手なアクションが展開されるわけではない。しかし物語はなかなか興味深い。なによりいいのは、作中人物の性格がくっきりと浮かび上がってくる点だ。ビルが下宿する宿のおかみさん、その不良息子、娘たち、パブを出入りする荒くれ男ども、こうした人々が類型的ではなく、見事に活写されているのだ。抜け目のないおかみさんの鋭い目つきや、賭博や犯罪にあけくれるちんけな息子の不良っぷり、そんな環境でブルジュア階級の子供が知る楽しみを知らずに育った娘たち、こうした人々の性格がじつにくっきりと描かれている。

作者が長年警察に勤務していたせいか、警察の捜査活動が異様なくらいリアリティを帯びていることも指摘しておくべきだろう。とりわけ警察の初動捜査の様子はすばらしい。サスペンスはないのだが、性格描写とかリアリズムとか、文章の書き方に興味がある人には面白く読める一作だと思う。

原題は The Pub Crawler つまり酒を飲むためにパブを梯子する人の意味である。


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