Sunday, October 29, 2023

ファーガソン・フィンドレー「波止場」


ファーガソン・フィンドレー(1910-1963)はペンシルベニア生まれの作家で、ほとんど無名といっていいけれど、本作「波止場」は評判がよく、1951年には The Mob というタイトルで映画化されている。Mob というのはギャングのことである。最初に全般的な感想を言ってしまうと、この小説は標準以上の面白さで、フィンドレーのほかの作品も全部読んでみたい気持ちにさせられた。

どんな内容か大ざっぱに紹介すると……

ニューヨークの波止場地区はギャングによって取り仕切られていた。どんな活動をしていたのかは書かれていないけれど、たぶん密輸に関係することだろう。警察はもちろんギャング組織の壊滅をもくろむのだが、ギャングの首領ブラッキー・クレッグはなかなか手強い敵だ。警察が大陪審に喚問しようとしていた証人はブラッキーによってとある通りで殺され、その殺害現場を目撃した人々もそののち殺害されてしまう。

殺人課西司令部のマーロー刑事はその暗殺現場にいたにもかかわらず、うっかりブラッキーを警察の人間と思い込み、みすみす彼を逃してしまう。大チョンボだ。ところが西司令部はマーローに汚名挽回のチャンスを与える。正体を偽って波止場地区の労働者となり、ギャング組織の活動を探り、ブラッキーをつかまえろというのだ。かくしてマーロー刑事はティム・フリンという西海岸から来た男になりすまし、沖給仕として働くことになる。

暴力が渦巻く波止場地区での冒険はめっぽう面白い。拳での殴り合い、拳銃の撃ち合い、ギャングとマーロー刑事の騙し合い、さらにFBIが登場し、マーロー刑事のフィアンセまで危機一髪という目に遭う。しかも思いも寄らぬブラッキーの正体……。

物語が波瀾万丈で、テンポが小気味よいだけでなく、文章も悪くない。マーロー刑事が語り手となるのだが、それがハードボイルドによくあるちょっと小癪な感じのする口調なのだ。


おれにはわかっていた。禿頭のバーテンダーは波止場の犯罪活動となんらかの関わりがある。それは死や税金とおなじくらい確実なことだ。


ニューヨークの子供はラテン語の代名詞の格変化を学ぶのは不得手だろうが、タイヤの横滑りする音を聞いたらスティックボールの遊びを即座にやめ、ちりぢりに逃げなければならないことは知っている。


この文体はやりすぎると鼻につくが、本作ではまずまず成功している。

登場人物の心理が描かれていないとか、人間的な厚みがないとか、敵に見張られているかもしれないのに、マーローはなぜフィアンセとデートなどするのか、と文句をつけようと思えばいくらでもつけられるが、これはパルプ小説なのであって、白熱した物語に読者を巻き込めば、作品の目的は達成されたということなのだ。そしてその目的は充分に達成されていると思う。

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