私は今は Kobo の Eink 端末で読書を楽しんでいるが、その前は Hanlin の V5 を使っていた。Eink 端末が出始めてすぐのころに個人輸入したものだ。一般のタブレットと違い、目に刺戟がないため、非常に重宝し、ページめくりのボタンがきかなくなるまで使用した。そのため Eink 端末にはごく初期の頃からずっと興味があった。
初期の頃と今とを比較したとき、大きな違いが一つ思いつく。バッテリー交換がしにくいという点、SD カードの差し込めない機種が多いという点だ。この二点については Eink のファンから大きな要望があって、初期の頃はメーカーも気をつかっていたのである。ところが、Eink がニッチな分野ながらもその存在が知られるようになると、メーカーはバッテリーが劣化したら消費者に買い換えを求めるようになる。またSD カードの差し込み口がない機種を生産するようになる。
今の電子機器はほぼ二年を目処に消費者の買い換えを促すようにできている。BBC の How the right to repair might change technology という記事に依ると、古い機種に対していくつかの大手メーカーはファームウエアをアップデートし、わざと遅くなるようにプログラムを変えたことすらあるそうだ。
BBC の記事はこのビジネス慣習が環境に与える影響について議論しているが、二年という短い商品サイクルを作り出すこの慣習には、消費者として単純に疑問を感じる。タブレットは二年経っても、劣化部分さえ変えれば、充分に使える状態だからである。しかも新機種といったところで二年前に買った物と機能的にはさしたる違いはないのだ。
しかし企業側は劣化部分の修理・交換にやたらと高い料金設定をして、買い換えを促そうとする。こういう商慣習は変えなければならない。
先に挙げた BBC の記事で知ったが、アメリカと EU では「修理する権利」が法制化される予定らしい。すでにフランスでは家電製品に対して「修理可能性スコア」というのが環境省によって表示を求められるようになっている。アメリカのカリフォルニアでは家電製品が生産されてから七年間は修理やパーツ交換が容易にできるように、生産者に修理用の部品やツールなどの提供を義務づけている。
以前、「もったいない」という日本語が国連で連呼されたことがあったが、日本はもっとこうした消費文化に対して自覚的であるべきだ。