Saturday, December 20, 2025

今月の注目作

In Darkest London by Ada Elizabeth Chesterton

Standard EBooks


わたしが尊敬する女性ジャーナリストはネリー・ブライ(1862-1922)と、このエイダ・エリザベス・チェスタートン(1869-1962)。どちらも根性とまっすぐな正義感を持っていた。「暗黒のロンドンで」は路上生活をみずから体験して書いたルポタージュ。最近日本の国会でとある政党が「路上生活をする十代少女を行政は補導するが、それは支援という形に変えられるべきだ」と主張した。本書でチェスタートンは政府の保護施設を批判し、それは女性を支援(help)するものではなく、矯正(reform)するものになっていると言っている。


Manalive by G. K. Chesterton

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上記エイダの夫の兄、ブラウン神父で有名なチェスタートンが書いた小説。さえない生活を送っている若者たちのあいだに突然陽気で騒がしいイノセント・スミスという人物があらわれる。世間の規範を逸脱した彼の振る舞いを通して、社会がどれだけ人間を抑圧しているかが示される。ある意味でドストエフスキーの「白痴」とか映画の「フォレスト・ガンプ」などとおなじ「佯狂者」の物語だ。調べてみると「マンアライヴ」というタイトルで翻訳が出ていた。


San Kuo, or romance of the three kingdoms by Guanzhoung Luo

Project Gutenberg


羅漢中の「三国志」がはじめてプロジェクト・グーテンバークに収録された。翻訳者はチャールズ・ブリューイット=テイラー。二巻本のうちの最初の一巻が出ただけだが、それほど時をおかずして二巻目も出るだろう。最初の部分を読みながらはっと気づいたけれど、わたしは羅漢中の「三国志」を読んだことがない。吉川英治や陳舜臣の語り直しを読んだだけだ。平凡社の中国古典文学大系に収められた立間祥介の訳を見ると「そもそも天下の大勢は、分かれること久しければ必ず合し、合すること久しければ必ず分かれるもの」とはじまり、英語版の出だし Empires wax and wane; states cleave asunder and coalesce. と一致する。なんだか英語訳も日本語訳も両方読みたくなった。


The Stories of Elizabeth Sanxay Holding in Munsey's Magazine 1921-1928

Fadepage.com


これは「マンシーズ・マガジン」に掲載されたホールディングの作品を Fadepage の校正チームが独自にかき集めて編集しつくった本である。こういうことができるのが電子書籍のよいところ。心理的サスペンスを得意としたホールディングの短篇四十三篇、中編一篇を収録している。彼女の中編、長編はかなり入手しやすくなってきたのだが、短編集はほとんどないので、こういう本はほんとうにありがたい。

今月はクリスマスやら年末ということで、注目すべき作品がたくさん出た。Fadepage.com からはイーディス・ウォートンの大傑作 The Age of Innocence とウィリアム・フォークナーの As I Lay Dying が出たし(もっともアップデート版だが)、プロジェクト・グーテンバーグからはヤコブ・ヴァッサーマンの Die Juden von Zirndorf が出ている(これは初の電子化)。ついでにびっくりしたことを書いておくと、ヴァッサーマンはどんな本が翻訳されているのかと調べてみたら、彼の代表作 Der Fall Maurizius が「埋れた青春」というタイトルで一九五五年に出ているのだが CiNii で大学図書館の蔵書を調べたところ、この翻訳書が見つからない! さらに調べてみると北海道立図書館と京都府図書館にはあるようだが、ほとんど死蔵されているようなものだろう。わたしは大学生のときに英訳版を読んでその重厚さに感銘を受けたが、ああいう本は何年かおきに新訳を世に送り出し、知的遺産が引き継がれるようにしなければいけない。

The Age of Innocence

As I Lay Dying

Die Juden von Zirndorf


Elementary German Series (14)

14. Der Frühling Der kalte Winter ist zu Ende. Der Frühling ist da. Die Tage werden länger und länger. Die Sonne scheint warm. Unsere schön...