Tuesday, December 23, 2025

ノエル・I・ガルデ「文学におけるホモセクシュアル」


副題に「時代別著書目録」とあり、これは研究書ではなく本のリストである。ただ簡単な区分がしてあり、これが親切だ。まず Primary な書籍とそうでない書籍が分けられている。Primary な書籍とは主人公があきらかにホモセクシュアルであるか、主題がホモセクシュアリティに関するもの。この条件にあてはまらないのがその他になる。しかしその他だからといってホモセクシュアル文学にとってより重要でないとは言えない。それどころか Primary と同じか、それ以上に重要ということだってあるので、その重要性は三星、二つ星、一つ星、無し、によって表示されている。さらにホモセクシュアルな登場人物について地の文や会話でくわしく説明がある作品、ホモセクシュアルの傾向が抑圧・暗示されているにとどまっている作品、ホモセクシュアルであると誤解・非難されているだけの作品、などというように細かい区分が設けられていて、おおざっぱに内容を推測することができる。

Primary つまり本格的なホモセクシュアル文学の最初の本は1866年バイロンが書いた「ドン・レオン」となっている。まあ、これは当然で、この本は男同士の愛を認めるよう、堂々と訴えた最初の本とされている。しかし三つ星がついているのに全然知らない作者も大勢いる。ミステリで有名なレックス・スタウトが Forest Fire なんて作品を書いているのも知らなかった。日本からは井原西鶴の作品がたくさん選ばれていて驚いた。三島由紀夫の「仮面の告白」も Primary のリストの最後のほうに出てくる。ホモセクシュアル文学は十九世紀後半に生まれたので現代に近づくほど重要な作品が増えていくようだ。

Primary でないほうのリスト見ると、これはホメロスの「イリアッド」からはじまっている。ホメロスにはすべての文学の萌芽があるので、これは当然だろう。先ほども言ったように Primary でないものとはホモセクシュアルのテーマを真っ向から取り扱っていない本なのだが、それでも三つ星がついている作品がある。最初に三つ星がつけられているのはペトロニウスの「サティリコン」だ。フェリーニの映画を見ていつか原作を読もうと思っていたのだが、ずっと果たせずにいる。現代のほうではなんとチェスター・ハイムズの Cast the First Stone が三つ星をつけられている。これは読まなければ! ゴア・ヴィーダルの作品がいくつもリストに登場するのは不思議じゃないが、しかしエドガー・ボックスの筆名で出された Death in the Fifth Position は読みたい。これも三つ星だ。ちなみにエドガー・ボックスはヴィーダルがパルプ小説を書いていたときに用いた名前である。

たんなるリストではあるけれど、作者の努力と研究の成果がぎゅっと詰まった貴重な読書案内になっている。

ノエル・I・ガルデ「文学におけるホモセクシュアル」

副題に「時代別著書目録」とあり、これは研究書ではなく本のリストである。ただ簡単な区分がしてあり、これが親切だ。まず Primary な書籍とそうでない書籍が分けられている。Primary な書籍とは主人公があきらかにホモセクシュアルであるか、主題がホモセクシュアリティに関するもの...