Saturday, June 20, 2026

今月の注目作

 Quartet by Jean Rhys

Project Gutenberg

ジーン・リースは大学生の頃、熱心に読んだ。彼女のリアリズムというか、ロマンチックなところがすこしもない、荒涼とした雰囲気がよかった。本書は自伝的な要素が濃く、背景知識があればより興味深いのだろうが、そんなものがなくても面白い。ここに描かれた「愛」は「闘い」のようだ。おセンチな情緒を徹底的に拒否した作品。


Römische Geschichte by Theodor Mommsen

Roy Glashan's Library

テオドール・モムゼンの「古代ローマ史」。モムゼンは十九世紀を代表する古典の研究者でノーベル賞も受賞している。ウィキペディアで調べたらマーク・トゥウェインがヨーロッパ旅行の際に彼と遭遇しているらしい。ベルリン大学での晩餐会でのことだ。招待客の到着とともに「モムゼンだ!」という興奮したささやきが交わされ、全員が立ち上がって叫び、足を鳴らし、手を打ち、ビールのジョッキで音をたてた。まるで嵐のような歓迎になったという。トゥウェインもモムゼンを見て感激していたらしい。


The Walls of Jericho by Rudolph Fisher

Standard Ebooks

作者のフィッシャーはハーレム・ルネサンスを代表する作家の一人。気鋭の弁護士がハーレムの近くにある高級住宅街に家を買い(つまり白人ばかりが住む地域)引っ越そうとするが、この弁護士が白人のように見えてじつは黒人だったとわかり、大騒動が起きるという話。フィッシャーは「妖術師の死」という滅法おもしろいミステリも書いている。


Professor Unrat, oder, Das Ende eines Tyrannen by Heinrich Mann

Project Gutenberg DE

ハインリッヒ・マンは1871年生まれで、独裁的・軍国主義的ナチズムを批判し、1933年には国外に逃亡している。そんな彼らしい小説が「ウンラート教授」である。主人公はギムナジウムで古典を教える厳格な教授でラートという名前なのだが、学生からはウンラート(くず)と呼ばれている。この教授がキャバレーの女に入れ込んでしまうという話だ。教授の空疎な言説、作者の皮肉な視点がいい。


今月の注目作

 Quartet by Jean Rhys Project Gutenberg ジーン・リースは大学生の頃、熱心に読んだ。彼女のリアリズムというか、ロマンチックなところがすこしもない、荒涼とした雰囲気がよかった。本書は自伝的な要素が濃く、背景知識があればより興味深いのだろうが、そ...