八月三日に行われた全日本プロレス横浜大会で丸山・竹田組が梶・旭組を破った。ひいきのチームが勝つのはなんともうれしい。コミカルなプロレスをする丸山だが、このリーグ戦では本気を見せて竹田と二連覇してもらいたい。
しかし全日のホームページに出た試合結果の速報を見ていちばん驚き、胸に響いたのは青木・佐藤組が近藤・鈴木組に勝ったことである。しかも佐藤が近藤に逆十字をきめたのだ。
佐藤は、ツイートを含め、しゃべっていることの意味があまりよくわからない。おそらく自分でもよくわかっていないのではないか、そう思うときもある。ただ妙な意地をもっていることだけは伝わってくる。それは一言で言えば、自分の進む道をかたくなに信じる態度である。彼は迷走することもあるけれど、常にひとつの方向を向いている。その一貫性は青木と並んで全日本の双璧をなすだろう。(佐藤は全日本の所属ではないけれど、そういってもいいくらい彼は全日本のリングに馴染んでいる。)
わたしは速報を見たとき、「17分55秒 腕ひしぎ逆十字固め」という表記の中に佐藤の意地が燦然と輝いているように思った。相手の近藤修司はジュニアヘビーの中では体格・キャリアともに最強と言っていいレスラーだ。鈴木鼓太郎もプロレス業界のトップを担う実力者。しかも彼らは数年前に全日本プロレスを離反し、青木や佐藤とは違う道を進んだ、ある意味、因縁の相手である。彼らを相手に戦うとき、青木も佐藤も自分たちの生きざまをかけて戦わざるをえない。佐藤はその戦いで、あの近藤修司から勝利をもぎとった。ここには地味だけれど、胸にじんとくるドラマがある。
諏訪魔と石川が「全盛期」を合い言葉にふたたびその存在感を示し始めたが、いまエボルーションで本当に全盛期なのは佐藤光留かもしれない。
Saturday, August 4, 2018
E.C.R.ロラック「作者の死」
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