図書館の本を開いた一瞬、日本の野蛮さを感じることが多々ある。蔵書印が本文の第一ページにベタリと捺されているのを発見した時である。しかもわざと読みにくくするかのように、活字の上に捺されているのである。
なぜこんなところに捺すのか。白紙の空間はいくらでもあるのだからそこに捺せばいいではないか。外国ではみんなそうしている。たとえばアメリカの図書館の蔵書印はこんな感じ。
大きな印だが、白紙のページに捺してある。そしてインドの図書館はこんな感じ。
本文には重なってない。さらに中国はこんな感じ。
わたしの知る限り日本だけである、活字の上にべたりと所蔵印がついているのは。蔵書印はたいてい赤い色をしているので写真で見るよりも活字との見分けはつくのだが、それでも字が読みにくくなることに変わりはない。
なぜこんなことをするのか理由はわからないが、少なくとも書籍にたいする愛情や敬意はまるで感じられない。牛や馬に烙印を烙印を押すように蔵書印が捺されている。まさか今でもこんなことをやっているわけではないだろうが、近代デジタルライブラリーの本が敬遠される理由の一つが、この醜い蔵書印であることに間違いはない。とにかく読書意欲をそぎ落とすように本文の第一ページが読めなくなっているのだから。
Sunday, January 13, 2019
英語読解のヒント(184)
184. no matter を使った譲歩 基本表現と解説 No matter how trifling the matter may be, don't leave it out. 「どれほど詰まらないことでも省かないでください」。no matter how ...
-
アリソン・フラッドがガーディアン紙に「古本 文学的剽窃という薄暗い世界」というタイトルで記事を出していた。 最近ガーディアン紙上で盗作問題が連続して取り上げられたので、それをまとめたような内容になっている。それを読んで思ったことを書きつけておく。 わたしは学術論文でもないかぎり、...
-
ウィリアム・スローン(William Sloane)は1906年に生まれ、74年に亡くなるまで編集者として活躍したが、実は30年代に二冊だけ小説も書いている。これが非常に出来のよい作品で、なぜ日本語の訳が出ていないのか、不思議なくらいである。 一冊は37年に出た「夜を歩いて」...
-
アニー・ヘインズは1865年に生まれ、十冊ほどミステリを書き残して1929年に亡くなった。本作は1928年に発表されたもの。彼女はファーニヴァル警部のシリーズとストッダード警部のシリーズを書いているが、本作は後者の第一作にあたる。 筋は非常に単純だ。バスティドという医者が書斎で銃...