少し以前、とあるフリーのジャーナリストがフランスへ行ってマクロン政権に異議を唱える人々(黄色いベスト)の記事を書いていた。そして金持ち優遇政策が日本の現政権のやり方とそっくりだという。
しかしこれは選挙の時からわかっていたことである。フランスがあのとき突きつけられたのは、極右のル・ペンを選ぶか富裕層寄りのマクロンを選ぶかという、ろくでもない選択だった。そしてファシズムを避けるためにもう一方のとんでもない選択肢を選ばざるをえなかったのである。
このような事態はアメリカでも起きた。前回の大統領選挙における真の対立は、トランプやクリントンの富裕層寄りの人々と、バーニー・サンダースという北欧的な社会民主主義をめざす勢力のあいだにあった。ところがサンダースは国民の選択肢とはならなかったのである。民主党自体が彼の行く手をはばんだ。その結果、トランプとクリントンという、どっちもろくでもない選択肢しか提示されなかったのだ。
問題は、選挙において国民に選択肢がないということだ。これは日本にも当てはまる。
リベラルは野党集結を叫ぶけれど、実際は野党といっても、みなこちこちの保守である。自民党の分派といってもいい。立憲民主でさえそうである。共産党もそんな野党に協力しているのだから、世話がない。野党が政権を取ったとしても、前回以上に保守的な政策を実施していくだけだろう。われわれには今、選択肢がないのである。
これこそがフランスと日本の類似点だ。
しかし日本のリベラルはいまだに野党を信じているらしい。野党が野党ではないことを見まいとしている。これではまったく駄目なのだ。このフリーのジャーナリストの記事が感傷的で薄っぺらなのも当然なのである。
Monday, February 11, 2019
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

-
アリソン・フラッドがガーディアン紙に「古本 文学的剽窃という薄暗い世界」というタイトルで記事を出していた。 最近ガーディアン紙上で盗作問題が連続して取り上げられたので、それをまとめたような内容になっている。それを読んで思ったことを書きつけておく。 わたしは学術論文でもないかぎり、...
-
今朝、プロジェクト・グーテンバーグのサイトを見たら、トマス・ボイドの「麦畑を抜けて」(Through the Wheat)が電子書籍化されていた。これは戦争文学の、あまり知られざる傑作である。 今年からアメリカでは1923年出版の書籍がパブリックドメイン入りしたので、それを受けて...
-
63. I don't know but (that /what) 基本表現と解説 I don't know but that he did it. 前項の Who knows の代わりに I don't know とか I cannot say ...