もう何回か書いたけれど、アメリカでは二十年ぶりに今年から新しい作品がパブリックドメイン入りすることになった。今日もふとプロジェクト・グーテンバーグのカタログを見ていたらアガサ・クリスチーの「ゴルフ場殺人事件」が入っていて思わずにこにこ顔になった。この作品は一九二三年に発行されたものなのだ。
ちょっとだけ説明すると、アメリカと日本ではパブリックドメイン入りする作品の条件がちがう。日本では作者の死後五十年(もうすぐ七十年に法律が改変されるだろう)が経過した作品はパブリックドメイン入りするが、アメリカでは出版年が問題となる。今年でいうと一九二三年か、それ以前に出版された本はパブリックドメイン入りしたと考えられる。来年は一九二四年に出版された本が付け加わる。作者が誰かと言うことは関係ない。出版年で決まるのである。
アガサ・クリスチーの「ゴルフ場殺人事件」は既に言ったように二三年の出版だから、今年はパブリックドメイン入りをした。しかしこれはアメリカの話であって、日本ではこの作品はパブリックドメインに入ってはいない。クリスチーが亡くなったのは一九七六年だから、二〇二七年になってはじめて日本ではパブリックドメイン入りすることになる。(もちろん著作権の保護期間が七十年に改変されれば、二〇四七年にパブリックドメイン入りすることになる)ここを気をつけて欲しい。「ゴルフ場殺人事件」はネット上では自由に読めるようだけれど、じつは日本にいる人がダウンロードしたりすることはできないのである。
こういう作品はたくさんあるから気をつけなければならない。とくにこれからは気をつけなければならない。なぜかというと日本では著作権法が改正され、パブリックドメインでない作品をダウンロードした場合は処罰される可能性が出て来たからだ。(漫画作家たちが大勢懸念の声をあげ、新しい法案は一時的に取り下げされたようだが、いつまた同じ内容の法案が提出されるかわからない)
プロジェクト・グーテンバーグが所蔵する作品の最後には、ファイル使用に際しての法律的注意が長々と示されているが、英語が出来る方は、あれを一度チェックしておくのがいいだろう。
Monday, April 8, 2019
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
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