前から読もうと思って、なぜか引き延ばしになっていた本だ。思い切って尻をすえ、一気に読み切った。
この本に関しては、ネタバレせずに書評することはできないので、そこは御寛恕願いたい。
一言で言えば、宇宙人が地球人を誘拐し、美味しくその肉を食べてしまうという話である。地球人は牛や豚のように飼育され、高級食材として異星人の星で売られるのだ。
これが動物の肉を食べている人間への、ある種の批判になっていることはすぐに見て取れるが、わたしが気になったのは、物語の階級的な側面である。
ここには明らかに三つの階級が存在する。異星にある超巨大企業(ここが人肉を売っている)、その下で過酷な労働条件のもと働いている人々(人間を誘拐したり、食肉加工する人々)、そして誘拐され食肉にされる人々である。最後の人々は、職も家族もなく、社会から脱落した人々である。登場人物はこの三つの階層にはっきりとわかれている。
小説の舞台がイギリスなので、イギリスを例にとっていうが、昔はイギリスは植民地の人々を搾取して富を得ていた。しかし外で搾取することができなくなると、今度は内側に無理やり「外」を創り出すようになる。それがプレカリアートだ。これによって国内の貧富の差は拡大していった。
プレカリアートは内側に存在していながら、実質上「外」と見なされ、軽蔑と唾棄の対象になる。そしてなぜかプロレタリアートはプレカリアートを激しく憎む。いつ自分たちがプレカリアートになるかわからないからである。一種の近親憎悪とでもいおうか。本当の問題は金持ちだけがますます富を増大させる、そのような仕組みにあるのに、プロレタリアートはその下の階層に対して嫌悪をつのらせるのである。
わたしはこの階級的な構造が「皮膚の下」に反映されていると思う。SF的な仕掛けが用いられているが、核心にあるのはまさしく今の社会の現実である。最下層の労働者を骨までしゃぶり(この物語では実際に肉をしゃぶられるわけだが)用無しになればぽいと捨ててしまう過酷な資本主義の姿がここにある。そして本当の敵を見間違う人々の姿が。
独逸語大講座(20)
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