Wednesday, October 9, 2019

「七人の眠れる男たち」

フランシス・ビーディング(ジョン・パーマーとヒラリー・ソーンダース二名の合同ペンネーム)が1925年に書いた冒険小説。

ビーディングは日本語にあまり訳されていない。ヒッチコックが「スペルバウンド」というタイトルで映画化した「ドクタ・エドワーズの邸」は確か訳されていたはずだ。しかしそれ以外はどうだろう。

訳されていないけれども、娯楽小説としてけっこういい水準の作品を書いている。とくに「イーストレップス連続殺人」などはよくできた推理小説である。本編はおそらくフランシス・ビーディングとして書かれた最初の本である。第一次世界大戦後、ドイツがふたたび軍備を整え、ヨーロッパの脅威となろうとする瞬間、たまたまスパイ活動に巻き込まれたイギリス人青年が大活躍して、その目論見をご破算にするという話だ。

このイギリス人青年がたまたまドイツのスパイと顔かたちがそっくりで、まちがってある秘密の暗号文書を手渡されてしまう。そこから彼の冒険がはじまる。場所はジュネーブで、国際連盟の本部がある場所だ。彼はそこに努める彼の友達、および恋人に事情を打ち明け、その結果、間違いに気づいたドイツのスパイたちに命を脅かされることになる。

しかし間違いの元となった顔立ちの類似が、逆にイギリス人青年の武器ともなる。なんと彼はフランスのスパイチームの助けを借りながら、ドイツのスパイ組織にドイツのスパイとして乗り込み、その陰謀の秘密を探り当てるのである。そして結句、彼と間違われたスパイがやるべき仕事を、そのスパイよりも見事にやってのけ、ドイツの巨大資本家たちの目論見を現実のものにしてしまうのだ。そのあとは一気に結末へとなだれこむ。

「偶然」顔立ちが似ているというのは非現実的なようだが、オッペンハイムの「入れ代わった男」(The Great Impersonation)でもこの設定が用いられている。イギリスとドイツのこの一致はなにを意味するのだろうか。どちらも大衆小説に過ぎないが、そこに見られる想像力の型には、なにかしらの秘密が隠されているような気がする。

独逸語大講座(20)

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