わたしは本を読むときは面倒くさいがノートを取る。自分の知らない語彙、使ったことのない表現、知らなかった漢字の使い方、そうしたものにぶつかるとすぐノートに取っておいて、あとで見返す。そのファイルは十数メガバイトにもなる。わたしが小説を一冊訳すと、一般的な小説の場合は500キロバイトくらいのファイルができるから、小説数冊分の表現資料をつくったことになるだろう。
それを全部憶えているわけではないし、資料をつくったことによってわたしの語彙力が大幅に強化されたわけでもない。それでも「ちょっとは」表現の幅が広がったように感じる。
そうやって苦労しながら語彙を増やしている人間からすると、安倍首相というのはじつに情けない男で、知性のかけらもない。彼は「退位礼正殿の儀」で「国民代表の辞」というのを読んだのだそうだ。そこには
「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願って已みません」
と書いてあったのだが、彼はそれを
「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」
と読んだ。この男が漢字が読めないことはつとに有名だが、恐れ多くも天皇にむかって「健康を願っていません」とはなにごとか。いや、もしかしたら彼は本音を吐いたのかも知れない。そんなふうに勘ぐりたくなるほどひどい間違いである。
つい先日も「桜を見る会」疑惑に関して追求されたとき、会への招待者を「募っているけど募集はしてない」などとちんぷんかんぷんな答弁をした。
ゴルフなんぞをやっている暇があるなら漢字のドリルを勉強なさい。そして漫画版でいいからウィンストン・チャーチルの伝記を読んで政治家のあるべき姿を学ぶことだ。
Wednesday, January 29, 2020
エドワード・アタイヤ「残酷な火」
エドワード・アタイヤ(1903-1964)はレバノンに生まれ、オクスフォード大学に学び、スコットランド人の女性と結婚した作家である。自伝や「アラブ人」という評論が有名だが、ミステリも何冊か書いている。ウィキペディアの書誌を見る限り「残酷な火」(61)は彼が書いた最後のミステリ...

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