作者のマイルズ・バートンはジョン・ロードのペンネームでも多くのミステリを書いている。本作は彼の作品の中でも相当に出来のいいほうだと思う。
謎の中心には新聞社の社長ガントレイ氏の死と、彼の兄の妻レディ・ガントレイの死がある。両者の遺言状の内容上、もしもガントレイ氏が先に死に、次にレディ・ガントレイが死んだ場合は、膨大な遺産はチャドウィック兄妹へと受け継がれる。しかしその順番が逆になった場合はハリントン兄妹に受け継がれることになっていた。
実際はどうなったかというと、レディ・ガントレイがまず死に、その数日後にガントレイ氏が殺害された。つまり二番目のケースが起きた。
当然ハリントン兄妹が利益享受者としてガントレイ殺害の容疑者として疑われる。レディ・ガントレイは事故が起きて、そのショックで亡くなるのだが、その死も彼らの仕組んだことではないかと警察は考える。
はたしてそうなのか。探偵役のメリオンの推理やいかに。
構成がしっかりしていて、中だるみのない、いい作品である。物語の最後で目の覚めるような推理が展開されるわけではないが、探偵役のメリオンの説明は、間違った推測をする刑事達の盲点を突いていて、説得力がある。論理をてこに、物語の様相をがらりと変えるミステリ黄金期の定型を踏んだ、風格のただよう作品。
関口存男「新ドイツ語大講座 下」(4)
§4. Solch ein kleines Kind weiß von gar nichts. そんな 小さな子供は何も知らない。 一般的に「さような」という際には solch- を用います(英語の such )が、その用法には二三の場合が区別されます。まず題文...
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