コロナウイルスが発生して以来、カミュの「ペスト」が売れているのだそうだ。フランスだけではなく、日本でもそうらしい。
伝染病を扱った文学はかなりある。しかも(今、こんなことを云うのはいささか軽率かもしれないが)読んで面白いものが多い。ポーの短編「赤死病の仮面」はデカダンな味わいがたまらないし、デフォーの「ペスト」は記録文学として秀逸である。ボッカッチョの「デカメロン」、ヘッセの「ナルチスとゴルトムント」、マンゾーニの「許嫁」。いずれも傑作として知られている。また、あまり知られていないがメアリ・シェリーも「最後の人間」というSFみたいな本を書いている。
ジャンル小説、つまり大衆向けの作品に眼を向けるなら、この手の作品は数知れない。クライトンの「アンドロメダ病原体」、グレッグ・ベアの「ブラッド・ミュージック」。ウエルズの「宇宙戦争」ではウイルスがエイリアンをやっつけてくれた。ホラーの大家であるキングやクーンツ、ミステリ分野の大物ル・カレやP.D.ジェイムズにも伝染病を扱った本がある。医学スリラー専門のロビン・クックもたぶんパンデミックものをなにか書いているだろう。
パンデミック文学のよいところは面白いだけでなく、考えさせるところである。科学の意味とか、人間存在の意義とか、平時は自明視している社会という構造物について鋭く反省をうながされるのだ。カタストロフィの地点から日常をとらえ返すのは大切なことだ。マルクスは恐慌から資本主義の働きを考えたし、フロイトも精神異常から正常の意味を考え直した。作家はパンデミックを想像することで日常に反省を加える。名作が多いのも当然だろう。
コロナウイルス騒動のせいで図書館が閉まっているようだが、自宅にこもりがちな週末などには本屋でパンデミック文学を捜してきて読むのも一興だと思う。読書は案外ストレスの解消にもなる。
Saturday, March 7, 2020
Elementary German Series (14)
14. Der Frühling Der kalte Winter ist zu Ende. Der Frühling ist da. Die Tage werden länger und länger. Die Sonne scheint warm. Unsere schön...
-
ウィリアム・スローン(William Sloane)は1906年に生まれ、74年に亡くなるまで編集者として活躍したが、実は30年代に二冊だけ小説も書いている。これが非常に出来のよい作品で、なぜ日本語の訳が出ていないのか、不思議なくらいである。 一冊は37年に出た「夜を歩いて」...
-
アリソン・フラッドがガーディアン紙に「古本 文学的剽窃という薄暗い世界」というタイトルで記事を出していた。 最近ガーディアン紙上で盗作問題が連続して取り上げられたので、それをまとめたような内容になっている。それを読んで思ったことを書きつけておく。 わたしは学術論文でもないかぎり、...
-
「ミセス・バルフェイムは殺人の決心をした」という一文で本作ははじまる。 ミセス・バルフェイムは当時で云う「新しい女」の一人である。家に閉じこもる古いタイプの女性ではなく、男性顔負けの知的な会話もすれば、地域の社交をリードしもする。 彼女の良人デイブは考え方がやや古い政治家...