Saturday, March 7, 2020

パンデミック文学

コロナウイルスが発生して以来、カミュの「ペスト」が売れているのだそうだ。フランスだけではなく、日本でもそうらしい。

伝染病を扱った文学はかなりある。しかも(今、こんなことを云うのはいささか軽率かもしれないが)読んで面白いものが多い。ポーの短編「赤死病の仮面」はデカダンな味わいがたまらないし、デフォーの「ペスト」は記録文学として秀逸である。ボッカッチョの「デカメロン」、ヘッセの「ナルチスとゴルトムント」、マンゾーニの「許嫁」。いずれも傑作として知られている。また、あまり知られていないがメアリ・シェリーも「最後の人間」というSFみたいな本を書いている。

ジャンル小説、つまり大衆向けの作品に眼を向けるなら、この手の作品は数知れない。クライトンの「アンドロメダ病原体」、グレッグ・ベアの「ブラッド・ミュージック」。ウエルズの「宇宙戦争」ではウイルスがエイリアンをやっつけてくれた。ホラーの大家であるキングやクーンツ、ミステリ分野の大物ル・カレやP.D.ジェイムズにも伝染病を扱った本がある。医学スリラー専門のロビン・クックもたぶんパンデミックものをなにか書いているだろう。

パンデミック文学のよいところは面白いだけでなく、考えさせるところである。科学の意味とか、人間存在の意義とか、平時は自明視している社会という構造物について鋭く反省をうながされるのだ。カタストロフィの地点から日常をとらえ返すのは大切なことだ。マルクスは恐慌から資本主義の働きを考えたし、フロイトも精神異常から正常の意味を考え直した。作家はパンデミックを想像することで日常に反省を加える。名作が多いのも当然だろう。

コロナウイルス騒動のせいで図書館が閉まっているようだが、自宅にこもりがちな週末などには本屋でパンデミック文学を捜してきて読むのも一興だと思う。読書は案外ストレスの解消にもなる。

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