Friday, September 24, 2021

エラ・スクライムサワ作「シーラ・クリーラー サイキック探偵」(1920) 

私は十九世紀末から欧米で流行りだした神智学とか降霊術に興味があって、そうしたものを扱った小説は好んで読む。この当時、オカルト趣味が流行ったのにはいろいろな原因があるのだが、いちばん意外な原因、しかもかなり重要な原因のひとつとしてリーマン幾何学の誕生がある。リーマンは三次元だけでなく多次元を想定することを可能にした。その考え方が一般人にも広まり、この世界(三次元世界)以外の世界の存在を想像させるようになったのである。そうした考え方を取り入れた作品は当時ごまんと書かれた。わたしが訳した「悪魔の悲しみ」とかウエルズの「タイムマシーン」とかコンラッドの「継承者」など、いちいち例を挙げれば枚挙に暇がない。ミステリの分野でもサイキックが登場するようになったのはこの頃である。スクライムサワの「シーラ・クリーラー」もその一つで、単純な話だけれども意外と面白く読めた。

これは「ザ・ブルー・マガジン」という雑誌に掲載された六編の短編を一冊にまとめたものである。主人公のシーラ・クリーラーは孤児でお金もない若い女性である。しかし幽霊を見ることができるという特殊な能力があるので、それを利用して生計を立てようと考える。彼女は新聞に「幽霊をしずめます」という広告を出す。そしてお屋敷にとりついた幽霊をはらったり、村を襲うオオカミ男の正体をつきとめたりするのである。

同時にシーラはある男性と恋に落ち、物語は彼らの結婚で終わる。怪奇現象に恐れず立ち向かう勇敢な女性の恋と冒険の物語というわけだ。読後感は非常にさわやかで、長く記憶に残るような作品ではけっしてないものの、読んでいるあいだはたのしく過ごせたと実感のできる良作である。

独逸語大講座(20)

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