Wednesday, November 17, 2021

ジョン・ラッセル・ファーン「爬虫類襲撃」

原題は The Slitherers。蛇のようにずるずると動き廻るもの、という意味である。イギリスの麦畑から奇怪な生物が発生する。小型の蛇とかなめくじとかに似た生物で、這うように動き廻る。それだけではなく、なんと彼らは非常な勢いで空を飛ぶことができるのだ。しかも人間を見るとその額に張りつき、知性を吸収する。知性を吸われた人間は痴呆のようになり、じきに死んでしまう。こんなとんでもない生物が大量に発生するのだ。どうやら宇宙から運ばれてきた卵が、ある偶然から孵化し、地球上で繁殖し始めたらしい。

ノアクロスを中心とするイギリスの科学者たちがこの生物を撃退しようとさまざまに研究を進め、対策を講じる。エイリアンのねぐらへの空軍の攻撃、金属ネットを用いた電流による殲滅作戦。しかし知性を得たエイリアンはこうした攻撃を予知して反撃に転じ、人間は大敗を喫するのだ。ノアクロスはいかにしてイギリスを、そして世界を救うのか。

パニック小説はたいてい極めて局地的な異変が、しだいに全体に波及するさまを描く。このパルプ小説もおなじパターンを踏襲していて、イギリスの田舎の麦畑で起きた小さな異常が、ロンドン、そしてイギリス全体へと広がっていく。はじめの数十頁はこの様子が非常に巧みに描かれていて、わたしは感心した。この作品はほかの作品とちょっと出来が違うんじゃないかな、と思った。しかしエイリアンと科学者の全面戦争に入ると、書き方に乱れが生じる。いや、いつもの八方破れの書き方に戻るというべきか。いくらパルプ小説でもそれはないだろうという情況が起きたり、書き方を工夫すれば一度の描写で済む実験が二度も繰り返されたり、あちらこちら説明が足りず読者が不満を感じる部分があるのだ。とくにエイリアンの侵入という今なら大騒動が起きるような事態がメディアで報じられても、一般人はしごく平然と普通の生活を送っているのは、どうしたって納得がいかない。

しかし全体として見れば平均以上の面白い小説になっていると思う。少なくともわたしは楽しんで読んだ。冒頭の数十頁の、あの緊迫感がずっと維持されていたらどんなによかっただろうとは思うけれど、ジョン・ラッセル・ファーンという人は文体とか構成の統一性なんて、はなから頭にはないのである。


後記 最近知ったことだが、ファーンの長編作品はほとんどが編集者の手によって短縮されているのだと言う。つまり作者から原稿を受け取ると、出版社の都合に合わせて編集者が作品を刈り込み、長さを調整するのである。調整のむずかしい作品は作者に返され、ファーンが書き直したこともあるらしい。なるほど、それじゃ構成が妙だなと感じるのも無理はない。

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