Thursday, May 26, 2022

ジョゼフ・L・ブロトナー「政治小説」

ダブルデイ出版社は政治学入門シリーズという小冊子をたくさん出していて、ときどき政治学以外の識者からも寄稿を募っていた。これもその一冊で、文学畑の学者が政治小説を紹介したものである。これが以外に面白く、最初はなんの気もなしに目次だけ見ておこうと思ったのに、結局最後まで読んでしまった。べつにその分析に鋭いところがあるわけではないのだが、読書案内としては最高の出来である。小説がどれほど政治と深く関わっているかということもよくわかるだろう。


作者はアメリカ、イギリス、その他の地域の三つにわけて、それぞれの代表的政治小説を検討していく。たとえばアメリカの場合なら、ビーチャー夫人の「アンクル・トムの小屋」からはじまり、アルビオン・トゥルジェの「愚か者の任務」、ヘンリー・アダムズの「デモクラシー」(この本はいつか訳すかもしれない)、ジャック・ロンドンの「鉄の踵」、アプトン・シンクレアの社会問題を扱った小説群、ジョン・スタインベックの「疑わしい戦い」、シンクレア・ルイスの「ここで起きるわけがない」、ジョン・ドス・パソスの「若い男の冒険」、ヘミングウエイの「誰がために鐘は鳴る」、ジョージ・ウエラーの「柱のひび」、ノーマン・メイラーの「バーバリの岸辺」、ポール・ギャリコの「恐怖の審問」、ほかにもじつに多くの作品が言及され、その長所短所、読み所が解説されている。

イギリスのほうでは、ジョージ・エリオット、ヘンリー・ジェイムズ、ベンジャミン・ディズレーリ、アントニー・トロロープ、ジョージ・メレディスといった大御所が取り上げられるだけでなく、ミセス・ハンフリー・ウォードやハワード・スプリングなどあまり知られていない作家にも焦点を当てられている。

第四章は「国民性の鏡としての小説」と題され、イギリス、アメリカのみならず、イタリア、スペイン、フランス、ドイツ、ギリシャ、ロシア、南アフリカなど各国の特殊性が議論されている。正直、この部分は眉につばして読まなければならない。なにしろテーマの壮大さに比して記述が短すぎるし、取り扱う資料も少なすぎる。しかしここに引用された小説の一節はどれも読み応えがあった。それぞれ作者の洞察が白熱した言葉で語られ、その部分だけでも考えさせる力を持っている。

第五章は非常に参考になった。「集団的政治行為を分析する小説家」という題がついているが、ここでいう集団とは「ルンペンプロリタリアート」、「農夫」、「労働者」、「プロレタリアート」、「中流階級」、「富裕層」のことである。こうした区別は漠然としか意識していなかったが、この本のおかげでイメージがいっそうはっきりしてきた。非常にありがたい。いくつもの「小さな気づき」を与えてくれる小説案内としてすぐれていると思う。

本書はプロジェクト・グーテンバーグのサイトで手に入る。(The Political Novel by Joseph Blotner)

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