Friday, September 9, 2022
エリザベス女王
前にも書いたけれど、わたしが英語に興味を持ったのはエリザベス女王のクリスマス・メッセージを聞いたからである。英語に興味を持ったばかりではない。わたしはその瞬間彼女の臣民になったのだ。たまたまラジオから流れてきた女王の凛とした、甲高い声に、わたしは恍惚となった。再放送の際にそれを録音したわたしはほとんど毎晩その音声を聞きながら寝た。そして日本人であるという事実はわたしにとって secondary matter つまり二次的なことになったのである。
ルイ・アルチュセールがイデオロギーの「呼びかけ」という理論を組み立て、絶大な影響力を持っているが、この「呼びかけ」はわたしにとって抽象的な観念ではなく、具体的な生々しい事実としてある。国歌が奏され、女王が典雅なブリティッシュ・アクセントでお話になり、最後に I wish you all a very happy Christmas. とおっしゃると、たまらなくうれしくなり、またイギリスを遠く離れた場所にいる自分がさびしくも思われたものである。わたしは歌手とかアイドルとかスターにいれあげることは一度もなかったが、そのすべての情熱をエリザベス女王に捧げたようなものだ。
エリザベス女王の訃報に接し、わたしは心から哀悼の意を表したいと思う。そしてエリザベス女王に関連した翻訳の仕事ができないか、考えようと思っている。
独逸語大講座(20)
Als die Sonne aufging, wachten die drei Schläfer auf. Sofort sahen sie, wie 1 schön die Gestalt war. Jeder von ihnen verliebte sich in 2 d...
-
19世紀の世紀末にあらわれた魅力的な小説の一つに「エティドルパ」がある。これは神秘学とSFを混ぜ合わせたような作品、あるいは日本で言う「伝奇小説」的な味わいを持つ、一風変わった作品である。この手の本が好きな人なら読書に没頭してしまうだろう。國枝史郎のような白熱した想像力が物語を支...
-
昨年アマゾンから出版したチャールズ・ペリー作「溺れゆく若い男の肖像」とロバート・レスリー・ベレム作「ブルーマーダー」の販売を停止します。理由は著作権保護期間に対するわたしの勘違いで、いずれの作品もまだ日本ではパブリックドメイン入りをしていませんでした。自分の迂闊さを反省し、読者の...
-
パット・フランクのこの小説は日本ではなぜか翻訳が出ていないが、デイヴィッド・プリングルがSF小説百選のリストにも入れた名作である。 まず時代は1959年。場所はフロリダのフォート・リポーズという小さな町だ。主な登場人物は、フォート・リポーズに住むランディ・ブラグという三十代の男と...