Sunday, November 20, 2022

ジョン・ハンプトン「土曜の夜、グレイハウンドにて」

発表当時はグラハム・グリーンも賞賛し、翻訳もされ、スマッシュ・ヒットとなった作品。作者はバーミンガム生まれで、かなり貧しい幼年期を過ごした人。精神障害のある少年の家庭教師をするようになってある程度の収入が入るようになり、創作にはげむようになった。で、本作の内容は……

さびれたイギリスのある村(ダービシャーあたり)にグレイハウンドという酒場があった。たくさんの人がこの酒場の経営を試みたが、みな失敗している。いちばん新しい経営者は、フレディとアイヴィという若い夫婦者、そして妻の弟であるトムという三人組だ。フレディは女にも金にもだらしない遊び人。しかし妻のアイヴィは、彼はまだ子供なのだ、いつか彼は変わるだろう、とかばいだてし、夫と別れることができない。トムはアイヴィの弟で、ホテルマンとして着実な道を歩んでいたのだが、アイヴィに誘われて酒場の経営に参加する。

アイヴィとトムはもちろん仲がいいのだが、トムとフレディは反目しあっている。フレディはアイヴィとの関係がうまくいっていないのはトムのせいだと考えている。一方トムはフレディの女にも金にもだらしない態度を憎んでいる。よくある夫婦関係であり、よくある夫と義弟の関係なのだが、本作ではそれが非常な緊張感とともに描き出されている。

物語の後半は、前半で描き出されたさまざまな緊張関係がある土曜日の晩に一気に噴出し、カタスロフィへと突き進む様子を描いている。アイヴィはフレディと縁を切ったならまともな生活ができたかもしれない。弟のトムは冷静、かつ真面目。腕に職を持っているし、姉のアイヴィを助ける気で満々だから、離婚後の生活は経済的にはしっかりしたものになるはずだった。しかしアイヴィはフレディから離れることができない。そのため誰の目にも明らかな悲劇的結末へと彼らはむかっていくのである。この作品のいいところは結末の悲劇の徹底ぶり。そこにはもう絶望感と救いのなさしか感じられないのだ。古典悲劇の世界ならともかく、現代の卑俗な世界を描きつつ、これだけ徹底した悲劇的感情を喚起する作品は、そうお目にかかれない。

作者のハンプソンはトムのように姉を手伝って酒場で働いた経験があるらしい。そのため酒場の描写もひどくリアルで面白かった。今ではまったく読まれなくなった作家だが、実力のたしかな文学者だと思う。

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