Wednesday, November 23, 2022

コーラ・ジャレット「フィッチ湖の湖畔にて」

ボルヘスとビオイの推理小説のリストに本作は出てくる。それで興味があったのだが、いわゆる推理小説を期待するとがっかりする。推理小説的な要素を含んでいるとはいえ、これは性格の異なる四人の人間の葛藤劇といったほうがいい。非常に丁寧につくられた作品で、文章にも叙情性がある。


ジュリアス・ネトルトンという大学教師がフィッチ湖という人里離れたキャンプ地のような場所で溺死する。その死体を見ながら、彼の若い友人であるウオルタ・ドレイクが死に至るまでの経過を振り返る。そして最後にジュリアスの死の真相をウオルタはつかむ。その点はミステリのような味わいを持つが、しかしこの作品をミステリと呼ぶなら、ハートレイの「仲を取り持つ者」だってミステリになるだろう。

物語の中心にいるのは二組の夫婦だ。一組はジュリアスとメアリ。もう一組はやはり大学教師のロルフ・デミングとエロイーズである。ジュリアスはひどく自分勝手なところがあって、メアリとの関係があまりうまくいっていない。メアリは優しい、献身的な女性だが、ジュリアスが彼女に愛情を見せないので、満たされないものを心の中に持っている。ロルフは、ひどくおとなしい男で、ジュリアスに誘われて夏休みをフィッツ湖のそばで過ごすことになる。エロイーズは美人だがわがままな女で、ひどく計算高いところがある。そしてロルフは強気のエロイーズの意のままに動いている。

この二組の夫婦者が出会い、妙な関係が生じる。まずエロイーズがジュリアスからもメアリからも嫌われる。次にメアリとロルフが次第に親しくなり、互いを思い合う仲になる。エロイーズはこれに気づき、二人の仲を裂こうとする。こんな具合にして緊張感が高まっていくのだ。そしてとうとうジュリアスとエロイーズが湖に出ているときボートが転覆し二人は水死するのである。しかし語り手のウオルタは一晩かけてこうしたことを回想しながら、ふとこの事故がいかなるものであったのか、その真相にたどり着くのである。

人間関係はいささかどろどろしているが、静まりかえった夜、湖畔の情景など雰囲気が巧みに醸し出された作品になっている。しかし読後に強い印象を残すかというと……正直、それほどでもなかった。

独逸語大講座(20)

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