§24.
treffen, traf, getroffen は「的中せしめる」、「あてる」ですが、「彼はそれを良くあてた」が「運が良かった」、「いいのにあたった」、「うまいことをした」の意味になるのはどうした訳でしょう?だいいち es (それを)とは何を指すのでしょう?
こんなことを問うのは、問うのが野暮で、これは実は(まんがいい、運がいい)という熟語なのです。すなわち、ドイツ語には、ほとんど何を指すのか解釈しようのない、また解釈するにも及ばない四格の es を不可欠の要素とする熟語動詞が非常に多いのです。
これは英語にもたくさんあります。電車が混み合って、みんなが我勝ちに乗ろうとすると、在日の米兵が Take it easy! (急ぐな)というそうですが、これもそれで「それを気楽に取れ」とは、この羽目をそうゆとりのない気持でせちがらく取ってはいかん、もっとのんきな気持で這般の状勢を傍観せよということなのでしょう。とにかく「それをのんきに取る」という熟語があるわけです。take things easy ともいうところを以て見ると、it は「目前の問題」、「這般の関係」みたいなものらしいです。
(1) Er hat es gut.
あいつは結構なご身分さ。
(2) Er meint es gut mit dir.
彼は君のためを思ってそうするのだ。
(3) Er will es mit keinem verderben.
彼は誰をも怒らせたくないのだ。
(4) Das kleine Gehalt schafft es nicht.
少々の月給じゃ追っつかない。
(5) Ich habe es auf fünf Kinder bebracht.
とうとう餓鬼五人まで漕ぎつけた。
(6) Er treibt es zu bunt.
あいつのやり方はあんまりでたらめだ。
(7) Machen wir's kurz!
どうだ、速い所を行こうぜ。
(8) Sie hat es auf der Brust.
あの女は胸の病気だ。
(9) Mach's gut!
さよなら。
(10) Wie weit haben Sie es nach Hause?
お宅まではどれくらいありますか?
§24. (3) verderben: 「ぶっ毀す」(es verderben は、つまり関係をぶっ毀すの意。) (4) es schaffen: 「それを成就する」で「間に合う」 (6) bunt: 原意は「極彩色の」、「目も綾なる」、転じて「派手に」、「目まぐるしく」、「無茶に」。 (9) Mach's gut: es gut machen (機嫌が好い、調子が好い。) (10) weit (=fern): 遠い。