Tuesday, January 14, 2025

英語読解のヒント(155)

155. would sooner...than...

基本表現と解説
  • I would sooner die at once than live in this agony.
  • I would rather die at once than live in this agony.
  • I would liefer die at once than live in this agony.

前項の表現より取捨選択の意を露骨にあらわしたもの。would の代わりに had が用いられることもある。

例文1

I had rather people laugh at me while they instruct me than praise me without benefitting me. Goethe

Dictionary of Quotations (compiled by James Wood)

わたしにとっては、笑われながらも有益な学びを与えられるほうが、得るものがない賞賛を受けるより、好ましい。

例文2

 I had rather be a dog, and bay the moon,
 Than such a Roman.

William Shakespeare, Julius Caesar

そのようなローマ人であるより、犬になって月に吠えるほうがいい。

例文3

I would rather be the author of one original thought than conqueror of a hundred battles. W. B. Clulow

Dictionary of Quotations (compiled by James Wood)

百の戦に勝つより一個の独創的思想を生み出すことを私は欲する。 W・B・クルーロウ

Saturday, January 11, 2025

英語読解のヒント(154)

154. would as well...as

基本表現と解説
  • I would as well die at once as live in this agony.
  • I would as good die at once as live in this agony.
  • I would as lief die at once as live in this agony.
  • I would as soon die at once as live in this agony.

「ひと思いに死ぬ」のも「こんな苦しい思いをして生きる」のも好ましさ、あるいは好ましくなさにおいておなじであるという意味。それを踏まえた上で、 「こんな苦しい思いをして生きるくらいなら、ひと思いに死んだほうがまし」と訳すことも可能 (I would rather die at once than live in this agony)。would (仮定法)の代わりに had も用いられる。

例文1

I'd as soon listen to dried peas in a bladder, as listen to your thoughts.

W. B. Yeats, The Hour Glass

おまえの考えを聞くくらいなら莢のなかの乾涸らびた豆の音でも聞いたほうがましだ。

例文2

"Oh, that is an old door connected with another passage that leads by a dark and wearying staircase to the servants' corridor beneath! I am afraid you won't be able to open it, as it is rusty with age and disuse. The servants would as soon think of coming up here as they would of making an appointment with the Evil One; so it has not been opened for years."

Margaret Wolfe Hungerford, The Haunted Chamber

「ああ、あれは古いドアでべつの通路につながっています。その先の暗くてうんざりするような階段を降りると召使いたちのいる廊下に出るんです。開けることは無理でしょうね。古いし使われていないから錆びついているんです。召使いはここに上がってこようとは思いません。悪魔と会う約束をしようなんて思わないように。で、何年もあのドアは開けられていないのです」

 この部分は The servants would consider coming up here as much as they would consider making an appointment with the devil. と考える。例文3 も同様。

例文3

La Bruyère said: "Women often love liberty only to abuse it." Two hundred years later Balzac wrote: "There are women who crave for liberty in order to make bad use of it." The thoughts are not great, they are not even true, but that is not the question. Could such a genius as Balzac be accused of plagiarism because he expressed a thought practically in the very words of La Bruyère? I would as soon charge Balzac with plagiarism as I would accuse a Vanderbilt or a Carnegie of trying to cheat a street-car conductor out of a penny fare.

Max O'Rell, Rambles in Womanland

ラ・ブリュイエールは「女はただ悪用せんがために自由を愛することがしばしばある」と言った。二百年後バルザックは「女は悪用するために自由をほしがる」と書いた。深遠な思想でもなければ、真実ですらないが、しかしそれはどうでもいい。ラ・ブリュイエールと実質的におなじ言葉遣いで思想を表現したからといって、バルザックのような天才に盗作の非難を浴びせることができるだろうか。盗作だといってバルザックを非難するのは、電車賃を一ペニーごまかしたと言ってヴァンダービルトやカーネギーみたいな金持ちを責め立てるのとおなじである。

Wednesday, January 8, 2025

英語読解のヒント(153)

153. have the + 抽象名詞 (2)

基本表現と解説
  • Whom have I the honour of addressing?
  • May I have the pleasure of seeing your brother?

丁寧な辞令として「have the + 抽象名詞」の形が使われる場合は「光栄」「愉快」は意味が軽くなって単に What is your name? とか May I see your brother? の意となる。

例文1

“I have had the honor of telling you that I have only just stepped out of the train.”

Henry James, Daisy Miller

「ただいま申し上げた通り、わたしは汽車から降りたばかりです」

例文2

"I never had the pleasure of seeing him — as yet," answered Mr. Jones, very stiffly.

Anthony Trollope, Christmas at Thompson Hall

「いや、お目にかかったことはありません……いまだに」とジョーンズはすこぶる改まって答えた。

例文3

“May I have the pleasure of dancing with you?”

Unknown, The Comic English Grammar

「ダンスのお相手をお願いできますか」

Sunday, January 5, 2025

英語読解のヒント(152)

152. have the + 抽象名詞 (1)

基本表現と解説
  • He had the audacity to deny such a patent fact.
  • He had the audacity of denying such a patent fact.

抽象名詞を形容詞に置き換えて言い直すと He was so audacious as to deny such a patent fact. となる。「彼は厚顔にもこのような明白な事実を否定した」

例文1

"I do think," I said, "that when I speak to you you might have the civility to pay some little attention."

Barry Pain, Eliza

「おいおい、人がものを言うときは、ちょっとは注意を向けてくれてもいいと思うがね」

例文2

But he had the ill-fortune to be older by a couple of years than most of his fellow-students....

William Makepeace Thackeray, The History of Henry Esmond, Esq.

しかし彼は不幸にして学友の大半の者より二歳年上であった。

例文3

You have married not only a low-born girl, but the daughter of a felon — a felon's daughter is mistress of proud Beechwood! You who scorned Philippa L'Estrange, who had the cruelty to refuse the love of a woman who loved you — you who looked for your ideal in the clouds, have found it near a prison cell!

Charlotte M. Braeme, Wife in Name Only

あなたは生まれの賤しい娘と結婚しただけではありません。重罪犯人の娘と結婚したのです。重罪犯人の娘が高慢なビーチウッドの奥方! フィリッパ・レストレンジを蔑んだあなた、あなたを愛する女の愛を残酷にもしりぞけたあなた、理想の女を雲の上に求めたあなたは、その理想を牢獄のそばに見出したのです。

Thursday, January 2, 2025

英語読解のヒント (151)

151. fate willed it that...

基本表現と解説
  • Fate willed it that he was absent on that particular night.

Luck willed it that... とか Chance willed it that... という形もある。「運命・幸運・偶然が……然らしめた」あるいは「……と定めた」という意味である。

例文1

Further, chance willed it that he should be an American.

William Le Queux, The Broken Thread

さらに彼はたまたまアメリカ人であった。

例文2

Accident willed it that one of the shapeless groups of masked men and women collected in a vast barouche, stopped on the left of the boulevard, while the wedding party stopped on the right.

Victor Hugo, Les Misérables (translated by Lascelles Wraxall)

たまたま仮面をつけた男女の雑然たる一団が馬車に乗り合わせて大通りの左側に停まり、婚礼の人々が右側に停まっていた。

例文3

Chance had so arranged the denseness of the branches that Déruchette could see while Gilliatt could not.

Victor Hugo, The Toilers of the Sea (translated by Isabel F. Hapgood)

たまたま枝の繁り具合のせいでデルシェットからは見えるのだが、ギリヤットからは見えないようになっていた。

 W. Moy Thomas の訳では Accident had so placed the branches, that Déruchette could see the newcomer while Gilliatt could not. となっている。

Sunday, December 29, 2024

アーシュラ・パロット「エクス・ワイフ」


アーシュラ・パロット(1899-1957)は小説家でありシナリオ作家でもあった。彼女の処女作「エクス・ワイフ」(1929)は大ベストセラーになり、MGMによって映画化もされたが、今ではよっぽどの読書家でないかぎり知る人はないだろう。しかし読んだ人はその面白さに圧倒される。

「エクス・ワイフ」とは「元妻」という意味。語り手はパトリシアという若く美しい女性だ。彼女は二十一歳で結婚するが、性的な自由を求めた実験的生活が破綻し、ピーターという夫と別れる。(とはいえ、離婚はしない)物語はここからはじまる。そして冒頭から生々しい女の語りが開始されるのだ。この語りは本音をぶちまけたじつに迫力のあるもので、一行読んだだけで、もう止まらなくなる。

二十年代といえば堅苦しいヴィクトリア朝的道徳観から抜け出し、女性がいろいろな意味で自由奔放を追求した時代だが(そういう女性はフラッパーなどとも呼ばれた)、パトリシアはその自由奔放の代償として孤独感や虚無感を味わうことになる。

パトリシアが夫の友人と関係を持ったり、三角関係に陥ったり、堕胎する場面など、週刊誌記事のようなあくどい描写になっている。しかしそれはパトリシアの本音をなんの脚色もなしに表現した結果であって、この正直さがジャズエイジの人々に受けたり、忌避されたのだろう。

愛する夫に逃げられてしまったその空白を埋めるためにパトリシアは男性遍歴を重ねる。ジムに通いながら、華やかなニューヨークでコピーライターとしてバリバリ働くも、むなしさ、哀しさを抱えた彼女の姿は、1980年代、90年代のキャリアウーマンの姿を彷彿とさせる。本書は1989年に一度再刊されているが、絶妙のタイミングだったと思う。しかし女の本音がつづられたこの本は、今の人にも共感を持って迎えられるのではないか。本書の最後はいささかつくったような感じがあるけれど、それでも女の複雑な心情をあらわしていて、通俗的だが、読み応えのある、いい作品だと思う。McNally という出版社から昨年ペーパーバックがでたばかりだから入手は容易だろう。

Thursday, December 26, 2024

バークレイ・グレイ「殺人者コンケスト」

 


バークレイ・グレイを読むのは初めてだが、一読してさっそくファンになった。じつに爽快なパルプ小説だ。とにかく文章のイキがいい。釣り上げた魚がピチピチと尾びれで地面を打つような感じだ。文章だけじゃなく、主人公もイキがいい。その名はなんとノーマン・コンケスト。「ノルマン征服」である。彼は一種の義賊――ロビン・フッドの現代版――であって、悪をこらしめ、弱きを助ける。もちろんこの善悪の観念は(法や法的手続きにのっとらない手段を用いたものであるから)よくよく考えるとさまざまに問題をはらんでいるのだが、それは一応脇に置いておこう。警察も彼の振る舞いを大目に見ているようだ。なぜならノーマンが標的にするのは、あくどいことをやっていながら、法律では罰せられない連中であると知っているからである。それどころか彼の美しい妻はスコットランドヤードの警視の知り合いなのだ。ノーマンと妻のジョイはノーマンスクエアにあるペントハウスで贅沢な生活を送っている。まるでアメコミのような設定だ。おっと、言うのを忘れていた。作者は本名をエドウィ・サールズ・ブルックス(1889ー1965)というイギリス人である。

さて肝心の話の内容だが……。

ノーマンはある晩、鉄道線路の上に身を投げだし、自殺しようとしている貴族サー・キャリントンを危機一髪で助ける。自殺しようとした理由を尋ねると、キャリントンはチョートという金貸しにだまされて、邸宅をまきあげられることになったらしい。ノーマンは以前からチョートの所業をいまいましく思っていたので、これはよい機会だと、彼をこらしめようとする。彼はチョートの事務所に忍び込み、キャリントンに関する書類を奪い取り、そののちチョートにキャリントンの借金をチャラにする誓約書を書かせよう、と考えるのだ。彼はキャリントンに安心しろ、夜が明けるまでに問題はすべて解決していると請け合う。

ところがノーマンの目論見通りにことは運ばなかった。事務所に侵入し、金庫からキャリントン関係の書類を盗んだまではいいが、なぜかそこにチョートがあらわれ、すったもんだの末にノーマンの銃が暴発、チョートの頭を撃ち抜いてしまう。

その後、警察は現場に残された指紋からノーマンを犯人と特定し逮捕する。ノーマンの妻ジョイと、ノーマンに味方するウィリアムズ警視は、チョートの死が事故であることを証明しようとするのだが……。

この物語のよさはとにかく登場人物の性格がじつに際立っている点にある。なにものをも怖れず、いつも悠々と構えているノーマン、小柄ながら胆力があり、警官とも五分で渡り合える妻のジョイ、ノーマンをよく知り、彼に同情的な警視のウィリアムズ、頭が固くてひたすらノーマンを犯人扱いするクロフォード警部など、それぞれ持ち味が異なり、その多様性が面白いドラマの基礎になっている。やはりキャラが立ってこそ、ドラマは面白い。

もう一つのよさはスピード感だろう。たった一晩のうちに次から次へと事件が起き、冒険が展開される。かといって決して叙述がはしょったものになったりはしない。このあたりのバランスが見事で、作者の並々ならぬ手腕に感服した。

本書は前半で金貸しチョートの話は終わり、後半は彼の共同経営者の話に変わる。つまり二つの異なるエピソードが一編の小説として提示されている。ほかのノーマンものを読まないとわからないが、全部こんなふうに二話が一冊に集録されているのだろうか。後半の物語も前半のほどではないが、よくできているほうで、最後まで楽しく読める。こんなパルプ作家がイギリスにいたのかと、驚いた。ちょっとした「めっけもの」である。ウィキペディアを見ると、ノーマンものを51冊、アイアンサイドという人物(スコットランドヤードの刑事かなにかか?)を主人公に作品を43冊も書いている。さっそく探し出して読もうと思う。

英語読解のヒント(155)

155. would sooner...than... 基本表現と解説 I would sooner die at once than live in this agony. I would rather die at once than live in this agon...