Tuesday, November 5, 2024

英語読解のヒント(142)

142. as good as

基本表現と解説
  • He is as good as dead. 「死んだも同然だ」

この as good as は「実質的に……も同然」の意味になる。

例文1

"Don't say you aren't coming — you as good as promised."

Leonard Merrick, The Quaint Companions

「行かないなんて言わないでくださいよ。約束したも同然なんだから」

例文2

I have as good as confessed I love him....

Samuel Richardson, Pamela

わたしは彼に愛を告白したも同然でした……。

例文3

"...you are a married man — or as good as a married man...."

Charlotte Bronte, Jane Eyre

「あなたは結婚している。いえ、結婚したも同然の人です……」

Saturday, November 2, 2024

英語読解のヒント(141)

141. 擬音語

基本表現と解説
  • Bang went the gun. 「バンと鉄砲が鳴った」
  • Smack went the whip. 「ピシッと鞭が鳴った」
  • Patter, patter, goes the rain. 「パラパラと雨音がする」

動詞 go に clatter, cluck, crack, patter, smash, snap, tang, whirr などの擬音語が伴われ「……と鳴る」の意味になる。

例文1

He held his breath and listened, while his heart went pit-a-pat, pit-a-pat.

Thornton W. Burgess, The Adventure of Peter Cottontail

彼は心臓をドキドキさせながら息を詰め、耳をすました。

例文2

Then the driver cracked his whip this way, that way, when round went the wheel — clatter, clatter, went the horses' hoofs on the boulder pavement....

Sabine Baring-Gould, The Gaverocks

馭者は鞭をピシリピシリと鳴らし、馬車が動き出した。丸石を敷き詰めた道の上で馬のひずめがパカパカと鳴った。

例文3

Of course, many people have starved to death before now, but starvation is an awful thing to witness in the person of one you love. Something seemed to go snap within me, and from that moment I was a different being.

Mrs. Edward Kennard, Landing a Prize

もちろん今までだってたくさんの人が飢えて死んでいる。でも愛する人が飢えているのを見るのは恐ろしいことだわ。なにかがわたしのなかでパチンと弾けた。そしてその瞬間からわたしは人が変わったのよ。

Tuesday, October 29, 2024

シドニー・ホーラー作「夜のプリンセス」

 

シドニー・ホーラーというのは一九二十年代から四十年代にかけて大量のジャンル小説を書きまくった、それなりに人気のあった作家である。質的にはたいしたことはないけれど、大衆に人気のある作家というのはどの国にもたくさんいる。

「夜のプリンセス」はエルジーという美しい女性が主人公となる。彼女はもともとは大金持ちの娘だったのだが、父親が詐欺をはたらいてばれ、一気に破産。その結果、エルジーは婦人服店のモデルをやって糊口を凌いでいる。金持ちの顧客が来ると、その人に売りつけたいドレスを着て、店内でファッションショーのように歩いて見せるのである。

この美貌のエルジーをめぐって三人の男が動き出す。一人は大新聞社の若き社主フィリップだ。絶世の美女がモデルをしているという噂を聞きつけ、さっそく女友達を連れて彼女がいる店を訪れる。もう一人は国際的な犯罪者ズベーラである。彼はエルジーがとある王国の皇女に似ていることを利用し、悪事を働こうとする。そしてもう一人、ズベーラの不審な動きに気づいたスコットランドヤードの刑事ロマックス。彼は先ほどあげたフィリップの知り合いでもある。こうした人々がロンドンとパリを舞台に物語を織りなしていく。

登場人物は非常に多いが、物語じたいはわかりやすい。出て来る人々はみな定型的で、物語の展開も型にはまっているからである。比較的短い章立てで、次々と場面が変わり、物語自体の古さはともかくとして、まったく退屈はしない。なるほど一般受けしそうな小説だ。エンターテイメントの書き方をよく知っている作家だな、とちょっと感心する。しかし記憶に残るかというと、どうだろう。数カ月後にはすっかり忘れているかもしれない。

Saturday, October 26, 2024

ケネス・フェアリング「心の短剣」

 


ケネス・フェアリングといえば大傑作「大時計」で有名だが、彼が書いたほかのミステリはあまり知られていない。フェアリングは非常に文章がすぐれていて、ニコラス・ブレイクみたいにどの本もその文章で読ませる。本書はとある芸術家のコロニーを舞台にした殺人事件を扱っている。

デマレスト・ホールは名のある画家、彫刻家、詩人、作家、音楽家などを招待し、無料で生活させる場所である。芸術活動の奨励を目的とした施設だ。芸術家というと、文化性の豊かな、高尚な紳士淑女を想像するが、実際はなかなかそんなものではない。嫉妬深く、口の悪い、偏狭な俗物だって大勢いる。デマレスト・ホールに住み、そこに招待する芸術家を選定する委員の一人ウォルター・ニコルズも、じつにねちねちと人の嫌みを言う、イヤな作家だ。彼のものいいに腹を立てたクリストファー・バーテルという画家は、つい彼をぶん殴ってしまったこともある。クリストファーは元ボクサーだったという異色の画家である。犯罪歴もあるらしい。芸術といってもその背景を探るとどろどろした情念や暴力的な世界とつながっているのである。デマレスト・ホールは決して文化の薫り高い場所ではない。

さてクリストファーにぶん殴られたウォルターという作家なのだが、じつは彼は別居生活している妻を殺そうと狙っている。妻はルシールという名前で、彼女も芸術家としてデマレスト・ホールに招待され、そこに住んでいるのだ。彼はこの施設の管理者をむりやり味方に引き入れ、妻の殺害をたくらむ。ところが彼はある朝、背中にナイフをずぶりと刺されて、死体となって発見される……。

この小説は論理によって犯人を割り出すような作品ではない。それよりも芸術家同士の確執やら羨望やら嫉妬やらの描写が生き生きとして面白く、それを楽しむべきものである。文章はウィットに富み、皮肉も効いている。たとえば芸術家が気高い心持ちを表現しようとした作品は二束三文でしか売れず、彼が抱える闇を表現した作品は、彼の作品のなかでもっとも高値がつくというような具合に、芸術の成り立ちについて、ある種の「批判的」な見方を提示している。

考えてみればダンテだって、ジョイスだって、実生活における敵を作品中に登場させ、こきおろしている作品が世界的な大傑作になっているのだ。芸術の奥底には否定的なもの(心の短剣)が存在するという考え方だって成り立つだろう。

ただ本書では、犯人である芸術家は捕まえられ、最終章で死刑にされるのだが、正直、そこまで描かなくても、作者の狙いは充分に表現されていると思う。最終章が蛇足じみた印象を与えるのは残念だ。

Wednesday, October 23, 2024

ファーガソン・フィンドレー「真ん中の男」

 

はじめて読む作家だと思っていたが、読了後、末尾に附された短い著者紹介を見てびっくりした。

ファーガソン・フィンドレー(1910ー1963)はペンシルベニア生まれのアメリカ人作家で、五十年代にマイナーな犯罪小説を幾つか書いている。もっとも成功したのは「波止場」で、1951年に「ギャング」というタイトルで映画化された。

そうか、「波止場」を書いた人か。それなら本書の出気の良さも理解できる。あんまり昔に読んだ本なので、作者の名前をすっかり忘れていた。

物語はこんなふうに始まる。海軍を退役した二十九歳のマクローリーは、霧の深いある夜、通りで三人組の男とすれ違う。どうやら三人は呑み仲間らしく、酔いつぶれた一人を、ほかの二人が左右から支えて歩いていた。マクローリーは、支えている男の一人をすれ違いざまにチラリと見て、「ジャックソン!」と声をかける。海軍で知り合った男とそっくりだったのだ。しかし呼びかけられた男は「人違いだぜ」と言って過ぎ去ってしまう。マクローリーは「失礼」と言ってその場を去る。

その直後に三人組の真ん中にいた男が死体となって路上で発見される。警察の捜査に協力したマクローリーは、三人組の一人が彼の友人ジャックソンに「似ていた」と証言したのだが、どういうわけか、翌日の新聞には、友人ジャックソンの写真が載り、容疑者扱いされている。マクローリーがおやおやと思っているところへ、ジャックソン本人がやってくる。殺人者扱いされるとは、どういうことだと憤慨しながら。マクローリーは警察にこの誤解を報告したあと、ジャックソンをなぐさめるために街へ呑みに連れて行く。そしてさんざん飲み明かした次の日、マクローリーはジャックソンが殺害されたことを知るのだ。

ジャックソンはなぜ殺されたのか。そもそも三人組の真ん中にいた男は何者で、なぜ命を奪われたのか。マクローリーはテッパー警部補に助けられながら、政治的陰謀の闇をあばいていく。

会話は生きがよく、地の文はある種の端正さをたたえた良質の文章だ。最初に書いたように「波止場」の作者とは知らなかったから、ずいぶん感心しながら読み進んだ。物語は、短いせいもあるが、たるみなく進展する。恋愛あり、アクションあり、典型的な米国式エンターテイメントだ。「波止場」のハードボイルド的あじわいに較べると、やや落ちるが、それでも平均点以上の娯楽小説になっている。

Sunday, October 20, 2024

マックス・ビアボーム「イーノック・ソウムズ」


これは長編ではなく、やや長めの短編だけれども紹介しておく。「七人の男(Seven Men)」という短編集に入っている。

語り手はビアボーム本人で、彼が大学生の頃の話だ。大学生ともなるとそれぞれ持って生まれた才能を発揮し、世に打って出ようとする時期である。彼のまわりにも画家としてすでに名声を博している友人がいたし、彼自身も雑誌などに短編小説を載せたりしている。あるとき、その画家を通して一人の詩人と知り合う。彼はすでに詩集を出版していて、売り出し中のビアボームは「すばらしい」と彼に興味を惹かれる。自分の本が出版されるというのはじつにうらやましいことなのだ。この詩人が表題になっているイーノック・ソウムズである。

イーノック・ソウムズには少々俗物の気がある。彼は他人の評判などまるで気にしない風を装いながらも、本心ではそれが気にかかって仕方がないのだ。あるときビアボームとの食事の席で、「自分の百年後の名声がどうなっているのか、わかればなあ」と思わずもらす。ここから話がファンタジーめいてくるのだが、それを聞きつけたとある紳士、じつは悪魔が、「その願いを叶えてあげましょう、でもそのかわり……」とファウスト伝説がはじまるのである。ビアボームの注意の言葉を振り切って、イーノック・ソウムズは未来へ行き、そして見つけたのは……

SF的な時間旅行とファウスト伝説を組み合わせた作品で、こんなものをビアボームが書いているとは思わなかった。しかしどこかチクリと読む者の心に刺さるものがあって、それは「ビアボームらしいな」と思わせる。

Thursday, October 17, 2024

関口存男「新ドイツ語大講座 下」

第1課 指示詞と不定指示詞

§1. Die Zeit ist endgültig vorbei.

そういう時代は断然去った。

endgültig: 最終的に、決定的に。vorbei: past.

 この die は、定冠詞と同じものですが、字間があいているのでもわかる通り、特に強調されています。字間をあけるのは、この一語にアクセントを入れて読めという意味です。これでわかるごとく、定冠詞を特に強めて発音すると、「そういう」、「そんな」、「この」、「その」などの意になります。Die Zeit はつまり Diese Zeit または Eine solche Zeit (Solch eine Zeit, so eine Zeit ともいう)と同じです。

英語読解のヒント(142)

142. as good as 基本表現と解説 He is as good as dead. 「死んだも同然だ」 この as good as は「実質的に……も同然」の意味になる。 例文1 "Don't say you aren't c...