以前、YouTuber によるゲーム実況が初級の英語学習に役に立つという話をした。どれくらいわかりやすいか、いくつか実例を示してみたい。初回はオーストラリア人のジュリエットさんが Shadows of the Colossus を初見(blind)でプレイした動画から。ジュリエットさんはどんなときも穏やかに丁寧な言葉を話す、上品な女性である。発音もオーストラリアなまりが多少聞き取れるがわかりやすい。ゲーム実況を楽しみながら英語の聞き取りを鍛えたいなら、まずは彼女の動画にあたるべき。
18:13~18:57 の部分
What on earth!?
OK. I think we found our first buddy. What...on...earth1? That guy's huge2. That guy's huge. To switch weapons.... I have a bow or a sword. Ok. I am a tiny little man3. I am a tiny little man, and4 I have to kill this thing? I don't thik this is gonna5 work6.
最初のお友達が見つかったみたい。 なに、これ……。 あの人、とんでもなく大きいわ。 とんでもなく大きいわ。 (コントローラーの説明を読む)武器を換えるには……わたしは弓か、あるいは剣が使えるのね。 わたしはちっぽけな人間よ。 わたしはちっぽけな人間よ。それなのにこれを倒さなければならないの? うまくいくわけないわ。
1. What on earth 「なに、これ」は What is this? あるいは What is that? というが、それに強調を加えて「いったいぜんたいなに、これ」という場合は What on earth is this? あるいは What on earth is that? という。on earth は「地上で」という意味だが、この場合はたんに語勢を強めるだけの役割。似たような表現に What the hell is that? という言い方もある。the hell はもちろん「地獄」という意味だが、これも強調表現にすぎない。「地上で」を付加しようが「地獄」を付加しようが結局は「いったいなんなのよ、これ」という強意をともなう意味になる。ただし前者の方が上品な響きを持つ。いずれの表現も最初の三語 What on earth あるいは What the hell だけで、驚きを示す言葉として使える。ほかにも What in the world とか、What the fuck とか、What in the holy fuck とか、what のあとにさまざまな強調表現が用いられる。どの人も特定の表現を多用する傾向があるので、言いやすい句、気に入った句をひとつ覚えていつも使うようにするといい。What on earth の場合、earth の最初の曖昧母音をうまく発音できるとかっこよく聞こえる。 2. huge は big よりもはるかに大きい印象を与える。 3. a tiny little man tiny も little も小さいを意味する。同じような意味の言葉を重ねて小ささを強調するわけである。 4. and ここでは「にもかかわらず」という意味になる。前文と対照的な内容を導入する and である。yet とか and yet と同じ。 5. gonna は going to の省略形。 6. work は「うまくいく」という意味。I hope this will work. 「これで(こうすれば)うまくいくと思う」などと使う。
訳と註をつけてみたが、結構役に立つ教材になるのではないか。「驚き」「感動」「恐怖」「悲しみ」等々をあらわす感情表現や、「方向」「時間」「手順」などを示す表現など、うまくまとめることはできないかと思っている。