Nach dem Zimmermann kam die Reihe zu wachen1 an2 den Goldschmied. Als auch dieser nach einer Weile3 schläfrig wurde, fielen seine Augen auf4 das hölzerne5 Mädchen, das der Zimmermann gemacht hatte.6 Er staunte über7 die Kunst seines Kameraden,8 wollte nicht hinter ihm zurückbleiben,9 verfertigte10 schöne Ohrringe,11 Armbänder12 und Ketten,13 und umhängte14 sie15 der hölzernen Figur.16 Der Schneider, der als17 der dritte18 an die Reihe zu wachen kam, geriet19 sofort außer sich20 vor21 Bewunderung22 und begann,23 die Figur vom24 Kopf bis zu25 den Füßen zu bekleiden.26 Da27 sah28 die hölzerne Figur ganz wie ein wirkliches, lebendiges29 Mädchen aus. Endlich war30 die Zeit des Schneiders um31 und er weckte32 den Mönch.
訳。大工の後に nach dem Zimmermann 夜番をする順が die Reihe zu wachen 金細工師に廻って来た kam an den Goldschmied. 此の男も亦 auch dieser 暫くの後 nach einer Weile 眠くなった schläfrig wurde 時に als 彼の眼は seine Augen 大工の造って置いた das der Zimmermann gemacht hatte 木製の乙女の上に auf das hölzerne Mädchen 落ちた fielen [fallen の過去、複数三人称]。彼は er 彼の仲間の技術について über die Kunst seines Kameraden 驚嘆した erstaunte 彼に一籌を輸そうとは hinter ihm zurückbleiben 欲しなかった wollte nicht, 美しき耳輪、腕輪、及び鎖を細工した verfertigte schöne Ohrringe, Armbänder und Ketten, そしてund それ等を sie 木製の人形に der hölzernen Figur 懸け纏わせた umhängte. 第三人目として als der dritte 順番に中った an die Reihe kam ところの der 裁縫師は der Schneider 早速 sofort 驚嘆のあまり vor Bewunderung 我を忘れてしまった geriet außer sich そして und 頭から脚まで vom Kopf bis zu den Füßen 人形に衣裳をつけ始めた begann, die Figur zu bekleiden. すると Da 木製の人形は die hölzerne Figur すっかり ganz 本当の、生きた娘の様に wie ein wirkliches, lebendiges Mädchen 見えた sah aus. 遂に endlich 裁縫師の時間は die Zeit des Schneiders 過ぎた war um.
註。――1.wachen (英 to watch)=wach bleiben. ――2. 「順番が廻って来る」というのにいい方が二通りある訳である。人間を主語にして云うと er kam an die Reihe 「順番」を主語にすると die Reihe kam an ihn. an という前置詞の使い方は、一般的に説明するのは仲々困難だが、まず荒っぽく云えば「何々の側へ」である。「へ」と云う際(即ち方向を指す際)は次に来る名詞を四格に置き、「で」「に」の際(即ち一点に静止し終始する事を表す際)には次に来る名詞を三格に置く。これは in, auf, neben, hinter 等、空間関係を意味する大部分の前置詞に共通な現象である。――3. die Weile (英 the while)は「暇」または「少時」。――4. auf の次に来る名詞が四格になっているのも、註の2で説明したのと同じ理由に依る。――5. hölzern は Holz (英 wood)「木材」から来た形容詞。同様な例は多い。Stein 石 steinern 石製の――Stahl 鋼鉄 stählern 鋼鉄製の――Glas 硝子 gläsern 硝子製の――少し関係の違ったのでは Silber 銀 silbern 銀製の Papier 紙 papiern 紙製の Leder 革 ledern 革製の――また、単に =en の語尾を採るものもある。Gold 黄金 golden 黄金の Metall 金属 metallen 金属製の Erde 土 irden 土製の――6. hatte (英 had)でわかる通り machen の過去完了が用いてある。その訳は第二巻 110 に詳しく述べた。――7. über は英語の over、above に相当する前置詞であるが、その次に四格名詞が置かれる時に限って about 即ち「何々に就て」と云う意味になる事がある。――8. Kamerad (同輩、仲間)は所謂「弱変化の男性名詞」(第一巻 69)だから、二格が seines Kamerades とはならない。――9. hinter ihm zurückbleiben (彼に一籌を輸す、彼に負ける)は熟語で、文字通りに云えば「彼の背後に遅れとどまる」である。――10. verfertigen (調製する、仕上げる)は fertig (完成したる)という形容詞から来た動詞である。たとえば「着物が出来上った」は das Kleid ist fertig である。――11. Ohr, n. 耳 Ring, m. 輪。――12. Arm, m. 腕 Band, n. バンド。――13. Kette, f. 鎖、の複数。――14. hängen は¥「懸ける」 umhängen 〔非分離〕は「懸け廻す」即ち其処ら中に引っ懸け廻す事。――15. sie (彼等)とは、耳輪その他を指す。――16. die Figur (似姿、像)=die Gestalt (姿)das Bild (像)das Bildnis (像、肖像)。――17. als は前置的に名詞と共に用いると「何々として」「何々たる資格に於て」の意になる。接続詞の als (……した時)と間違えてはいけない。また第三巻で説明する als (英語の than)も別物である。als にはほぼ此の三つの場合がある。――18. dritt (英語の third)を名詞的に用いると、男性ならば der dritte, 女性ならば die dritte と云った様に、すべて形容詞と同じ語尾を採る。――19. geriet は geraten, geriet, geraten (……に陥入る)。不定法の時に既に ge= が附いているのに注意。――20. außer sich geraten (我を忘れる、有頂天になる)は熟語で、文字通りに訳すれば「己れの外に陥入る」。――21. vor は元来は「……の前」という前置詞であるが、抽象名詞と共に用いると、「……のあまり」の意になる。たとえば vor Freunde 悦びの余りに vor Furcht 恐怖の余り vor Langeweile 退屈の余り vor Schmerz 苦しさの余り、苦しまぎれに vor Luft 嬉しまぎれに。こんなのは凡て熟語として口調で慣らして覚える事が必要である。――22. bewundern (……を驚嘆する)はüber etwas staunen (或物について驚(?)く)と同じで、それから来た =ung に終る名詞が女性である事は第一巻 46 で承知の通り。――23. beginnen, begann, begonnen=anfangen, fing an, angefangen.――24. vom=von dem.――25. bis (英 till)は、極く簡単な成句を除く外は、大抵もう一つ前置詞をつけて名詞と結び附く。たとえば bis zum nächsten Tage (till the next day)bis auf den Grund (to the bottom 底までも)――極く簡単な成句というのは bis morgen 明日まで von Paris bis Berlin 巴里から伯林まで、等。――26. bekleiden (衣裳附ける、着附けをする)は対象を四格にする。jemanden bekleiden (或人を衣裳づける)という使い方である。――27. da は「其処」(英 there)という意味の他に、「すると」「そうすると」という時間関係の副詞になる事がある。日本語の「其処で」も矢張りその両意に用いられる。――28. sah だけで意味をなしているのではない。sah...aus (見えた)という分離動詞である。不定法は aussehen (英 to seem, to look)――29. lebendig はアクセントの上からは独逸語の中に於ける只一個の例外字である。即ち leben 〔れーベン〕から転来した形容詞だから〔れーベンディヒ〕と発音するのが本当であるのに〔レベンディヒ〕と云う。こんな例は他には無い。―― 30. endlich という副詞が「先置」されたが為めに、その次には「倒置」(第一巻 74)が行われている。―― 31. um sein (一廻り廻る、一順する、終結する、年期が「あく」、満了する)という熟語。(um はほぼ英語の about, around である。)――32. wecken は「起こす」「目をさまさせる」で wachen に対する他動詞である。