プロジェクト・グーテンバーグ・オーストラリアを見たら、先月、今月と A. Fielding の作品がデジタル化されてコレクションに加わっている。
A. Fielding は謎のミステリ作家で、生年も没年も不明である。ペンネームに A. Fielding あるいは A. E. Fielding あるいは Archibald Fielding を用いていたが、本名は Dorothy Feilding であるらしい。貴族の Lady Dorothy Feilding ではないかといわれたこともあったが、gadetection の記事によると、これは間違いのようだ、とある。ある人が当時の電話帳や選挙人名簿を使ってこの作家の足取りを追跡しようとしたが、結局たいしたことはわからなかった。
ただ1920年代から40年代にかけて発表された二十数冊のミステリ小説だけが残っている。二十世紀に入っても作者の伝記的情報がまったくわからない例があるというのはちょっと驚きである。こうした例は彼女だけでは無いのだけれど。
わたしの記憶が正しければ、たしかクリスティが A. Fielding の愛読者だったはずだ。わたしは A. Fielding の「牧師館にて」(Mystery at the Rectory 1936)を読んだことがあるが、文章が素人的であること、稚気に充ちた仕掛けがあること、犯人の意外さという点でクリスティによく似ていると思った。他の作品も読みたかったのだが、あのころは PDF にも text ファイルにも epub ファイルにも電子化されたものがなかったのであきらめた。
それがプロジェクト・グーテンバーグ・オーストラリアで次々と電子化され、目録を見ると A. Fielding の未読の作品が六冊も収録されている。これから全部読まなくちゃならない。
Friday, May 31, 2019
Wednesday, May 29, 2019
エドナ・ファーバー
プロジェクト・グーテンバーグ・カナダが五月の十六日にエドナ・ファーバーの「ソー・ビッグ」を蔵書に加えた。Fadepage.com も今年に入ってこの本を電子化した。作者は1968年沒だから、今年彼女はパブリック・ドメイン入りしたのである。しかもピューリッツァー賞を受賞した名作だから今年に入ってさっそく電子化の作業が始まったのだろう。
「ソー・ビッグ」とは妙なタイトルだが、主人公は生まれたときに非常に大きくて、そのため「とても大きい」が彼のニックネームになってしまったのである。
それはともかく、エドナ・ファーバーの本なんて図書館でも書店でも見たことがないと、ふと思い、調べて見たら、「ソー・ビッグ」は1956年に山西英一に訳されて以来、新訳は出ていない。公立図書館の所蔵状況はどうなのだろうと調べたら、国立国会図書館を含む四館にしかこの本はない。たぶんどこの図書館でも書庫入りしているだろうから、一般人がこの本を目にすることはまずないだろう。
映画にもなった「ジャイアンツ」はどうだろう。これも1956年に山西英一が訳して以来、新訳は出ていない。公立図書館の所蔵状況はというと、これは十四館にあるようだ。映画になった分だけ数は多い。
ついでだから「サラトガ本線」はどうだろう。これは1950年に竹内和子という人が翻訳を出している。これは九館に本が所蔵されている。
1952年に大久保康雄が訳した「ショウ・ボート」はどうかというと、これは十四館に本がある。
しかし前述した理由からたぶん本を目にする人はいないだろう。
「氷の宮殿」や「シマロン」は映画化もされたけど、日本語訳すら出てないようだ。この前、アーノルド・ベネットの翻訳を調べたときも肝腎な作品が訳されてなかったり、入手困難な状況に陥っていることを知り愕然としたが、エドナ・ファーバーもそうなのか。日本は翻訳大国などといわれるが、案外たいしたことはない。
「ソー・ビッグ」とは妙なタイトルだが、主人公は生まれたときに非常に大きくて、そのため「とても大きい」が彼のニックネームになってしまったのである。
それはともかく、エドナ・ファーバーの本なんて図書館でも書店でも見たことがないと、ふと思い、調べて見たら、「ソー・ビッグ」は1956年に山西英一に訳されて以来、新訳は出ていない。公立図書館の所蔵状況はどうなのだろうと調べたら、国立国会図書館を含む四館にしかこの本はない。たぶんどこの図書館でも書庫入りしているだろうから、一般人がこの本を目にすることはまずないだろう。
映画にもなった「ジャイアンツ」はどうだろう。これも1956年に山西英一が訳して以来、新訳は出ていない。公立図書館の所蔵状況はというと、これは十四館にあるようだ。映画になった分だけ数は多い。
ついでだから「サラトガ本線」はどうだろう。これは1950年に竹内和子という人が翻訳を出している。これは九館に本が所蔵されている。
1952年に大久保康雄が訳した「ショウ・ボート」はどうかというと、これは十四館に本がある。
しかし前述した理由からたぶん本を目にする人はいないだろう。
「氷の宮殿」や「シマロン」は映画化もされたけど、日本語訳すら出てないようだ。この前、アーノルド・ベネットの翻訳を調べたときも肝腎な作品が訳されてなかったり、入手困難な状況に陥っていることを知り愕然としたが、エドナ・ファーバーもそうなのか。日本は翻訳大国などといわれるが、案外たいしたことはない。
Monday, May 27, 2019
オートミール
食事はなるべくタンパク質を多く摂り、脂質を減らすようにしている。揚げ物などはもう何年も食べていないし、見ただけでいやになる。
主食はオートミールだ。お米はほとんど食べない。ボディビルダーが減量するときはオートミールを食べると聞いて、どんなものだろうと思っていたが、繊維質やミネラルがお米よりも多いし、実際に牛乳などでふやかして食べてみると、お粥と変わりない食感である。味がないので好きなように味付けができる。
調理が簡単というのもいい。お米は炊かなければならないが、オートミールは容れ物から出して五分以内に調理が完了する。わたしがよくやるのはオートミールをレンジパックに入れ、スライスした乾燥ガーリックを加え、さらに削った鰹節を細かく手で砕いてたっぷり混ぜ込む。それに水を加え、生卵二つを上に載せてレンジで温める。五分くらいで結構おいしい食事ができあがる。
問題は値段だが、これが実は安いのである。別に名前を出してもいいと思うが、わたしの家の近くの業務スーパーに行くと、五百グラムのオートミールが158円で手に入る。一回の食事で食べるのは四十グラムぐらいだから、この値段で十食以上はまかなえる。ちなみにガーリックや鰹節も業務スーパーで大きな袋に入っているやつを買えば、食費は隨分節約できる。業務スーパーはすごい、偉い、と大声で宣伝しておこう。
オートミールを食べはじめて体調もやや変化した。まず便通がよい。これは食物繊維が多いせいだろう。またやたらと腹持ちがいいのでオートミールを食べた後は次の食事まで間食をしなくなった。
わたしは味には頓着しないたちなので、これはいいものを見つけたと思っている。
主食はオートミールだ。お米はほとんど食べない。ボディビルダーが減量するときはオートミールを食べると聞いて、どんなものだろうと思っていたが、繊維質やミネラルがお米よりも多いし、実際に牛乳などでふやかして食べてみると、お粥と変わりない食感である。味がないので好きなように味付けができる。
調理が簡単というのもいい。お米は炊かなければならないが、オートミールは容れ物から出して五分以内に調理が完了する。わたしがよくやるのはオートミールをレンジパックに入れ、スライスした乾燥ガーリックを加え、さらに削った鰹節を細かく手で砕いてたっぷり混ぜ込む。それに水を加え、生卵二つを上に載せてレンジで温める。五分くらいで結構おいしい食事ができあがる。
問題は値段だが、これが実は安いのである。別に名前を出してもいいと思うが、わたしの家の近くの業務スーパーに行くと、五百グラムのオートミールが158円で手に入る。一回の食事で食べるのは四十グラムぐらいだから、この値段で十食以上はまかなえる。ちなみにガーリックや鰹節も業務スーパーで大きな袋に入っているやつを買えば、食費は隨分節約できる。業務スーパーはすごい、偉い、と大声で宣伝しておこう。
オートミールを食べはじめて体調もやや変化した。まず便通がよい。これは食物繊維が多いせいだろう。またやたらと腹持ちがいいのでオートミールを食べた後は次の食事まで間食をしなくなった。
わたしは味には頓着しないたちなので、これはいいものを見つけたと思っている。
Saturday, May 25, 2019
ジュニア・タッグ
ジュニア・タッグの季節が来た。ヘビー級に較べるとどうしても見劣りがしてしまうジュニア戦線だが、各選手ともそれは自覚している。どうやってジュニアを盛り立てていくか、それぞれ考えて試合をしているのだ。わたしはその姿勢が好きだし、だからこそ全日本のジュニアを応援する。
今回のバトル・オブ・グローリーでわたしが注目するのは岡田佑介とフランシスコ・アキラのチーム。思いも寄らぬ組み合わせだが、いずれもこれから上位を脅かそうと狙っている新鋭達である。しかもどちらも気合いが善く、見ていて気持ちがいい。岡田は技に派手さはないが、情念を感じさせるねちっこさがある。アキラは軽さは感じさせるが、すばやくて技の引き出しが新しい。この両者がどんな化学反応を見せるのか、じつに楽しみだ。アキラの身体がどれくらいできてきたのかも注目である。
今回はツトム・オースギ&バナナ千賀組と、Kagetora&ヨースケ サンタマリア組という、わたしが全く知らないチームも参戦している。名前からしてキャラの強そうな連中が集まったが、真面目な選手が多い全日本の戦いに、ちょっとしたスパイスを加えてくれそうな予感がする。
今回のバトル・オブ・グローリーでわたしが注目するのは岡田佑介とフランシスコ・アキラのチーム。思いも寄らぬ組み合わせだが、いずれもこれから上位を脅かそうと狙っている新鋭達である。しかもどちらも気合いが善く、見ていて気持ちがいい。岡田は技に派手さはないが、情念を感じさせるねちっこさがある。アキラは軽さは感じさせるが、すばやくて技の引き出しが新しい。この両者がどんな化学反応を見せるのか、じつに楽しみだ。アキラの身体がどれくらいできてきたのかも注目である。
今回はツトム・オースギ&バナナ千賀組と、Kagetora&ヨースケ サンタマリア組という、わたしが全く知らないチームも参戦している。名前からしてキャラの強そうな連中が集まったが、真面目な選手が多い全日本の戦いに、ちょっとしたスパイスを加えてくれそうな予感がする。
Tuesday, May 21, 2019
COLLECTION OF ENGLISH IDIOMS
早稲田大學敎授 深澤裕次郎著
應用英文解釋法
東京英文週報社發行
(p. 37-40)
範例
I
(a) Go and tell him all about it.
(b) Come and tell me all about it.
II
(a) Go tell him all about it.
(b) Come tell me all about it.
(a) 行て一切を彼に語れ。
(b) 來て一切を我に語れ。
解説
Iの如く go, come, try, send 等の Verb の後に用ひたる and は目的又は結果を示す Infinitive の to (= in order to)......と解す可し。
されば
(a) Go and tell him about it.
(b) Come and tell me all about it.
は
(a) Go to tell him all about it.
(b) Come to tell me all about it.
と解す可きものにして to tell は Purpose を示す Infinitive Phrase なり。
II は I の and を省略したるものにして I と同義なり。
但、この and は二個の行爲を結ぶ Conjunction に過ぎずして此語に目的又は結果の意有りと云ふにはあらず、唯前後の文勢より其意を生ずとの謂なり。
猶ほ此處に云ふ and は俗語又は方言に在りては前記以外の Verb にも用ひらる。
用例
I
1. Well, try and think.
それなら、考へて見よ。
2. Do go to his house and thank him.
Johnson
禮を云ひにあの人の家に行きなさい。
3. You will come and see us sometimes, won't you?
時々遊びにいらつしやい(ませんか)。
4. What I did do, was to try and gain time by questioning her.
W. Collins
私の實際やつた事は色々尋ねて見て時間を引き延ばさうとするのであつた。
5. Try and keep Rochester at a distance: distrust yourself as well as him.
C. Bronte
ロチエスターさんは遠ざけるやうにするがよい、自分もあの方をも信賴せぬがよい。
6. "I will go and help her," said Lord Arleigh, looking at Phillippa's face.
M. Clay
アーレー卿はフイリツパの顔を見ながら云つた「私が力になつてやらう」。
7. If any of my readers should be disposed to think me weak, let him try and imagine the situation.
J. E. Muddock
讀者の中、若し私を臆病だと思ふ者が有らば此時の場合を想像して見るがよい。
8. "Try and profit by me," continued the stream; "you are idle, or work and complain, I work and am happy."
N. E. R. III.
小川は續けて云つた「私のする事を見て利益を得るやうにしなさい、お前さんは遊んで居るか、働いて不平を云ふかして居るが、私は働いて滿足して居るのです」。
II
1. Go look up the tree and see if there is any ripe fruit on it.
H. R. Haggard
行つて樹を見て熟した果物が有るか御覽なさい。
2. Come along, and let's go see the cocking-match at Winchester.
W. M. Thackeray
さあ、ヰンチエスターへ闘鶏を見に行かう。
3. The bowsprit, shrouds, and bobstay -- well, go see how they look.
V. Hugo
突梁、網具、斜檣支索……いや、貴樣行てどんなか見て來い。
4. And now I must go saddle the brown mare, and be off to Norton Bury.
Mr. Craik
では僕は鹿毛に鞍を置いてノートンベリへ行て來よう。
5. A hollow wind did seem to answer, "No! Go seek elsewhere."
G. Herbert
聲低き風は答ふるが如く見えぬ「否、行いて他に求めよ」と。
6. "I go shoot at the camp-meeting at Stamford," replied the Indian.
N, Hawthorne
「私はスタムフオードの郊外會に射撃に行きます」と印度人は答へた。
7. The mother blessed her son, and bade him go strike a blow for his country.
G. P. Quackenbos
母は其子に祝福を與へ「行て國家の爲に一撃を打てよ」と命じた。
8. Then we shall go to the theatre in Duke Street, where we shall meet Mohun; and then we shall all go sup at the Rose or the Greyhound.
W. M. Thackeray
それから我々は公爵町の芝居に行つてモーハンに會ひ、それから薔薇樓又は獵犬亭へ晩餐をたべに行くのだ。
9. Go draw the cork, tip the decanter; but when your great toe shall set you a-roaring, it will be no affair of mine.
N. Hawthorne
行いて栓を抜き德利を傾けよ、併しお前さんの拇指が痛んで苦痛の聲を揚げてもそれは決して私の知つた事では有りません。
10. "Go call Sir Oliver!" said Sir Nigel; and presently the portly knight made his way all astraddle down the slippery deck.
C. Doyle
「行てサー・オリヴーを呼べ」とナイジエルが云ふと間も無く肥満した武士が滑かな甲板に馬乗りになて下りて來た。
11. "Very well," cried I, "that's a good girl, I find you are perfectly qualified for making converts, and so go help your mother to make the gooseberry-pie.
O. Goldsmith
「なるほど。感心な子だ、噫人を改心させる事がうまからう、だから行て阿母さんに手傳てすぐり饅頭を拵へるがよい」。
that's a good girl (= you are a good girl)「お前感心な子だ」
應用英文解釋法
東京英文週報社發行
(p. 37-40)
範例
I
(a) Go and tell him all about it.
(b) Come and tell me all about it.
II
(a) Go tell him all about it.
(b) Come tell me all about it.
(a) 行て一切を彼に語れ。
(b) 來て一切を我に語れ。
解説
Iの如く go, come, try, send 等の Verb の後に用ひたる and は目的又は結果を示す Infinitive の to (= in order to)......と解す可し。
されば
(a) Go and tell him about it.
(b) Come and tell me all about it.
は
(a) Go to tell him all about it.
(b) Come to tell me all about it.
と解す可きものにして to tell は Purpose を示す Infinitive Phrase なり。
II は I の and を省略したるものにして I と同義なり。
但、この and は二個の行爲を結ぶ Conjunction に過ぎずして此語に目的又は結果の意有りと云ふにはあらず、唯前後の文勢より其意を生ずとの謂なり。
猶ほ此處に云ふ and は俗語又は方言に在りては前記以外の Verb にも用ひらる。
用例
I
1. Well, try and think.
それなら、考へて見よ。
2. Do go to his house and thank him.
Johnson
禮を云ひにあの人の家に行きなさい。
3. You will come and see us sometimes, won't you?
時々遊びにいらつしやい(ませんか)。
4. What I did do, was to try and gain time by questioning her.
W. Collins
私の實際やつた事は色々尋ねて見て時間を引き延ばさうとするのであつた。
5. Try and keep Rochester at a distance: distrust yourself as well as him.
C. Bronte
ロチエスターさんは遠ざけるやうにするがよい、自分もあの方をも信賴せぬがよい。
6. "I will go and help her," said Lord Arleigh, looking at Phillippa's face.
M. Clay
アーレー卿はフイリツパの顔を見ながら云つた「私が力になつてやらう」。
7. If any of my readers should be disposed to think me weak, let him try and imagine the situation.
J. E. Muddock
讀者の中、若し私を臆病だと思ふ者が有らば此時の場合を想像して見るがよい。
8. "Try and profit by me," continued the stream; "you are idle, or work and complain, I work and am happy."
N. E. R. III.
小川は續けて云つた「私のする事を見て利益を得るやうにしなさい、お前さんは遊んで居るか、働いて不平を云ふかして居るが、私は働いて滿足して居るのです」。
II
1. Go look up the tree and see if there is any ripe fruit on it.
H. R. Haggard
行つて樹を見て熟した果物が有るか御覽なさい。
2. Come along, and let's go see the cocking-match at Winchester.
W. M. Thackeray
さあ、ヰンチエスターへ闘鶏を見に行かう。
3. The bowsprit, shrouds, and bobstay -- well, go see how they look.
V. Hugo
突梁、網具、斜檣支索……いや、貴樣行てどんなか見て來い。
4. And now I must go saddle the brown mare, and be off to Norton Bury.
Mr. Craik
では僕は鹿毛に鞍を置いてノートンベリへ行て來よう。
5. A hollow wind did seem to answer, "No! Go seek elsewhere."
G. Herbert
聲低き風は答ふるが如く見えぬ「否、行いて他に求めよ」と。
6. "I go shoot at the camp-meeting at Stamford," replied the Indian.
N, Hawthorne
「私はスタムフオードの郊外會に射撃に行きます」と印度人は答へた。
7. The mother blessed her son, and bade him go strike a blow for his country.
G. P. Quackenbos
母は其子に祝福を與へ「行て國家の爲に一撃を打てよ」と命じた。
8. Then we shall go to the theatre in Duke Street, where we shall meet Mohun; and then we shall all go sup at the Rose or the Greyhound.
W. M. Thackeray
それから我々は公爵町の芝居に行つてモーハンに會ひ、それから薔薇樓又は獵犬亭へ晩餐をたべに行くのだ。
9. Go draw the cork, tip the decanter; but when your great toe shall set you a-roaring, it will be no affair of mine.
N. Hawthorne
行いて栓を抜き德利を傾けよ、併しお前さんの拇指が痛んで苦痛の聲を揚げてもそれは決して私の知つた事では有りません。
10. "Go call Sir Oliver!" said Sir Nigel; and presently the portly knight made his way all astraddle down the slippery deck.
C. Doyle
「行てサー・オリヴーを呼べ」とナイジエルが云ふと間も無く肥満した武士が滑かな甲板に馬乗りになて下りて來た。
11. "Very well," cried I, "that's a good girl, I find you are perfectly qualified for making converts, and so go help your mother to make the gooseberry-pie.
O. Goldsmith
「なるほど。感心な子だ、噫人を改心させる事がうまからう、だから行て阿母さんに手傳てすぐり饅頭を拵へるがよい」。
that's a good girl (= you are a good girl)「お前感心な子だ」
Sunday, May 19, 2019
「微妙な依存関係」マイケル・タルボット作
マイケル・タルボットは1953年にミシガンに生まれ、1992年、三十八歳で亡くなった。彼の早すぎる死はほんとうに残念だ。彼は「超一流」というにふさわしいホラー作家だったから。アイデアだけでなく、文章でも読ませる才人だった。
By http://d.gr-assets.com/books/1375003347l/1261704.jpg, Fair use, Link
バンパイア小説である The Delicate Dependency「微妙な依存関係」は、ヴィクトリア女王時代のイギリスを舞台にしている。医学者であるグラッドストーンは、ふとした機縁から若くて美貌のバンパイアを家に泊めることになる。このバンパイアはグラッドストーンの家を出るとき、なぜか彼の娘を誘拐していく。
グラッドストーンは娘を取り返すためにフランス、そしてイタリアへと向かい、そこではらはらどきどきの冒険を繰り返す。その過程で彼はバンパイアがはるか昔から人間たちといっしょに共存してきたこと、そして今、彼らがなにか大きな企みをくわだてていることを知る。
その企みとはなにか。彼は娘を取り返すことができるのか。
そういった内容である。
語り手は医者のグラッドストーンで、ヴィクトリア女王時代の書き手らしく、物語の進展はゆっくりとしていて、しかも説明が細かい。短気な人なら飛ばし読みをしそうな書き方だが、なにしろ文章がすばらしいから、しっかりと読んでしまう。わたしは大衆文学こそよい文章で書かれねばならないと固く信じている。
変わった表題がついているが、これを説明するとネタばらしになるので、やめておく。
この作品はホラー小説という親しみやすい形式はとっているものの、いくつか考えるべき問題を含んでいる。知は人間の栄光であると共に、まさしく人間それ自体をほろぼすような禍々しいなにかでもある。知のこのような背反的性格にどのようにどのように立ち向かうべきなのか、われわれはまだ答を見出していない。そのことをわたしはこの作品を読み終えてあらためて思った。
またヴァンパイアが人間社会に介入・操作するやり方、つまり幻とミスコミュニケーションは、じつはヴァンパイアがいなくても人間の社会において常に起こらざるをえない、ある種の揺れ、不安定性のことではないか。人間はシンボルを使ってコミュニケーションをはかり、文化を発展させるが、このシンボルの体系には必然的にある種の脆弱性がつきまとう。それは予期しない誤解や間違いをかならず生み出すのだ。ヴァンパイアはシンボル体系に寄生し、その制御不能な位相として働いている。このとらえ方はなかなか面白く、わたしはもっと時間をかけて考えて見たいと思う。
マイケル・タルボットはこの作品の他にも「夜の怪物」という傑作を書いている。興味のある方は是非一読を願いたい。
By http://d.gr-assets.com/books/1375003347l/1261704.jpg, Fair use, Link
バンパイア小説である The Delicate Dependency「微妙な依存関係」は、ヴィクトリア女王時代のイギリスを舞台にしている。医学者であるグラッドストーンは、ふとした機縁から若くて美貌のバンパイアを家に泊めることになる。このバンパイアはグラッドストーンの家を出るとき、なぜか彼の娘を誘拐していく。
グラッドストーンは娘を取り返すためにフランス、そしてイタリアへと向かい、そこではらはらどきどきの冒険を繰り返す。その過程で彼はバンパイアがはるか昔から人間たちといっしょに共存してきたこと、そして今、彼らがなにか大きな企みをくわだてていることを知る。
その企みとはなにか。彼は娘を取り返すことができるのか。
そういった内容である。
語り手は医者のグラッドストーンで、ヴィクトリア女王時代の書き手らしく、物語の進展はゆっくりとしていて、しかも説明が細かい。短気な人なら飛ばし読みをしそうな書き方だが、なにしろ文章がすばらしいから、しっかりと読んでしまう。わたしは大衆文学こそよい文章で書かれねばならないと固く信じている。
変わった表題がついているが、これを説明するとネタばらしになるので、やめておく。
この作品はホラー小説という親しみやすい形式はとっているものの、いくつか考えるべき問題を含んでいる。知は人間の栄光であると共に、まさしく人間それ自体をほろぼすような禍々しいなにかでもある。知のこのような背反的性格にどのようにどのように立ち向かうべきなのか、われわれはまだ答を見出していない。そのことをわたしはこの作品を読み終えてあらためて思った。
またヴァンパイアが人間社会に介入・操作するやり方、つまり幻とミスコミュニケーションは、じつはヴァンパイアがいなくても人間の社会において常に起こらざるをえない、ある種の揺れ、不安定性のことではないか。人間はシンボルを使ってコミュニケーションをはかり、文化を発展させるが、このシンボルの体系には必然的にある種の脆弱性がつきまとう。それは予期しない誤解や間違いをかならず生み出すのだ。ヴァンパイアはシンボル体系に寄生し、その制御不能な位相として働いている。このとらえ方はなかなか面白く、わたしはもっと時間をかけて考えて見たいと思う。
マイケル・タルボットはこの作品の他にも「夜の怪物」という傑作を書いている。興味のある方は是非一読を願いたい。
Friday, May 17, 2019
筋肉と寝返り
変なタイトルだが、たぶん筋トレをしている人なら経験があると思う。腕や胸の筋肉が大きくなると、寝返りを打つとき、それまでとはちがった感覚を味わう。
腕が太くなると、寝返ろうとしたとき、腕にその動きを阻止されることがある。腕が細かったころは、軽々と腕の上を乗り越えて身体がごろりと回転したが、太くなると、道を遮る倒木のように、身体の動きを邪魔するのである。はじめてそれを経験したときは、びっくりして夜中に目が覚めてしまった。
胸の肉がついてくると、俯けに寝たときに、肥大した胸が圧迫されて、ちょっとだけ苦しい。睡眠には問題ないが、一瞬、胸が邪魔だと思う。筋トレをするなら睡眠環境も整える必要があると、ごろ寝しながらわたしはよく考える。
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英語読解のヒント(184)
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