Sunday, February 26, 2023

ピーター・チェイニー「暗闇の街路」

1946年のスパイ小説。第二次世界大戦の真っ最中、イギリスとドイツは戦場だけではなく、人々が住む街の中でも暗闇に紛れてスパイ同士が戦いを展開していた。クウェイルはイギリスのスパイたちを統括して、イギリスに侵入したドイツのスパイを撲滅しようとしている。ある時は部下を無慚に殺され、ある時は敵の大物スパイを事故に見せかけて殺す。そしてすぐに敵の報復を受け、イギリスの諜報機関の重要な情報を盗み取られる。虚々実々のやりとりだ。

クウェイルの駆け引きの相手はドイツのスパイだけではない。彼が指揮する部下に対しても術策を弄する。敵を騙すにはまず味方から、というわけだ。とにかく見かけの裏にはさらに裏があるといったありさまで、読んでいてもなかなか面白い。

スパイ小説というと007とかパルプ小説のように華やかなアクションを展開するものもあるが、チェイニーのスパイたちは一般市民と変わりのない生活をしている。トラックの運転手、社交界を遊び歩いている色男、パブを渡り歩く飲んべえ等々。ところが彼らはクウェイルから指令を受けるや、危険な任務を遂行する、冷静かつ非情なプロフェッショナルに変身する。そして大きな仕事をしたあとは数週間の休暇を手に入れる。

しかし彼らは常にドイツのスパイたちによって見張られている。そして性格や日常生活を細部まで観察され、それが彼らの諜報活動のために利用されるのだ。ところがその敵の動きさえもクウェイルは事前に予知して、敵の活動を把握する道具にしていた……。

この作品はひどく軽快に読むことが出来た。現代のスパイ小説からすると、まだロマン主義のかけらが残っているところが甘い印象を与えるけれど、十分におもしろい。ただドイツと一緒に日本もけなした書き方をしているので、日本の出版社はあまり彼の本を出したがらないのかもしれない。

Thursday, February 23, 2023

マーク・フォーサイス「雄弁のための要素」

文法を習っただけでは英語は読みこなせない。わたしはかねがね文法書には修辞学の解説も加えるべきだと思っている。修辞学を加えれば読みこなせるようになるかといえば、そうではないけれど、初学者が文学の原文に取り組んでとまどうことは減るだろうと思う。日本語における言い廻しの癖と、英語における言い廻しの癖は異なっていて、それに慣れておくだけで英語の本はかなり読みやすくなるはずだ。


しかし英語学習者の役に立つ修辞学の本というのはなかなかない。ちょっと分厚くて、学問的に書かれた本だが、ジョン・フランクリン・ジェナングの「実用修辞学の原則」(The Working Principles of Rhetoric by John Rranklin Genung)は例文が多くて勉強になる。今回読んだマーク・フォーサイスの「雄弁のための要素」はごくごく一般向けに書かれた、ざっくばらんな本で、アーサー・クインの「文彩」(Figures of Speech: 60 ways to turn a phrase)とよく似た感じの一作だ。ざっくばらんだが、大いに役に立つ。英語を味わいながら本を読みたいという人には一読をおすすめする。

修辞学のどういうところが英語学習者の役に立つのか。たとえば hendiadys (二詞一意)を扱った部分にはこんな例文があがっている。

I walked through the rain and the morning.

I'm going to the noise and the city.

構文も簡単だし、単語もすべて知っている。しかしこれらをどう訳すか。hendiadys の用い方を知っていれば「朝の雨のなかを歩いた」「喧噪の都会へ行く」とちゃんと訳せるのである。レナード・コーエンの「ハレルヤ」という曲のなかにはこんな一節がある。

You saw her bathing on the roof.

Her beauty and the moonlight overthrew you.

これも hendiadys を知らないと her beauty and the moonlight がちゃんと理解できない。「あなたは屋根の上から彼女が沐浴する姿を見た。月の光を受けた彼女の美しさはあなたを圧倒した」という意味である。hendiadys は bread and butter などと形で英語の初学者も習うのだが、もっとさまざまな形で用いられることを知らないと実際の英語にぶつかったときにその知識は有用なものとならない。

もう一つ transferred epithet (転移修飾語)という修辞法の例もあげよう。たとえば次の文をどう訳すか。

The man smoked a nervous cigarette.

これも構文は簡単で、単語はすべて知っている。しかし transferred epithet を知らないと「神経質なたばこ」とはなんだろうと悩むことになる。イギリスの代表的なユーモア作家P・G・ウッドハウスを読みたいと思うならこの修辞法は充分知っておかなければならない。さもないと

His eyes widened and astonished piece of toast fell from his grasp. 

などという彼特有の文章が理解できず、そのユーモアにも触れることができなくなってしまう。transferred epithet についても初学者は sleepless night のような形で学ぶことはあるのだが、広くその応用形に接しなければ実戦では用をなさないのだ。

マーク・フォーサイスの本は古典から現代のポップソングまでさまざまな文例をあげて修辞法の説明をしている。シェイクスピアの修辞法に感嘆したかと思ったら、それを上回る見事な修辞法の例をポップソングから拾ってきたりなど、遊び心にもあふれたいい本である。

Tuesday, February 21, 2023

注目作品

フィリス・ポール「見えない闇」(インターネット・アーカイヴ)


Phyllis Paul を知っている人は読書家と言うより、ほとんどマニアだろうと思う。スリラーや超自然的な要素を持ちこんだ、暗い小説を書いた人らしい。ヘンリー・ジェイムズの作品に譬えている人もいたので、わたしは興味があったのだが、いかんせん本が手に入らない。インターネット・アーカイブから「見えない闇」が出たのは、わたしにとっては大事件だ。

ヘンリー=ラッセル・ヒッチコック「十九世紀および二十世紀の建築」(プロジェクト・グーテンバーク)

これはペリカン叢書の一冊だ。ペリカン叢書が電子化されるのはこれが初めてではないはずだが、それでも珍しい。わたしは建築そのものには興味はないのだが、小説にはよく変わった様式の建築物が出てくる。その構造が小説のテーマと深く関わるケースがよくあるので、通り一遍程度の知識は身につけておきたいと思っている。

H. H. バッシュフォード「霧の向こうで」

これはまだ電子化されていない本だが、Lynn Brock の The Kink (出版社はハーパー、出版年は1927年)を読んだとき、本文の後ろの出版物案内に出ていて、興味を惹かれた作品だ。紹介文はこうなっている。

From the moment when two young Englishmen hear through the dense sea fog the S O S sounded on a motor horn, "Behind the Fog" moves along at a breathless pace. Mr. Bashford is well known as a writer of distinguished fiction, and this book is distinctly his best effort.

これを見る限り、サスペンスの要素をもった作品のようだ。これは読んでみたい。Bashford は Augustus Carp, ESQ. というコミック小説の大傑作で知られているので、まさか冒険小説を書いているとは思わなかった。しかしこれは面白そうだ。

Monday, February 20, 2023

フレデリック・ブラウン「二つの殺人」

フレデリック・ブラウンは中高生のときに読みあさった。SFもミステリも器用に書きこなす才人だと思う。彼の作品はほとんど日本語に訳されていると思うけれど、本篇はどうだろうか。ちょっと調べた範囲では見つからなかった。


精神病院を抜け出した独りの男が、とある街に入り込む。彼は施設で着せられていた服を普通の服に着替え、乞食を装って食事にありつこうとする。しかし彼の目的は食べることではない。ナイフを手に入れることだ。彼はナイフを手に持っていないと落ち着かない殺人狂なのだ。

彼はとある酒場の台所で食事にありつく。そしてそこにあったナイフを手にする。その後、外から悲鳴が上がる。酒場の主人と、そこに飲みに来ていた警官トレイシーが外に飛び出す。見ると二人の男がナイフで殺されていた。一人は近くに住む雑貨屋の店主、一人はギャングの男だ。

街の人々は犯人の殺人狂が捕まるまで家の戸を固く閉ざすようになる。警官のトレイシーは自分の鼻先で起きた殺人事件の犯人を追う……。

この作品で面白いのは、トレイシーがなぜギャングの男が殺されたのか、と事件にある種の違和感を覚えるところだ。雑貨屋の店主は近くに住んでいるのだから被害者になったしてもおかしくはない。しかしなぜ近所に住んでいるわけでもないギャング団の男が殺されたのか。警察も住人もみんなが殺人狂による殺人と思いこんでいるなかで、トレイシーだけがこの違和感にこだわる。そしてそこを手掛かりにして意外な事実を突き止めるのである。

じつはトレイシー自身も自分が感じた違和感を無視しようとする。それくらいこの違和感は脆弱な存在でしかない。にもかかわらずそここそが真実への突破口なのである。

たしかに近所の住人とギャング団の一員を単純に並列すれば、その取り合わせの奇妙さに人はすぐ気がつく。ところがすべての人が殺人狂の出現によりパニックとなり、極度の緊張状態に陥ると、この奇妙さが見失われてしまうのだ。パニックは普段なら気がつく差違を消失させる。(現在の日本もこのいい例である)トレイシーはその差違にこだわった。そこからなにが生まれるか、当てはまるでない。しかしそんな差違に固執したからこそ本篇が成立したのである。ここがわたしには面白い。

ちょっとした差違、ほとんど存在しないと言ってもよいような差違、それこそが問題なのだ。

Friday, February 17, 2023

ウィリアム・オファレル「リピート・パフォーマンス」

読みはじめて最初のうちは何が起きているのかピンと来なかった。バーニー・ペイジという三十二歳の元俳優が浮浪者みたいな生活を送っている。彼は妻に自殺され、その後情婦を殺しているらしい。なんとなくそんなことがわかる。あるとき彼は警察に追われ、発砲されるのだが、それからしばらくして自分が一年前に時間を逆戻りしていることに気がつく。ここまで来てタイトルの「リピート・パフォーマンス」の意味がわかってくる。この男は悲劇が起きた一年間をもう一度生き直すのだ。彼はその一年間にどんな悲劇が起きたかを知っている。それ故、その悲劇に陥らないように手を打つことができるのだ。しかし本当に悲劇は避けられるのだろうか?


これは面白い設定である。運命とは決定論的に決まっているものであり、個人がどうあがこうとも同じ結論へと向かうものなのか、それとも小さな変化が大きな変化を生み、まったく別の運命が(或いは、ともかくも違う運命が)開けていくものなのか。物語の最後までこの相異なる視点が読者のなかでせめぎ合い、奇妙なサスペンスを生み出すことになる。しかももしも悲劇が避け得ないのだとしたら、なぜ悲劇は反覆されなければならなかったのか、読者はたんに物語の表層的な筋を追うだけでなく、悲劇の深い原因を探らされることになる。SF的な発想はしばしば物語を薄っぺらなものにすることがあるけれど、この作品では見事に深みを与えることに成功している。奇想が成功している作品としては、フランク・ベイカーの「ミス・ハーグリーブズ」と並ぶ名作ではないだろうか。いや、ワイルドの「ドリアン・グレイ」と比較したっていいくらいの出来だ。

また1940年頃のニューヨークの演劇界の様子が活写されている点もすばらしい。楽屋裏をよく知っている人でなければ醸し出せないリアルさがある。そしてウィリアム・アンド・メアリという不思議な人物。彼はボヘミアン的な詩人なのだが、金持ちのパトロンの庇護を受けたかと思うと、あっという間に精神病院に入れられてしまう。彼の型にはまらない魅力がこの作品をいっそう謎めいたものに、深みのあるものにしている。


Tuesday, February 14, 2023

独逸語大講座(5)

B

(物主代名詞及び was für ein)
Buch, n.書物wohnen住む
Schwester, f.[sister]schützen守る
Bruder, m.[brothek]ruhen休む
Himmel, m.fliegen飛ぶ
General, m.将軍ehren尊敬する
Erde, f.土地man世人は[不定代名詞]
Vogel, m.zwischenと三格又は四格=[betwecn]
Luft, f. 空気auf と三格又は四格=[on]
Dach, n.屋根

1. Was für ein Mann kommt in das Zimmer meines Vaters? 2. Dein Onkel und meine Mutter wohnen in diesem Hause. 3. Meine Schwester und ihr Mann leben noch in Japan. 4. Sein Bruder geht mit meinem Diener durch den Garten. 5. Unser Vater im Himmel schützt den König. 6. Euer Kaiser wohnt jetzt im Hause unseres Königs. 7. Sein Vater und seine Mutter lieben ihr Kind. 8. Euer Buch liegt auf dem Hut meines Dieners. 9. Was für einen General hat der Kaiser jenes Landes? 10. Der Vogel wohnt zwischen Himmel und Erde.

【訳】1. どんな人が(was für ein Mann) 私の父の(meines Vaters) 部屋 へ(in das Zimmer) 来るか(kommt) 2. 汝の叔父(dein Onkel) と(und) 私 の母とは(meine Mutter) 此の家に(in diesem Hause) 住んでいる(wohnen) 3. 私の姉妹(meine Schwester) と(und) 彼女の夫とは(ihr Mann) まだ(noch) 日 本に(in Japan) 住んでいる(leben) 4. 彼の兄弟は(sein Bruder) 私の下僕 と共に(mit meinem Diener) 庭園を通って(durch den Garten) 行く(geht) 5. 天にまします(im Himmel) 我等の父は(unser Vater) 王を(den König) 守る (schützt) 6. 汝等の皇帝は(euer Kaiser) 今(jetzt) 我々の王の(unseres Königs) 家に(im Hause) 住んでいる(wohnt) 7. 彼の父(sein Vater) と(und) 彼の 母とは(seine Mutter) 彼等の子供を(ihr Kind) 愛する(lieben) 8. 汝等の本 が(euer Buch) 私の下僕の(meines Dieners) 帽子の上に(an dem Hut) ある (liegt) 9. あの国の(jenes Landes) 皇帝は(der Kaiser) どんな将軍を(was für einen General) 持つか(hat) 10. 鳥は(der Vogel) 天(Himmel) と(und) 地との(Erde)註1 間に(zwischen) 住む(wohnt)

11. Hat das Zimmer Deiner Königin auch eine Tür? 12. Heute kommt sie mit ihrer Mutter zu ihrer Schwester. 13. Wo seid ihr nun, mein Vaterland und meine Vaterstadt? 14. Das Kind geht mit seinem Buch in das Haus meines Freundes. 15. Eure Mutter ruht nun im Himmel, meine Freunde! l6. Kein Wandrer geht durch das Tor ihrer Stadt. 17. Was für ein Vogel ruht aus dem Dache eures Hauses? 18. Was sagt man jetzt in der Stadt unseres Kaisers? 19. Unser General schützt und verteidigt unser Vaterland. 20. Kaiser, Deine Mutter ruht jetzt in der Erde!

【訳】11. 汝の王妃の部屋(das Zimmer Deiner Königin) も亦(auch) 扉を (eine Tür) 持つか(hat) 12. 今日(heute) 彼女は(sie) 彼女の母と共に(mit ihrer Mutter) 彼女の姉妹の所へ(zu ihrer Schwester) 来る(kommt) 13. 我が 祖国(mein Vaterland)註2 及び(und) 我が生都よ(meine Vaterstadt)註2 汝等(ihr) 今(jetzt) 何所に(wo) ありや(seid) 14. 子供が(das Kind) 彼の本を持って (mit seinem Buch) 私の友人の(meines Freundes) 家へ(in das Haus) 行く(geht) 15. 我が友人等よ(meine Freunde) 汝等の母は(eure Mutter)註3 今や(nun) 天に(im Himmel) 休みたまう(ruht) 16. 如何なる徒歩旅行者も(kein Wandrer) 彼らの市の(ihrer Stadt) 門を通って(durch das Tor) 行か(geht) 〔ない〕 17. どんな鳥が(was für ein Vogel) 汝等の家の(eures Hauses)註3 屋 根の上に(auf dem Dache) 休んでいるか(ruht) 18. 我々の皇帝の(unseres Kaisers) 市に於て(in der Stadt) 今(jetzt) 世人は(man) 何を(was) 話してい るか(sagt) 19. 我々の将軍は(unser General) 我々の祖国を(unser Vaterland) 保護し(schützt) そして(und) 守る(verteidigt) 20. 皇帝よ(Kaiser) 汝の母は (Deine Mutter) 今や(jetzt) 地中に(in der Erde) 休みたまうぞ(ruht)

21. Wandert der Vogel durch die Luft oder auf der Erde? 22. Man liebt und ehrt nur sein Vaterland. 23. Japan ist mein Vaterland, und Deutschland ist Ihr Vaterland. 24. Euer Kind kommt mit eurem Hute in unser Haus. 25. Was für ein Buch liebst Du, Schwester? 26. Der Wanderer wandert mit seinem Stock durch das Land. 27. Man liegt in der Erde, aber man ruht im Himmel. 28. Der General dieses Königs ehrt seinen Feind. 29. Wie heißt ihr Bruder und ihr Freund? 30. Unser König liebt und lobt den General eures Landes.

【訳】21. 鳥は(der Vogel) 空中を(durch die Luft) 或は(oder) 地上を(an der Erde) 移行するか(wandert) 22. 世人は(man) たゞ(nur) 彼の祖国を(sein Vaterland) 愛し(liebt) そして(und) 尊敬する(ehrt) 23. 日本は(Japan) 私の祖国で(mein Vaterland) あり(ist) そして(und) 独逸は(Deutschland) 貴君の祖国で(Ihr Vaterland) ある(ist) 24. 汝等の子供は(euer Kind) 汝等の帽子を持って(mit eurem Hute) 我々の家へ(in unser Haus) 来る(kommt) 25. 如何なる種類の本を(was für ein Buch) お前は(Du) 愛するか(liebst) 姉妹よ(Schwester) 26. 徒歩旅行者は(der Wanderer) 彼の杖を持って(mit seinem Stock) 国中を(durch das Land) 旅行する(wandert) 27. 人は(man) 地中に(in der Erde) 横わる(liegt) が併し(aber) 人は(man) 天国に(im Himmel) 休む(ruht) 〔死して死骸は地中に残るが、霊魂は天上に昇り休らうの意〕 28. 此の王の(dieses Königs) 将軍は(der General) 彼の敵を(seinen Feind) 尊敬する(ehrt) 29. 彼等の兄弟(ihr Bruder) 及び(und) 彼の友人は(ihr Freund)註4 何と(wie) 名乗るか(heißt) 80. 我々の王は(unser König) 汝等の国の(eures Landes) 将軍を(den General) 愛し(liebt) そして(und) 褒める(lobt)

31. Mein Bruder wohnt jetzt mit seinem Onkel in dieser Stadt. 32. Was für einen Vogel haben sie in ihrem Zimmer? 33. Kein Vogel fliegt heute durch die Luft. 34. Warum lobst und ehrst Du gar nichts? 35. Durch welche Stadt wandert jetzt der Wanderer? 36. Man fliegt heute zwischen Himmel und Erde. 37. Der Himmel schützt euren Kaiser und eure Kaiserin. 38. Liegt dein Buch auf der Erde oder im Zimmer? 39. Seine Schwester lebt jetzt nicht mehr, sie ist im Himmel. 40. Der General deines Königs schützt unser Land.

【訳】31. 私の兄弟は(mein Bruder) 今(jetzt) 彼の叔父と共に(mit seinem Onkel) 此の市〔の中〕に(in dieser Stadt) 住む(wohnt) 32. 彼等は(sie) 彼等 の部屋の中に(in ihrem Zimmer) 如何なる種類の鳥を(was für einen Vogel) 持つか(haben) 33. 今日(heute) 空中を通って(durch die Lust) 一羽の鳥も 飛ばない(kein Vogel fliegt) 34. 何故に(warum) 汝は(Du) 全く(gar) 何 も(nichts) 褒め(lobst) そして(und) 尊敬し(ehrst) 〔ない〕か 35. 今(jetzt) 徒歩旅行者は(der Wanderer) どの市を〔通って〕(durch welche Stadt) 旅行する か(wandert) 36. 人は(man) 今日は(heute) 天(Himmel) と(und) 地との (Erde) 間を(zwischen) 飛ぶ(fliegt) 37. 天は(der Himmel) 汝等の皇帝を (euren Kaiser) そして(und) 汝等の皇妃を(eure Kaiserin) 守る(schützt) 38. 汝の本は(dein Buch) 地上に〔あるか〕(an der Erde) 又は(oder) 部屋の中に (im Zimmer) あるか(liegt) 39. 彼の姉妹は(seine Schwester) 今は(jetzt) もう (nicht mehr) 生きてい(lebt)〔ない〕 彼女は(sie) 天国に(im Himmel) いる(ist) 40. 汝の王の(deines Königs) 将軍は(der General) 我々の国を(unser Land) 守る(schützt)

41. Wie fliegt ein Vogel durch die Lust, mein Kind? 42. Sein Kind begegnet heute keinem Vogel in dem Garten. 43. Ihr ehrt die Frau eures Bruders und Königs. 44. Kein Arzt wohnt in der Stadt unseres Kaisers. 45. Mit was für einem Manne geht Ihr Bruder zum Arzt? 46. Das Kind meiner Schwester hat einen Vogel in der Hand. 47. Sein Vater steht zwischen seiner Frau und seinem Kinde. 48. In unserer Stadt lobt man den Kaiser gar nicht. 49. Der General unseres Feindes zerstört unsere Stadt. 50. Der Baum steht zwischen dem Haus und dem Garten.

【訳】41. 鳥は(ein Vogel) 如何に(wie) 空中を〔通って〕(durch die Luft) 飛ぶか(fliegt) 我が児よ(mein Kind) 42. 彼の子供は(sein Kind) 今日(heute) 庭園に於て(in dem Garten) 一羽の鳥にも逢わない(keinem Vogel begegnet) 43. 汝等は(ihr) 汝等の兄弟たり王たる人の(eures Bruders und Königs)註5 妻 を(die Frau) 尊敬する(ehrt) 44. 我々の皇帝の(unseres Kaisers) 市の中には (in der Stadt) 一人の医者も住まぬ(kein Arzt wohnt) 45. どんな人と共に (mit was für einem Manne) 貴君の兄弟は(Ihr Bruder) 医者の所へ(zum Arzt) 行きますか(geht) 46. 私の姉妹の(meiner Schwester) 子供は(das Kind) 手 の中に(in der Hand) 一羽の鳥を(einen Vogel) 持っている(hat) 47. 彼の 父は(sein Vater) 彼の妻(seiner Frau) と(und) 彼の子供との(seinem Kinde) 間に(zwischen) 立っている(steht) 48. 我々の市に於ては(in unserer Stadt) 人は(man) 皇帝を(den Kaiser) 全然(gar) 褒め(lobt) ない(nicht) 49. 我 々の敵の(unseres Feindes) 将軍は(der General) 我々の市を(unsere Stadt) 破壊する(zerstört) 50. 樹は(der Baum) 家(dem Haus) と(und) 庭園との (dem Garten) 間に(zwischen) 立っている(steht)

51. Was für ein Vogel fliegt im Garten eurer Mutter? 52. Der Kaiser und die Kaiserin loben ihren General. 53. Der Vogel ist auf der Hand meiner Schwester

【訳】51. どんな鳥が(was für ein Vogel) 汝等の母の(eurer Mutter) 庭 園の中を(im Garten) 飛ぶか(fliegt) 52. 皇帝(der Kaiser) と(und) 皇妃と は(die Kaiserin) 彼等の将軍を(ihren General) 褒める(loben) 53. 鳥は(der Vogel) 私の姉妹の(meiner Schwester) 手の上に(auf der Hand) いる(ist)

【註】〔1〕 zwischen は、此の場合三格支配。(天地の)間に住む、と云う具合に「間に」又は「間で」という際の zwischen は必ず三格の名詞と結合する。「間へ向って」という時には四格支配、(文法第九講、助動詞 lassen、 mögen 用例一の註、参照)。 Himmel und Erde は「天地」と訳すべきで、二つの言葉が一緒になって一つの概念を現わす、所謂二語一想と云う奴である。〔例、Weib und Kind 妻子、Leib und Leben 生命〕此の場合名詞に冠詞を附けない。従って zwischen himmel und Erde は「天地の間に」である。
〔2〕Vaterland は祖国で、Mutterland は母国である。母国観光団なんて言葉がある如く、海外植民地に於ける者が、その故国を指す場合に母国と云う。Vaterstadt と Mutterstadt も同じ関係である。 〔3〕eure Mutter = euere Mutter; Wandrer = Wanderer 之は発音の関係から省略されたもの(文法第六講 unser と euer 参照)。
〔4〕ihr Bruder, ihr Freund ihr の ihr は「彼女の」とも訳せる。(文法第六講、紛らわしき場合、参照)
〔5〕eures Bruders und Königs 同一の人を表す二個以上の名詞には、最初の名詞の前にのみ物主代名詞を附ければよい。然らざる場合には、一々物主代名詞を繰返さなければならぬ。

Saturday, February 11, 2023

英語読解のヒント(45)

45. at

基本表現と解説
  • Good advice often comes in at one ear and goes out at the other. 「諫言は往々にして一方の耳から入り他方の耳から出ていく」

at は出入りの点を示すことがある。

例文1

Mr. Havisham drew his head in at the window of his coupe and leaned back with a dry smile.

Frances Hodgson Burnett, Little Lord Fauntleroy

ハヴィシャム氏は馬車の窓から首を引っ込め、皮肉な笑いを浮かべながら、後ろに寄りかかった。

例文2

As to the family, they always entered in at the gate, and most generally lived in the kitchen.

Washington Irving, A History of New York

家族の者はというに、かれらは常に門より入り、たいてい厨房に住んでいた。

例文3

"Good-bye to Gateshead!" cried I, as we passed through the hall and went out at the front door.

Charlotte Bronte, Jane Eyre

「ゲイツヘッドにさようなら!」わたしは玄関から表へ出ながらそう叫んだ。

Thursday, February 9, 2023

最近公開された注目の三作

最近電子化されたパブリックドメイン作品の中から三作を紹介する。

Feuchtwanger Jud Süß 1925.JPG

ドイツのプロジェクト・グーテンバーグからはフォイヒトヴァンガーの「ユダヤ人ジュス」。これは才能豊かなユダヤ人商人が政治・経済の実権を握っていくという物語で、ナチス政権のころは改変されてユダヤ人攻撃の材料にされたものである。発表当時、たしかベストセラーになったはずだ。外国でも評判になり、ドイツ文学に親しんでいる人なら名前くらいは知っているだろう。調べて見たら、谷譲次が1930年に日本語訳を出していて、デジタルコレクションにも収められている。冒頭部分をぱっと比較したが、結構忠実に訳している。

UncleTomsCabinCover.jpg

もう一つドイツ語の作品を。Onkel Tom's Hütte と書けばドイツ語であってもなんの作品かわかるだろう。ストウ夫人の「アンクル・トムの小屋」である。もちろんドイツ語に翻訳されたものだ。訳者は L. Du Bois。ドイツは英米の作品の翻訳に熱心な国で、とりわけ十九世紀のおもだった作品はほとんどみんなドイツ語に訳されている。じつをいえば、わたしの場合、英語の作品を読んでいて解釈がむずかしい部分にぶつかると、ドイツ語訳を参照して考えるということがよくある。ごまかして訳していたりすると、この訳者もよくわからなかったのだな、と思わずにやにや笑ってしまうけれど。「アンクル・トムの小屋」は中級程度のドイツ語の実力があれば辞書を引きひき、充分に読める。

Nellie Bly 2.jpg

Fadepage.com からは ラウリーの「火山の下で」が出ている。メキシコに駐在するアル中のイギリス人領事の物語だ。いろいろな名作リストに登場する折り紙付きの傑作だが、ここでは変わり種、ネリー・ブライの「セントラル・パークの謎」を挙げておく。ネリー・ブライは女性ながら突貫するジャーナリストだった。精神病院に患者として潜入取材をしたり、ヴェルヌの「八十日間世界一周」が出ると、本当に八十日で一周できるか実際にやってみたりした人である。わたしもそのドキュメントは読んだが非常に面白かった。その行動力ゆえに今でも彼女のファンは多い。2021年には彼女の小説が多数見つかり出版されている。


Wednesday, February 8, 2023

英語読解のヒント(44)

44. as

基本表現と解説
  • If they did not love me, in fact, as little did I love them. 「彼らは実際わたしを愛さなかったのかもしれないが、わたしもほとんど同様に彼らを愛さなかった」

§42, 43 の as とおなじで、先行する内容を受けて、「それと同様に」の意味。

例文1

The gallant Duke of Brunswick, fighting in the front of the line, fell almost in the beginning of the battle. The killed and wounded on the side of the Allies were 5,000, and the French loss could not have been less.
 Blucher fought as stern a battle, but with worse fortune. With 80,000 men he had to sustain the assault of 90,000, headed by Napoleon....

John Gibson Lockhart, The History of Napoleon Buonaparte

ブラウンシュヴァイク侯爵は前線で戦ったが、闘いの序盤で殺されかけた。同盟国側の死傷者数は五千、フランス側もそれ以下ということはないだろう。
 ブリュヒャーもおなじくらい厳しい戦をたたかったが、もっと運が悪かった。彼は八万の兵でナポレオン率いる九万の兵の攻撃に耐えなければならなかった……

例文2

 "Shall I accompany you and help you to amuse Lady Farnley?"
 She repeated the words with a little laugh.
 "Amuse Lady Farnley? I never undertake the impossible. You might as well ask me to move the monument, it would be quite as easy."

Charlotte M. Braeme, Wife in Name Only

 「ご一緒してファーンレイ夫人を楽しませるお手伝いをしましょうか」
 彼女は小さく笑いながら言った。
 「ファーンレイ夫人を楽しませる? わたしは不可能なことは引き受けません。わたしに記念塔を動かせというようなものね。それくらいの易しさだわ」

Sunday, February 5, 2023

英語読解のヒント(43)

43. as many / as few

基本表現と解説
  • We worked at the oars for fifteen minutes; it seemed to me as many hours. 「十五分間櫂を漕いだが、わたしには十五時間に思えた」

as many / as few は先行する数を示す語の反覆を避けるために使う。

例文1

General Victor, with 4000 French and as many Lombards, advanced upon the route of Imola.

John Gibson Lockhart, The History of Napoleon Buonaparte

ヴィクトル将軍は四千のフランス人と四千のロンバルディア人を率いてイモラの路を進軍した。

例文2

Although men are accused for not knowing their own weakness, yet perhaps as few know their own strength.

Jonathan Swift, "Thoughts on Various Subjects"

人は自分の短所を知らないと非難されるが、自分の長所を知らない者も同様に少ない。

例文3

 "What! You have no money at the banker's!"
 "A few hundreds, when I want as many thousands."

Wilkie Collins, The Woman in White

 「なに! 銀行に金がない!」
 「二三千ポンドほしいのに二三百ポンドしかない」

Thursday, February 2, 2023

英語読解のヒント(42)

42. as much

基本表現と解説
  •  "I'm not from these parts." "I thought as much." 「ぼくはよそ者です」「やっぱり」

as much は先行する内容を受けて「そういうこと(だと思った)」「そうだろう(と思った)」の意味となる。

例文1

"Oh, they have won money of you at the Wellington, have they?" I said. "I thought as much."

George Sims, Memoirs of a Mother-in-Law

「ウエリントンで金をふんだくられたんだね。そんなことだろうと思ったよ」

 the Wellington は宿の名前でビリヤードができ、若者がよく賭をしていた

例文2

Had the wars lasted another two or three years I might have grasped my bâton, and the man who had his hand upon that was only one stride from a throne. Murat had changed his hussar's cap for a crown, and another light cavalry man might have done as much.

Arthur Conan Doyle, The Exploits of Brigadier Gerard

戦争がもう一二年続いていたら、おれは元帥杖を手にしていたかもしれない。元帥杖を手にしたなら王冠まではあと一歩だ。ミュラも軽騎兵の軍帽を王冠に取り替えたのだから、ほかの軽騎兵だってそうできないことはなかろう。

例文3

I got hold of the right Smith at last — the particular Smith I was after — my dear, lost, lamented friend — and learned that he died violent death. I feared as much.

Mark Twain, "Among the Spirits"

わたしはとうとう本当のスミスをつかまえた。わたしの捜していたスミス、懐かしい、死んでしまった、人に惜しまれたスミスを。そして彼が変死を遂げたという事実を知った。そんなことでなけりゃいいと思っていたのだが。

英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...