Wednesday, February 26, 2025

フィリス・ボトム「嵐」

 


作者のフィリス・ボトム(1884ー1963)はケント州生まれのイギリス人作家。結婚してからオーストリアで学校を開設したのだが、そのときの学生の一人が、なんとイアン・フレミングだったという。ジェイムズ・ボンドの生みの親である。ボトムの作品でいちばん有名なのが1937年に出た本書で、MGMによって映画化もされた。

物語の背景となるのは、ナチスが台頭してきたドイツである。アルプスにほど近い町に、ロート一家は住んでいた。父、母、子供は四人。父はノーベル賞を受賞した医学者で、母は美しく芯の強い女性である。子供のうち、いちばん上の二人は母親が最初に結婚した夫とのあいだに出来た子供であり、下の二人は再婚後、今の夫とのあいだにできた子供である。上の二人はナチス党員となり、下の二人のうち年上(姉)のほうはフレヤという19歳の大学生で、優秀な医学生である。もう一人はまだ十二歳の男の子だ。

この家族構成が大きな問題を生む。というのは母親の再婚相手、今の夫にはユダヤ人の血が混じっているのである。しかもフレヤはハンスという農民ながらきわめて頭のいい共産主義者と親しくなる。父親も母親もナチスを非難はしないものの、平和主義者で、共産主義者に対しても悪い感情はもっていない。しかし上の子供二人は、がちがちのナチスである。ナチス的なものと反ナチス的なものが、一つの家族のなかに存在しているのだ。

あるときフレヤがハンスを家に呼びたいと言うと、家族のあいだに決定的なひびが入った。上の二人の子供は断固反対し、実際ハンスとフレヤがデートから帰って来るのを、家の前でまちぶせし、ハンスに襲いかかろうとした。ナチスの褐色の制服を着て。

一応、その場は鼻血と親による叱責でけりがついたが、しかしナチスの勢力拡大にともない、父親の仕事やフレヤの将来も脅かされることになる。

わたしが手にした本は350頁あり、30年代に書かれたものだから、いささか文体が古く、長々と地の文がつづく。ゆっくり進もうと覚悟を決めて読み出したのだが、上に紹介した喧嘩の場面以降は面白くて一気に終わりまで行ってしまった。

いいと思ったところはナチスを反ユダヤ主義の点から描くだけでなく、女性の権利を踏みにじるものとしても分析している点だ。フレヤは圧倒的な学力を見せつけ、大学から奨学金を受け取る第一候補となる。しかし共産主義者と付き合っていることがナチスたちに知られると、とたんに彼女は研究者としての自由を奪われていく。もともと存在している男尊女卑の考え方が、ナチズムにおいては一層強化される様子がわかる。

フレヤの母親はユダヤの血をもっていないが、女性をおとしめるような言説に対しては毅然と反論する。彼女も父親も最後まで娘の自由――共産主義者と交際し、愛し合う関係になる自由を尊重する。(父親はフレヤに「惜しみなく、賢明に、あわてることなく愛しなさい」と言う。いい言葉だ)だがナチス党員が家を訪問し、書籍の検閲などをはじめるようになると、娘の自由を守ってやることがだんだん苦しくなり、顔つきや目つきが変わってくる。このあたりの描写はじつに痛々しい。

フレヤには幼なじみがいて、彼から結婚を申し込まれるが、この男がまた女性に対する男性の優位性を説くミソジニストで、女性の愛は非常に視野の狭いものだとか、男は浮気をしても妻への本当の愛は忘れないとか、くだらないごたくを並べる。その点、共産主義者のハンスは教育を受けてないにもかかわらず、バランスの取れたものの見方をするし、責任感も強い。

この作品は非常に図式化された構造になっていて、テーマが明確に提示されている。その意味でわたしは山本有三を思い出した。理想主義的な立場から戦争を問うたというところがそっくりである。こうしたところは弱点とも言えるのだが、しかし理想主義をわたしは高く評価する。とりわけ生きるのが困難な時代に理想を追求するのは道化じみており、命を危険にさらすことにもなりかねない。それでもありうべき未来を見つづけることは、嵐のなかの灯台の光のように、心ある人々に希望と方向性を与えるからである。

Sunday, February 23, 2025

エリザベス・フォン・アーニム「魅惑の四月 」


エリザベス・フォン・アーニムはオーストラリア生まれで、ドイツ人貴族と結婚したからフォン・アーニムなどというドイツ風の名前になったらしい。その夫が死んだ後、彼女は「宇宙戦争」で有名なH.G.ウェルズと三年ほど関係を持ち、ノーベル賞を受賞した哲学者バートランド・ラッセルの兄と二度目の結婚をしている。彼女はキャサリン・マンスフィールドの従妹にもあたるそうだから、文学と深い関係を持ちながら人生を送った人と言えそうだ。

「魅惑の四月」は1922年に出版されてベストセラーになり、ブロードウェイで上演されたり、映画化も二度ほどされている。1991年の映画はアカデミー賞の候補にもなった。BBCが2015年にラジオドラマにして放送したのは、わたしも聞いた。

どんな筋かというと……。

1920年頃のイギリスが舞台となる。この年代は微妙な時期で、古いヴィクトリア朝の道徳観がまだ根強く残存しつつ、しかし新しい近代的な女性が登場してきた時代でもある。主人公の一人はミセス・ウィルキンス。弁護士を夫に持つ三十歳くらいの女性だ。彼女は古い道徳観にしばられ、鬱屈した生活を送っている。あるとき新聞に「イタリアのお城で休暇を過ごしませんか」という広告を見て、おなじ女性クラブのミセス・アーバスノットを誘い、へそくりを出し合ってイタリア行きを決意する。ミセス・アーバスノットは人生の羅針盤が東西南北の代わりに、「神」「夫」「家庭」「義務」という、それこそヴィクトリア朝的価値観そのものをあらわした人だ。しかしそんな彼女もなにかしら今の自分にあきたらないものを感じていたのだろう。ミセス・ウィルキンスの提案に思い切って乗ることになる。

しかし二人だけではお城の賃貸料をまかなうことはできない。そこで彼らは新聞に広告を出して、さらに二人の仲間をつどう。それがミセス・フィッシャーとレディ・キャロラインである。ミセス・フィッシャーはかなりのお歳で、ヴィクトリア朝の著名人をたくさん知っており、年老いてからはヴィクトリア朝の思い出に耽り、ヴィクトリア朝の価値観で現代を評価する。レディ・キャロラインは二十八歳の美貌の女性で、誰にも彼にもちやほやされるのがいやで、人付き合いを避けるためにイタリアへ行こうと決意する。

この四人がイタリアのリビエラにある中世の城で四月のひと月を一緒に過ごすわけだ。地中海の陽光と咲き乱れる花に囲まれ、彼らはどう変化するのか。

通俗的な読み物であることは否みようがない。曇りがちの、暗い、じめじめしたイギリスに、明るく、からりと晴れたイタリアを対置させているが、この対置の仕方はあまりにも単純にすぎるだろう。イタリアにだって鬱屈を抱えながら生きている人々は大勢いるが、それはきれいさっぱり捨象されている。また大団円では四人の女性がすべて愛に包まれるわけだが、これにはさすがに辟易とした。そこに至る途中でメロドラマにつきもののある驚くべき偶然が起きているが、それもわたしはやりすぎのような気がした。

にもかかわらず、わたしは「魅惑の四月(Enchanted April)」はそれこそ魅惑的な物語だと思う。一つには文体の工夫がある。イタリアへ行くまでの数章はヴィクトリア朝文学の文体を擬して書かれているのだが、それが実に効果的だ。ヴィクトリア朝の文体は、ヴィクトリア朝の価値観を身に纏っているが、それによって女性たちの自然な感情の発露が抑えられているさまがじつによく表現されているのだ。場面がイタリアに移行し、女性たちだけで中世のお城に住むようになると、彼らは次第に自分を取り戻していく。それにつれて文体も微妙に変化する。息の長い文章ではあるものの、素直に読んでいけるようになるのだ。こういう文体の工夫は通俗文学のレベルを越えている。また、すべてが愛に包まれる大団円には、辟易するといえば辟易するのだが、ある種のリアリズムから始まって現実離れしたファンタジー空間へ至るこの小説には、なにか一貫した論理性というものが感じられる。その論理性とはなんなのだろうという知的興味はかきたてられた。

面白い本で、大いに推奨する。

Thursday, February 20, 2025

アンソニー・ウエイマス「精神科医の戦時中日記」

 


アンソニー・ウエイマス(1887ー1953)は医者をしながら推理小説を書いた人である。しかし本書はミステリではない。1939年9月1日にドイツがポーランドに侵攻してからの日記である。当時、ウエイマスは医者の仕事をし、同時にBBCのラジオ放送にも出演していた。家族は女の子が二人、男の子が一人、そして奥さん。この一家が戦争の影のもとでどんな生活を送っていたのかがわかる作品である。

とりたててすごいという日記ではない。しかし平易に書かれていて、ついつい最後まで読んでしまった。またBBCの仕事の関係もあって、当時の著名人と付き合いがあり、通俗的な興味もかきたてられた。とくに小説家のイアン・ヘイの名前が出て来たときは、これから読もうと思っていたのでうれしかった。

いくつか印象的なコメントを拾っておこう。

1 ウエイマスは第一次世界大戦にも参加しているので、両大戦の違いを知っている人間だ。彼によると第一次大戦は起きたときに、ある種の喜びを感じたという。理由はよくわからないが、イギリス帝国が即座にドイツにお仕置きすると思っていたからではないかと言っている。しかし1914から1918年にかけての経験は、戦争の過酷さを教えた。それは戦争中の悲惨だけでなく、その後の経済や庶民生活にも多大な影響を与えたのである。第二次大戦がはじまったときは、暗澹とした思いに多くの人が胸ふたがれた。

この差は大事なポイントだろう。第一次大戦は「偉大なる戦争」Great War と称されるが、「偉大なる」とか「大いなる」などという形容詞があの当時の小説や映画のタイトルによくついていた。まだ「偉大なる」「大いなる」などという暢気なことが言えたのである。しかし第二次世界大戦のときは、そうではない。人々はそこになんの希望も喜びも感じなかった。そして収容所のありさまに、「詩はもう書けない」とまで言わされたのである。

2 チャーチルがラジオを通して演説し、その見事さにみんなが感心する場面がある。ガスマスクを携帯して出歩き、空襲に怯える暗い日常を支えるものとして、毎週でもこの稀代の宰相に演説をしてほしいものだとウエイマスは考える。演説後、BBCに行くと、チャーチルの演説に批判的な人もいたようだが、一般の受けはよかった。演説の興奮冷めやらず、翌日彼にその話を持ちかける人もあったくらいだから。チャーチルは文人であり、ジャーナリストであり、軍人であり、政治家という人だ。わたしは彼が書いた唯一の小説を読んだことがあるが、あの文章力はたいしたものだ。ウエイマスの記述を読みながら、チャーチルの演説集があれば読んでみようかという気になった。

3 第二次大戦がはじまってドイツは食糧が配給制度になったが、その配給によるカロリーはいくらくらいだったか。普通われわれは確か一日1700キロカロリーが必要とされているが、ドイツの割り当ては500キロカロリーだったという。この数字は本物だろうか、それとも英国におけるプロパガンダの数字だろうか。500キロカロリーではとても生きていけないだろう。しかし妙にリアリティーを感じさせる数字でもある。日本が戦争を起こし、輸入が止まれば、食糧自給率がおそろしく低いから、農村部をのぞいて、みな、ろくなものが食べられないはずだ。イギリスのとある新聞記者が一日500キロカロリーの食事でどれだけ生活できるか、体験記を書こうとするのだが、その前にウエイマスに健康診断をしてもらうという場面がある。それによると新聞記者の一日のカロリー摂取量は2000キロカロリーを超えていたという。いったいどんな記事を書いたのだろう。日本の新聞記者もやってみたらいいと思う。三食イモを食う生活がどんなものか、一週間でもつづけて、生理学的、医学的、情緒的にどんな変化が生じるか、調べてほしい。

4 戦争になれば物作りはほぼストップする。イギリスでは古い車は前後に断ち剪られ、エンジンのある前の部分だけ救急車として再利用されたそうだ。それを読んだときは、なるほどそういうものか、とびっくりした。しかしこの工場はなかなか従業員にとって働きやすい場所だったらしい。仕事中、たばこが吸いたくなったら、いつでも仕事場を離れて、休憩できたからだ。日本では労働者を管理するから(さらに悪いことに、労働者同士がお互いを監視するから)、こうはいかないだろう。が、このような自由さがあると、個人としての人格が尊重されているような気分になり、労働者は気持ちよく働けるのだそうだ。

こんな具合にウエイマスの日記はいろいろなことを考えさせてくれる。正直に言えば、彼が自分の専門の話(精神医学の話)をするときは、その凡庸さにあきれてしまうのだが、それ以外の部分には意外な情報がちりばめられていて、楽しい。非常にわかりやすい英語で書かれているので、興味のある人には一読をおすすめする。

Monday, February 17, 2025

関口存男「新ドイツ語大講座 下」(5)

§5. Welch ein Glück!  何たる幸運ぞ!
Was für ein Glück! 何たる幸運ぞ!
manch ein Glück   幾多の幸運

 solch ein や so ein に似たものに、さらにこの三つがあります。welch は勿論疑問詞としても用いる語で Welche Seite? (何ページですか?)、Welchen Tag? (どの道を?)などと格語尾をつけるのですが、題文のような際には ein の方を変化させます。

Was für ein の方は、このままを疑問詞としても用います。たとえば Was für einen Sport treiben Sie? (どんなスポーツをあなたはおやりですか?)など。特に注目するのは、この同じ文を次のような語順でいうことが多いという点です:

Was treiben Sie für einen Sport?

 これにはわけがあるので、für には als (……として)の意がありますから、「あなたはスポーツとしては何をおやりですか」というのはごく自然なのです。

 manch ein (英語:many a)「幾多の」は、manch-er, manch-e などを用いるのとたいして変りません。「幾多の幸運は一夜にして到来する」は Manches Glück kommt über Nacht でも Manch ein Glück kommt über Nacht でもよろしい。この manchー は、単数を用いながらしかも幾多を意味する点に特徴があります。

§5. treiben: やる、する。über Nacht: 一夜のうちに、思いがけなく。

Friday, February 14, 2025

Elementary German Series (1-2)

Hagboldt, Peter (1886-1943) の名著 Elementary German Series を見つけた。この本はドイツ語を一度勉強した人が、知識をリフレッシュするために読む本として最高の出来を示していると思う。もちろん初学者が読本として用いてもいい。割と短い文章が次々と提示されるが、読み進めるに従い、新たな文法事項が導入され、全部読めるようになれば、初級レベルは卒業である。このブログではその文章を月に二つずつ採録していこうと思う。古い教科書ではあるけれど、いいものはいい。

1. Cognates

Das englische Wort cognate kommt aus der lateinischen Sprache.1 Das englische Wort cognate kommt von den lateinischen Wörtern co und natus. Co bedeutet2 auf englisch3 with, auf deutsch „mit“; natus bedeutet auf englisch born, auf deutsch „geboren.“ Das englische Wort cognate bedeutet also4 auf deutsch „mitgeboren.“ Aber wir sprechen1 in der deutschen Sprache nicht von „mitgeborenen Wörtern,“ wir sprechen in der deutschen Sprache von verwandten5 Wörtern. Verwandte Wörter bedeutet also auf englisch cognate words oder related words.

1. die Sprache 言語; sprechen 話す.
2. bedeuten 意味する.
3. auf englisch 英語では.
4. also したがって.
5. verwandt 同系の; 親戚の

2. Verwandte Wörter

Verwandte Wörter können wir leicht1 verstehen2 und leicht lernen. Wörter wie:3 „Wort, kommen, englisch, lateinisch, aus, und“ sind leicht zu verstehen und zu lernen. Für Studenten in Amerika und England hat die deutsche Sprache viele4 leichte Wörter, denn Englisch und Deutsch sind verwandte Sprachen.

1. leicht 容易な, 容易に.
2. verstehen 理解する.
3. wie ~のような.
4. viel たくさん; viele 多くの.

Zum Beispiel,5 das Wort „all“ in „all mein Gold“ ist leicht zu verstehen. Wörter wie „Amerika,“ „England,“ „Holland“ verstehen wir leicht. Viele deutsche Wörter schreibt6 man7 genau8 so wie die verwandten englischen Wörter. Hier sind vierzig (40) Beispiele für solche9 Wörter:

5. das Beispiel 例; zum Beispiel たとえば.
6. schreiben 書く.
7. man 人, 人々, われわれ.
8. genau 正確に; genau so wie ぴったり~とおなじように.
9. solch そのような.

der Arm, der Ball, der Finger, der Frost, der Humor, der Humorist, der Hunger, der Name, der Park, der Ring, der Professor, der Prophet, der Sack, der Sand, der Strand, der Student, der Wind, der Winter, der Wolf; die Butter, die Dame, die Form, die Hand, die Minute, die Rose; das Deck, das Land, das Nest, das Echo, das Museum, das Nickel, das Sofa, das Verb; blind, blond, so, still, warm, wild, mild.

Viele deutsche Wörter schreibt man nicht genau so wie die verwandten englischen Wörter, aber wir verstehen und lernen sie sehr10 leicht. Hier sind sechzig (60) Beispiele für solche Wörter:

10. sehr とても, 非常に.

der Appetit, der Bär, der Busch, der Diamant, der Eisberg, der Elefant, der Fisch, der Garten, der Kaffee, der Kapitän, der Keller, der Mann, der Marsch, der Norden, der Westen, der Offizier, der Philosoph, der Prinz, der Puls, der Schuh, der Stall, der Storch, der Wein, der Tabak; die Anekdote, die Asche, die Armee, die Familie, die Katze, die Klasse, die Kohle, die Lampe, die Lippe, die Maschine, die Maus, die Meile, die Milch, die Musik, die Pistole, die Universität, die Schule; das Bier, das Eis, das Ende, das Gras, das Glas, das Haus, das Knie, das Konzert, das Theater, das Korn, das Krokodil, das Lamm; abstrakt, konkret, braun, grim, dumm, elektrisch, zoologisch.

Die Infinitive vieler Verben sind sehr leicht zu verstehen, zum Beispiel:

beginnen, binden, bringen, enden, fallen, finden, fischen, hängen, kosten, waschen, scheinen, schwimmen, singen, sinken, setzen, sitzen, springen, trinken, wandern.

Tuesday, February 11, 2025

英語読解のヒント(159)

159. help oneself to (1)

基本表現と解説
  • He does not help himself to any food. 「少しも食べ物を食べない」

help oneself to の形で「食べ物を自分で取って食べる」の意味をあらわす。

例文1

You go to a refreshing-room, help yourself, state what you have taken and pay.

Max O'Rell, John Bull and His Island

食堂へ行って勝手に食べ、食べた物を言って金を払う。

例文2

Though I am approaching the age of thirty, I pass for twenty; and I have observed old gentlemen frown at my precocity when I said a good thing or helped myself to a second glass of wine.

J. M. Barrie, My Lady Nicotine

わたしは三十近いのに二十にしか見えないので、しゃれたことを言ったり、盃を重ねたりすると、老人連はこましゃくれたやつだと顔をしかめるのだ。

例文3

Alice did not quite know what to say to this: so she helped herself to some tea and bread-and-butter, and then turned to the Dormouse, and repeated her question.

Lewis Carroll, Alice's Adventures in Wonderland

アリスはそれにどう答えたらいいのかわからなかったので、お茶とバターつきのパンを軽くいただいてから、眠りねずみのほうを向き、質問を繰り返しました。

Saturday, February 8, 2025

英語読解のヒント(158)

158. head (2)

基本表現と解説
  • His eyes started from his head. 「目が飛び出した」
  • His teeth chattered in his head. 「歯がカチカチと鳴った」
  • He kept a quiet tongue in his head. 「黙っていた」

耳、目、鼻、口などの描写において head を含む副詞句を伴うことがある。最初の例文では from his head の代わりに from their sockets もよく用いられる。

例文1

"This man," he said, "this Englishman, whom you twice saw, and whom I suspect to be the soul of the contrivance, can you describe him? Was he young or old? tall or short?"
 But Silas, who, for all his curiosity, had not a seeing eye in his head, was able to supply nothing but meagre generalities, which it was impossible to recognize.

R. L. Stevenson, New Arabian Nights

「その男、あなたが二度見かけたそのイギリス人こそ、この計略の中心人物だと思うのですが、どんなやつでしたか。年齢とか、背の高さは?」
 しかしサイラスは好奇心は強いものの、観察眼はからきしで、わずかに漠然とした印象を伝えるだけ。話を聞いただけではどんな男かさっぱりわからなかった。

例文2

Sherlock Holmes took the lamp and led the way, for Thaddeus Sholto’s teeth were chattering in his head. So shaken was he that I had to pass my hand under his arm as we went up the stairs, for his knees were trembling under him..

Arthur Conan Doyle, The Sign of the Four

シャーロック・ホームズはランプを取って先に立った。というのはサデュース・ショルトは歯の根が合わない状態だったからである。あんまり震えているものだから、わたしは腕を取って一緒に階段を上らねばならなかった。それくらい膝がガクガクしていた。

例文3

"You'll keep a quiet tongue in your head, will you?" said Monks, with a threatening look. "I am not afraid of your wife."

Charles Dickens, Oliver Twist

マンクスは嚇かすような顔つきをして言った。「黙っていろよ。きさまの女房なんか怖くないからな」

Wednesday, February 5, 2025

英語読解のヒント(157)

157. head (1)

基本表現と解説
  • I had only one idea in my head. 「一つのことしか考えなかった」
  • The idea never came into my head. 「その考えは浮かばなかった」
  • I took the idea into my head. 「それを思いついた」
  • I put the idea into his head. 「そのことを彼に注意した / そのことを彼の頭に吹き込んだ」
  • I could never get the idea out of my head. 「それを忘れることはできなかった」

頭に浮かんだり、頭から消える対象は idea だけではなく、fancy とか thought とか possibility などの場合もある。

例文1

The possibility that he might oppose the tour never entered my head.

Thomas Bailey Aldrich, The Story of a Bad Boy

彼が旅行に反対するかもしれないなどとは思いもよらなかった。

例文2

"Oh, you imagine you will take me alive! I'll soon knock that idea out of your heads."

Arthur Conan Doyle, Uncle Bernac

「おれを生け捕ろうというんだな。そんな考えはすぐさまおまえたちの頭から叩き出してくれる」

例文3

"Forgive me, I'm used to chattering away about anything that comes into my head."

Ivan Turgenev, Acia (translated by Constance Garnett)

「許してください。わたしは思いついたことをなんでもしゃべる癖があるので」

Sunday, February 2, 2025

英語読解のヒント(156)

156. had best

基本表現と解説
  • I had best die at once.
  • I had liefest die at once.

「ひと思いに死ぬのがいちばんいい」。had better / had best の had は前項および前々項の場合と異なり通常 would に置き換わることはない。

例文1

"You had best follow me, while my companion can bring up the rear."

J. L. Lord, "The Romance of a Western Trip"

「わたしについてくるがいい。仲間がしんがりをつとめる」

例文2

"The two had best meet as you suggest, and we shall see what time will bring forth."

Edna Lyall, In Spite of All

「あなたの言うとおり二人を引き合わせるのがいちばんいいですね。そのあとどうなるか、様子を見ましょう」

例文3

 "To whom will you dedicate your book?" inquired George Spahr.
 Well, I hinted to my wife and Pearl that I desired to bestow that honor upon them. They did not exactly demur, but both intimated that I had best dedicate it to some friend in the far distance who would probably never read it, or to some dear friend who had passed away and had no relatives living.

Al. G. Field, Watch Yourself Go By

 「だれにあなたの本をささげるつもりですか」とジョージ・スパーが聞いた。
 じつはわたしは妻とパールにその名誉をささげたいともらしたのだ。すると反対はされなかったものの、両者とも遠回しに、その本を読みそうにない遠くの親友か、すでに物故し生きている親戚もいないような友人にささげるのがいちばんいいのではないか、と言ったのだった。

英語読解のヒント(162)

62. Who knows but (that / what) 基本表現と解説 Who knows but (that / what) he did it? 「おそらく彼がやったのだろう」 but that は that...not ということ、つまり例文は Who k...