Saturday, April 29, 2023

ラッセル・ファーン「過去のもの」


原題は A Thing Of The Past。内容は……。

ロンドンの郊外で爆弾を用いて土地の造成を行っていたところ、とてつもなく深い亀裂が地中に見つかった。技師のクリフはロープをつけて穴の中に降りてみたが、途中に人間が立てる台のような部分はあるものの、その端は切り立つような絶壁になっていて、どれくらいの深さがあるのかもわからない。

この穴からまず奇怪なガスが噴出してくる。それを吸い込んだ人々は、怒りっぽく、荒々しい態度を取るようになる。さらに文明社会の洗練された振る舞いを失い、洞窟に住んでいた原始人のようにがさつになっていくのだ。

次にこの穴から恐竜が飛び出してくる。最初は空が飛べる恐竜どもで、家畜に被害を出したのち、軍によってしとめられる。ところがそのうちほかの恐竜も穴から出てくるようになり、ロンドンはパニック状態に陥る。

技師のクリフは数名の科学者とともに地底探査機に乗りこみ、何が起きているのかを探り出そうとする。

ラッセル・ファーンはイギリスのパルプ作家でとてつもない量の作品を残している。日本ではほとんど知られていないけれど、パルプ小説のファンは(どの国にもパルプ小説の熱烈なファンが少数だけどいる)今でも愛読している。わたしもときどきこの手の本が読みたくなり、ファーンの本はそのときのためにかなり揃えてある。

本書は前半は「ジェラシック・パーク」のような恐竜騒動を描き、後半はベルヌみたいな地底探検、ないし地下世界探検になっている。前半も面白いが、後半は一段と文章が熱気を帯び、今まで読んだファーンのSFのなかで、いちばんよかったと思う。続編のありそうな終わり方なので調べて近いうちに読んでやろう。


Wednesday, April 26, 2023

ロドニー・ガーランド「放浪する心」

1953年に出版されたゲイ小説。精神科医のアンソニー・ペイジが、かつての愛人であったジュリアンの謎の死を調査する。ゲイ・カルチャーがまだ一般的に認められていなかった時期に書かれた本として、歴史的に貴重な本であるだけでなく、ミステリ的な要素も兼ね備えているということで読んでみた。主人公・語り手が精神科医であるという点もわたしの興味を惹いた。


先ず気がついたのは、文章が平明であっさりした味わいを持っているということ。ヘンリー・ジェイムズみたいな凝集された文章とはまさに対極的で、かすかにノスタルジック、あるいは叙情的な味わいも含んでいる。肉体的交渉は露骨に描くのではなく、示唆的な書き方ですませてあり、語り手の品の良さを感じさせた。

次に驚いたのは第二次世界大戦の頃からあったロンドンに於けるゲイ・カルチャーがかなりこまかく描かれ分析されていることだ。わたしはゲイ・カルチャーに詳しくはないが、おそらくこの記述は事実に基づくものだろう。それによると、第二次世界大戦中、ゲイたちは特定のパブを集中して訪れるようになり、やがて警察の手が入り、今度は別のパブをたまり場にするようになる。そしてまた警察の手が入り……ということを繰り返していたらしい。戦争のために道徳意識が低下していたなどということも書かれてある。もしかしたら明日死ぬかも知れないような情況におかれ、抑制的なものがきかなくなり、いわばたががはずれたような振る舞いに及んだということだ。ゲイが違法と見なされていた時代であり、今から見ると差別的な書き方だが、こういう風俗に関する情報はとても参考になる。

第三に、語り手が精神科医であるせいか、ゲイに関する社会学的、心理学的説明も多い。これは単に小説であるだけでなく、当時あまり知られていなかったホモセクシュアルの世界を一般読者に知らしめようという宣伝的意図もこめられているのだろう。その中には興味深いコメントも散見される。たとえば上流階級のゲイは、同じ上流階級の人々より労働階級の男に惹かれるのだそうだ。征服者が被征服者の文化に魅力を感じるように、あるいは左翼のインテリがプロレタリアートに魅入られるように、上流階級は労働階級の異質性に心を奪われるのだ。性的なものと階級的なものが結び附いているという点にわたしは注目した。また、あるゲイは「ゲイが発生するのは資本主義のせいである」と言ったそうだが、しかし貧困がゲイを生むというのはある程度事実ではないかと語り手は考える。なるほど。確かに本人はヘテロであっても、ある種の環境においてはホモになることがある。(監獄とか遠洋漁業の船内においてとか)わたしは今までゲイについて興味がなかったけれど、この本を読みながらイギリスに於けるゲイの歴史はどうなっているのか、調べて見ようという気になった。本書を読んではじめてわたしは同性愛に興味を感じた。

物語の前半は進行が遅く、上に挙げたような情報がふんだんに与えられるのだが、後半に入るとジュリアンの自殺の謎に徐々に迫っていくことになる。精神科医のペイジはジュリアンの知り合いを捜し出し、次々と出逢い、自殺にいたる経緯を探ろうとする。彼は自分の患者の中にジュリアンを知る人間がいることを知り、治療とみせかけつつ、ジュリアンの情報を彼から聞き出そうとする。職業倫理を明らかに逸脱しているが、そこまで読んでふと気がついた。このブログで何度も書いたけれど、論理的推論によって犯人を見出すミステリにおいて、探偵は物語の外部に位置している。このような探偵はよく精神科医と比較される。精神科医も患者が語る物語の外に位置し、その物語の核を見抜く存在だからだ。ところがハードボイルドやノワールと称される犯罪小説においては、探偵は物語に巻き込まれてしまっている。精神科医のペイジが語る物語は、じつはノワールなのだ。精神科医=探偵は物語に呑み込まれてしまっていて、職業倫理はがはや通じない世界にいるのだ。

そしてハードボイルドやノワールにおいてはフェムフェタールという物語の核に直面することで探偵は物語を突き抜けるのだが、本書においても精神科医のペイジは調査のあいだじゅうは探偵小説や冒険小説の一部と化したような気分に陥り(物語に巻き込まれており)、みずからの内面的危機に直面し、それを乗り越えたところで初めて真相に迫る(物語を突き抜ける)ことができるのだ。

本書をミステリというジャンルに振り分けることはできないだろうが、ミステリ的な読解が可能である。戦後直後のイギリスの風俗に関心がある人にも本書は興味深いだろう。

Sunday, April 23, 2023

キャロル・ジョン・デーリー「KKKの夜」

パルプ作家というと粗製濫造という言葉を思い出すが、それでもあの物語の熱気は人を魅了するものがある。そういう作家の代表格がキャロル・ジョン・デーリーだ。ブラック・マスク誌で断トツの人気を誇ったのが彼で、その書き方に影響された作家も多い。もっとも時代が進んでパルプ小説も洗練されてくると、デーリーの幼稚な書き方は読者に見放されていってしまったけれども。


彼はレイス・ウィリアムという私立探偵を生みだしたことで知られている。私立探偵と言ってもレイス自身の言葉によると「警察と悪党の中間」みたいな存在らしい。それなら普通の人間、一般人じゃないかと思うかもしれないが、どうやら警察でもあり悪党でもあるような、どっちともつかない存在という意味のようだ。

「KKKの夜」(原題は Knights of the Open Palm)はそのレイス・ウィリアムが登場する最初の短編小説であり、かつまた最初のハードボイルド作品と言われている。KKKの活動に怯えるとある田舎町から助けを求める声がレイス・ウィリアムのもとに届いた。ウィリー・トンプソンという男から、息子がKKKにかどわかされた、救い出して欲しいというのだ。どうやら息子はKKKの犯罪の秘密を知って、そのために誘拐されたらしい。レイスはさっそくその田舎町へ行くのだが、着いて早々にKKKが挨拶にやって来る。妙な真似はするなと脅しに来たのだが、逆にレイスのど迫力に尻尾を巻いて出ていくことになる。次の日の夜、KKKが新しいメンバーを受け容れる儀式を開くと聞いて、レイスは単身その会場に乗り込んでいく。あとは読んでのお楽しみとしておこう。

レイスが語り手となって物語は進んでいくのだが、「警官と悪党の中間」というだけあって、文法はちょっとおかしいし、語り方もまるきり芸がない。歯の浮くような誇大な言い回しにあふれていて、鼻白むところもあるのだが、そんなことは気にせずアドレナリンを大放出させていく物語の熱さにはやはり感心する。1923年に書かれたからちょうど百年前の作品である。

Thursday, April 20, 2023

リー・ハリントン「わが棺はゆるやかに運べ」

アメリカ中西部のどこかの都市(おそらくカンサスあたり)で、郡検事捜査官をしているバーニー・モファットが活躍する長編小説。著者のハリントンは残念ながらこの小説書いた翌年(1952年)に、四十代の若さで死亡している。書き残したのは短編が一編、長編が本作だけだ。しかし「わが棺」はエドガー賞の候補になっているのだから、実力のある人だった。


本作は police procedural (警察もの)といっていい。ただしモファットは警官といっても、検事の下で働く捜査官である。アメリカの警察の仕組みがどうなっているのかよくわからないが、ペリー・メイソンものやハメットの「ガラスの鍵」などにもこんな捜査官が登場している。とにかく彼は有能で、あまり有能ではない検事を盛り立てているらしい。モファットは交通事故課で働いているパッツィという恋人やキンチェロという刑事の力を借りて事件を解決する。

どういう事件か。結構政治的な広がりがあるのだが、そこを省略して説明する。ポートマンという若者が強盗に入るのだが、彼はまともな生活がしたいと思っている男で、強盗を犯してから間もなく警察に盗品を返したい、都合があるからある時期まで自由の身でいさせてくれないかと電話でモファットに連絡してくる。そこでモファットは彼と会おうとするのだが、その間にポートマンは何者かに乱暴される。彼はブラックジャックでぼこぼこにされた顔のままモファットに会う。モファットはこのまま彼を放っておくとさらなる暴行に遭うのではないかと、無理やり警察署に連れて行こうとする。そんなモファットに対し、ポートマンは拳銃をつきつける。それを見た刑事のキンチェロが一瞬早く銃を抜き、ポートマンを殺害するのである。これが事件の出だしである。

その後、警察の他の部署がポートマンを見張っていたことがわかる。さらに事件の背景には市の合併問題がからんでいたことも徐々に明白になる。つまり、警察内部での争い、かつまた政治的な陰謀という側面がつけ加わり、事件は一気に面白さを増す。ポートマンはなぜ強盗に入ったのか。彼を暴行した二人の男は誰なのか。合併問題をめぐる政界、財界の思惑、検事自身のスキャンダル、警察の腐敗。処女作にしてはけっこうスケールが大きく、複雑な内容になっている。

一言でこの作品の印象を言うと、好い意味でも悪い意味でも「手堅い」。警察ものに欠かせないある種のリアリズム、生活感がちゃんと醸し出されていて、会話も都会風の気が利いた、しかし凄みを秘めたものとなっている。筋の構成も工夫が見られる。最後のモファットの推理も、断片的にあらわれていた手掛かりを見事にまとめあげているし、とりわけある一つの出来事の位相が転換され、別の意味を帯びるというくだりは読者をはっとさせる。これは緻密にプロットを考え抜いて書かれた作品だ。しかし緻密すぎて少々かたくるしい感じがなくもない。モファットの台詞回しはハードボイルド風で格好いいのだが、ユーモアがないという点もそのかたくるしい印象を与える一因かもしれない。

が、若い作者が第一作をここまでまとめあげたのはすごい。それどころか、この人が長生きし、モファットを主人公にした作品を書き続けていたなら、警察ものの代表的なシリーズになっていたのではないか。そういう期待を抱かせる出来上がりである。

Monday, April 17, 2023

独逸語大講座(7)

B

助動詞 wollen 及び未来の助動詞 werden
Magd, f. 女中besuchen 訪問する
Mädchen, n. 娘schicken 遣わす、送る
Arbeit, f. 仕事schenken 贈る
Arbeiter, m. 労働者arbeiten 働く
Kamerad, m. (弱)同輩uns [us]
Jahr, n. 年ruhig しずかに
Pferd, n. 馬sicher 屹度
Brief, m. 手紙bald 程なく
Heimat, f. 故郷sofort すぐに
besser [better]für と四格 = [for]

1. Dein Bruder wird heute vielleicht einen Besuch haben. 2. Ich werde morgen für meine Mutter zum Arzte gehen. 3. Du wirst heute sicher deinem Feinde begegnen. 4. Er wird seinen König und sein Vaterland nicht verteidigen. 5. Wir werden heute Morgen mit diesem Kinde spielen. 6. Ihr werdet den Mut und den Fleiß dieser Frau loben. 7. Sie werden bald krank, sagt unser Freund und Arzt. 8. Sie werden ihren Boten bald zu meiner Schwester schicken. 9. Sie werden Ihren Bruder zu Ihrem Arzt schicken? 10. Ich will heute im Garten meines Onkels arbeiten.

【訳】1. お前の兄弟は(dein Bruder)今日(heute)恐らく(vielleicht)来客がある(einen Besuch haben)だろう(wird) 2. 私は(ich)明日(morgen)私の母の為に(für meine Mutter)医者の所へ(zum Arzte)行く(gehen)であろう(werde) 3. 汝は(Du)今日(heute)屹度(sicher)汝の敵に(deinem Feinde)逢う(begegnen)であろう(wirst) 4. 彼は(er)自分の王を(seinen König)そして(und)自分の祖国を(sein Vaterland)守らぬ(nicht verteidigen)であろう(wird) 5. 我々は(wir)今朝(heute Morgen)此の子供と共に(mit diesem Kinde)遊ぶ(spielen)であろう(werden) 6. 汝等は(ihr)此の婦人の(dieser Frau)勇気を(den Mut)そして(und)勤勉を(den Fleiß)褒める(loben)だろう(werdet) 7. 彼等は(sie)間もなく(bald)病気に(krank)なるであろう(werden)註1と我々の友人なる医者が(unser Freund und Arzt)云う(sagt) 8. 彼等は(sie)彼等の使者を(ihren Boten)間もなく(bald)私の姉妹の所へ(zu meiner Schwester)遣わす(schicken)であろう(werden) 9. 貴君は(Sie)貴君の兄弟を(Ihren Bruder)貴君の医者の所へ(zu Ihrem Arzt)遣わす(schicken)であろう(werden) 10. 私は(ich)今日(heute)私の叔父の(meines Onkels)庭園で(im Garten)働かんと欲する(will arbeiten)

11. Der Arbeiter wird heute seinen Kameraden besuchen. 12. Unser Onkel wird den Fleiß eurer Magd loben. 13. Er will dieses Jahr nur in dieser Stadt wohnen und nicht reisen. 14. Ein Knabe will die Arbeit lernen, kommt in unser Haus und sagt es uns. 15. Der Knabe will nicht mehr arbeiten; die Mutter wird sicher weinen. 16. Warum wollen diese Arbeiter heute nicht arbeiten? 17. Unser Freund ist schon kein Kind mehr, er wird jetzt keinen Menschen fürchten. 18. Dort kommt ein Bote mit einem Brief in der Hand. 19. Unsere Magd will nicht arbeiten, sie will ruhig sitzen. 20. Das Mädchen ist krank, es will gesund werden.

【訳】1. 労働者は(der Arbeiter)今日(heute)彼の同輩を(seinen Kameraden)訪問する(besuchen)でしょう(wird)12. 我々の叔父は(unser Onkel)汝等の女中の(eurer Magd)勤勉を(den Fließ)褒める(loben)でしょう(wird)13. 彼は(er)今年は(dieses Jahr)註2此の市に(in dieser Stadt)のみ(nur)住んで(wohnen)そして(und)旅行することを(reisen)欲し(will)ない(nicht)14. 一少年が(ein Knabe)仕事を(die Arbeit)学ばんと(lernen)欲して(will)我々の家へ(in unser Haus)来り(kommt)そして(und)其の事を(es)註3我々に(uns)云う(sagt)15. 少年は(der Knabe)最早(nicht mehr)勉強しようと(arbeiten)欲し(will)〔ない〕、母は(die Mutter)屹度(sicher)泣く(weinen)でしょう(wird)16. 何故に(warum)之等の労働者達は(diese Arbeiter)今日(heute)働くことを(arbeiten)欲し(wollen)ないか(nicht)17. 我々の友人は(unser Freund)既に(schon)最早子供ではない(ist kein Kind mehr)彼は(er)今は(jetzt)いかなる人間をも(keinen Menschen)恐れ(fürchten)〔ない〕であろう(wird)18. 其所に(dort)一人の使者が(ein Bote)手に(in der Hand)一本の手紙を持って(mit dem Brief)来る(kommt)19. 我々の女中は(unsere Magd)働くことを(arbeiten)欲しない(will nicht)彼女は(sie)しずかに(ruhig)腰かけていることを(sitzen)欲する(will)20. 娘は(das Mädchen)病気で(krank)あります(ist)それは(es 娘の代名詞)丈夫に(gesund)なることを(werden)欲する(will)

21. Der Arbeiter und sein Freund wollen uns nicht besuchen. 22. Ihr wollt immer singen, lachen, spielen und trinken. 23. Wir werden für Dein Weib einen Brief zu unserm König schicken. 24. Der Arbeiter will nicht für seinen Kaiser arbeiten. 25. Sie schenkt ihrem Diener einen Hut und einen Stock. 26. Dieses Jahr wird uns unser Kamerad nichts mehr schenken. 27. Wollen wir nicht der Freundin dieses Mädchens ein Pferd schenken? 28. Das Mädchen und der Knabe wollen heute nur spielen. 29. Der Knabe will nicht in das Zimmer des Vaters gehen. 30. Dieser Arbeiter will nur in seiner Heimat arbeiten.

【訳】1. 労働者(der Arbeiter)と(und)彼の友人とは(sein Freund)我々を(uns)訪問しようと(besuchen)思わ(wollen)ない(nicht)22. 汝等は(ihr)常に(immer)歌い(singen)笑い(lachen)賭博をし(spielen)そして(und)飲まんと(trinken)欲する(wollt)23. 我々は(wir)お前の妻の為に(für Dein Weib)一本の手紙を(einen Brief)我々の王の所へ(zu unserm König)送る(schicken)でしょう(werden)24. 労働者は(der Arbeiter)彼の皇帝の為めに(für seinen Kaiser)働こうと(arbeiten)欲し(will)ない(nicht)25. 彼女は(sie)彼女の下僕に(ihrem Diener)一つの帽子を(einen Hut)そして(und)一本の杖を(einen Stock)贈る(schenkt)26. 今年(dieses Jahr)我々の同輩は(unser Kamerad)我々に(uns)最早や何物も(nichts mehr)贈ら(schenken)〔ない〕だろう(wird)27. 我々は(wir)此の娘の(dieses Mädchens)女友達に(der Freundin)一頭の馬を(ein Pferd)贈ろうではないか(wollen nicht schenken)28. 娘(das Mädchen)と(und)少年とは(der Knabe)今日は(heute)ただ(nur)遊ばんと(spielen)欲する(wollen)29. 少年は(der Knabe)父の(des Vaters)部屋へ(in das Zimmer)行く事を(gehen)欲し(will)ない(nicht)30. 此の労働者は(dieser Arbeiter)自分の故郷で(in seiner Heimat)のみ(nur)働くことを(arbeiten)欲する(will)

31. Wirst Du in diesem Jahre in Deiner Heimat leben ? 32. Das Kind wird es nicht tun, so denkt die Mutter. 33. Will jener Arbeiter immer nur zu Hause sitzen? 34. Der Arbeiter will eine Arbeit haben und schickt uns einen Boten. 35. Ich will dieses Jahr nur mit diesem Kameraden spielen. 86. Wird dieses Mädchen das Weib jenes Arbeiters werden? 37. Heute wird unser Kaiser zu Pferde durch die Stadt kommen. 38. Dieser Arbeiter liebt keine Arbeit, er will nur trinken. 39. Der Vogel wird auf den Baum fliegen und dort sitzen. 40. Bald wird uns dieser Mensch nicht mehr besuchen. 41. Wollt ihr eurer Mutter in der Heimat nicht einen Boten oder einen Brief schicken? 42. Dieser Arbeiter ruht jetzt und raucht, aber bald wird er mit seinem Kameraden arbeiten. 43. Du wirst besser tun, sofort zu Deinem Arzt zu gehen.

【訳】31. 君は(Du)今年(in diesem Jahre)君の故郷で(in Deiner Heimat)暮らす(leben)でそうか(wirft)32. 子供は(das Kind)それを(es)し(tun)ない(nicht)だろう(wird)と、そう(so)母は(die Mutter)思う(denkt)33. あの労働者は(jener Arbeiter)常に(immer)家にばかり籠もっている事を(nur zu Hause sitzen)欲するか(will)34. 労働者は(der Arbeiter)何か仕事に(eine Arbeit)ありつこうと(haben)欲し(will)て(und)我々に(uns)一人の使者を(einen Boten)寄越す(schickt)35. 私は(ich)今年(dieses Jahr)此の同輩とのみ(nur mit diesem Kameraden)遊ぼうと(spielen)欲する(will)36. 此の娘は(dieses Mädchen)あの労働者の(jenes Arbeiters)妻に(das Weib)なる(werden)註4だろうか(wird)註4 37. 今日(heute)我々の皇帝は(unser Kaiser)馬で(zu Pferde)註5市を通って(durch die Stadt)来る(kommen)でしょう(wird)38. 此の労働者は(dieser Arbeiter)仕事を(seine Arbeit)好ま(liebt)〔ない〕彼は(er)ただ(nur)飲(酒)まんと(trinken)欲する(will)39. 鳥は(der Vogel)樹の上へ(auf den Baum)飛び(fliegen)そして(und)其所に(dort)とまる(sitzen)であろう(wird)40. 程なく(bald)此の人間は(dieser Mensch)我々を(uns)最早(nicht mehr)訪問し(besuchen)〔ない〕であろう(wird)41. お前達は(ihr)故郷にいる(in der Heimat)お前達の母に(eurer Mutter)一人の使者(einen Boten)又は(oder)一本の手紙を(einen Brief)送ろうとは(schicken)思わ(wollt)ないか(nicht)42. 此の労働者は(dieser Arbeiter)今(jetzt)休ん(ruht)で(und)喫煙している(raucht)併しながら(aber)程なく(bald)彼は(er)彼の同輩と(mit seinem Kameraden)働く(arbeiten)でしょう(wird)43. 君は(Du)直ぐに(sofort)君の医者の所へ(zu Deinem Arzt)行くことを(zu gehen)より良く(besser)為す(tun)でしょう(wirft)〔行く方が、よいでしょう〕

【註】〔1〕此の werden は未来の助動詞ではないが、勿論、此の文章は未来を意味する。〔第三課 A、註参照〕。
〔2〕dieses Jahr は四格の副詞句。
〔3〕es は、前の文章全体(ein Knabe will die Arbeit lernen)を意味する。
〔4〕werden 「成る」の意味の独立動詞で、wird は、未来の助動詞である。
〔5〕zu Pferde 「馬で」、熟字で Pferde の前に冠詞を附けない。zu Fuß 「徒歩で」、zu Wagen 「馬車で」等と同様。

Friday, April 14, 2023

英語読解のヒント(55)

55. between you and me

基本表現と解説
  • between you and me
  • between you and me and the gate-post
  • between us
  • between ourselves
  • between friends

いずれも「この場かぎりの話だが」「内証だが」「大きな声では言えないが」の意。

例文1

"He knows life to admiration and, between ourselves, is probably the most corrupt rogue in Christendom."

R. L. Stevenson, New Arabian Nights

「彼はじつに世慣れた男です。しかし、ここだけの話、おそらくキリスト教国のなかでいちばんの悪党でしょうね」

例文2

"The pearls were evidently of great value, and he was averse to part with them, for, between friends, my brother was himself a little inclined to my father's fault."

Arthur Conan Doyle, The Sign of Four

「その真珠は明らかに高価なもので、彼はそれを手放すのを嫌がっていました。というのも、ここだけの話ですが、兄はいささか父の欠点を受け継いでいましてね」

 語り手と文中 he で示される人物は双子の兄弟で、father's fault とは強突く張りな性格を意味する。

例文3

“Well, between you and me,” says Dora, raising herself on tiptoe, as though to whisper in his ear, and so coming very close to him, “I am afraid my dearest Florence is a little sly!"

Margaret Wolfe Hungerford, The Haunted Chamber

「ここだけの話なんだけど」とドラは彼の耳にささやきかけるように爪先立ち、顔を近づけた。「フローレンスはちょっとずるいところがあるのよ」

Tuesday, April 11, 2023

英語読解のヒント(54)

54. had best

基本表現と解説
  • You had best go at once. 「すぐ行くに限るよ」

「……するのがいちばんよい」「……するに如くはない」という意味。

例文1

 "He quarrelled with the master last night, and I heard him threaten him, and it's him that's done it as sure as we are here."
 "Then I had best tell the police," the gamekeeper replied.

J. E. Muddock, Stories, Weird and Wonderful

 「彼は昨日の晩、旦那様とけんかをしたんだ。おれは彼が脅すようにしゃべるのを聞いたよ。やったのは彼だよ、間違いない」
 「それじゃ警察に連絡するのがいちばんだな」と猟場管理人が言った。

例文2

"Now that I have got so far, I had best proceed on my own lines, and then clear the whole matter up once and for all.”

Arthur Conan Doyle, "The Adventure of the Dancing Men"

「もうここまで進んだのだから、自分の方針でやっていって、すっかり明らかにしてしまうほうがよい」

例文3

If we do not rule wisely, and if our rule is not in the interest of the poeples who have come under our guardianship, then we had best never to have begun the effort at all.

Theodore Roosevelt, "Grant"

善政を施さないのなら、また政治がその保護下に来た人民の利益とならないのなら、はじめからそんなことは企てないほうがよい。

Saturday, April 8, 2023

英語読解のヒント(53)

53. as best one can / may

基本表現と解説
  • I nursed her as best I could. 「わたしはできるかぎり彼女を看護した」

この形はきわめて困難、あるいは不可能なことをしようとする時に用いられ、「できないけれどもできるかぎり」のニュアンスを含む。

例文1

It was a very dark night, and a thin rain began to fall as we turned from the highroad into a narrow late, deeply rutted, with hedges on either side. Mr. Grant Munro pushed impatiently forward, however, and we stumbled after him as best we could.

Arthur Conan Doyle, "The Yellow Face"

ひどく暗い夜で、街道から狭い小道に入り込んだころには小雨が降りはじめた。馬車の轍が深く刻まれ、両側には生け垣がある小道だった。しかしグラント・マンロー氏はせっかちに前へ進み、われわれはよろめくようにして必死にあとについていった。

例文2

The unhappy culprit sustained herself as best a woman might, under the heavy weight of a thousand unrelenting eyes, all fastened upon her, and concentrated at her bosom.

Nathaniel Hawthorne, The Scarlet Letter

この不幸な罪人は大勢の無慈悲な視線が自分にそそがれ、そのすべてが胸に集中しているなかで、女としてできるかぎりその重圧に耐えていた。

例文3

We had no lights, and it was as black as pitch within, so I stumbled forward as best I might, feeling my way by keeping one hand upon the side wall, and tripping occasionally over the stones which were scattered along the path.

Arthur Conan Doyle, Uncle Bernac

明かりはなく、中は真っ暗だったので、わたしは壁を手探りし、ときどき下に散乱している石に足をとられながら、やっとのことで前に進んで行った。

Wednesday, April 5, 2023

英語読解のヒント(52)

52. beside oneself with

基本表現と解説
  • He was beside himself. 「彼は我を忘れた」
  • He was beside himself with joy / grief / anger / terror. 「彼は喜び・悲しみ・怒り・恐怖のあまり度を失った」

beside oneself は「我を忘れる」「取り乱す」「平静な自分でなくなる」という意味。

例文1

The fact is, I was a trifle beside myself; or rather out of myself, as the French would say....

Charlotte Bronte, Jane Eyre

じつはわたしは少々逆上していたのです。フランス語の言い方を使うなら「自分の外にいた」のです。

例文2

Villon was beside himself; he beat upon the door with his hands and feet, and shouted hoarsely after the chaplain.

R. L. Stevenson, "A Lodging for the Night"

ヴィロンは夢中だった。彼はドアを叩き、蹴飛ばし、声を嗄らして牧師を呼んだ。

例文3

For some moments I was beside myself with terror and anxiety; I was helpless.

Mark Twain, "The Stolen White Elephant"

わたしはしばらく恐怖と不安で頭のなかが真っ白になりました。どうすることもできませんでした。

Sunday, April 2, 2023

英語読解のヒント(51)

51. 「感覚を疑う」という言い方

基本表現と解説
  • He could scarcely believe his own senses / eyes / ears.
  • He doubted the evidence of his own senses / eyes / ears. 「彼は自分の感覚 / 目 / 耳 を疑った」

例文1

Miss Abigail could hardly credit her own eyes.

Thomas Bailey Aldrich, The Story of a Bad Boy

ミス・アビゲイルはほとんど自分の目が信じられなかった。

例文2

For the most wild, yet most homely narrative which I am about to pen, I neither expect nor solicit belief. Mad indeed would I be to expect it, in a case where my very senses reject their own evidence. Yet, mad am I not — and very surely do I not dream. But to-morrow I die, and to-day I would unburthen my soul.

E. A. Poe, "The Black Cat"

あまりにも異常で、しかしひどくなじみ深い物語を語るにあたり、わたしはそれが信じられるとも、信じてもほしいとも考えていない。信じてくれるなどと期待するのは狂気の沙汰だ。わたし自身、自分の五感が証するところを信じられないのだから。けれどもわたしは狂ってはいない。またけっして夢を見ているのでもない。ただわたしは明日死ぬ身であり、今日は心の秘密を打ち明けたいと思っているのだ。

例文3

Uplifting my eyes from the page, they fell upon the naked face of the hill, and upon an object — upon some living monster of hideous conformation, which very rapidly made its way from the summit to the bottom, disappearing finally in the dense forest below. As this creature first came in sight, I doubted my own sanity — or at least the evidence of my own eyes; and many minutes passed before I succeeded in convincing myself that I was neither mad nor in a dream.

E. A. Poe, "The Sphinx"

本から目をあげると、樹木の生えていない山肌が見えた。そして恐ろしい恰好をした化け物が山頂から下にむかって一気に駆け下り、麓の鬱蒼とした森に消えるのが見えた。この生き物をはじめて目にしたとき、わたしは自分の正気を疑った。すくなくとも自分の目が信じられなかった。が、しばらくしてわたしは自分が狂っているのでも夢を見ているのでもないと確信することができた。

英語読解のヒント(145)

145. 付帯状況の with 基本表現と解説 He was sitting, book in hand, at an open window. 「彼は本を手にして開いた窓際に座っていた」 book in hand は with a book in his hand の...